簿記を2級まで学習するということ

簿記を勉強しようと思うきっかけは「今、会社でお金を扱う事務をしているけれど、もっとスキルアップしたい!」「これから、専門知識の必要な事務職に転職したい!」といったことが多いようです。「社会人の常識として、簿記知識くらいは身に付けておいた方がいいよ」と上司に言われて勉強を始めるといったパターンも結構あります。共通しているのは『仕事に活かしたい』『今後の生活に活かしたい』と考えていることでしょう。

簿記の知識があるだけでも、就・転職は有利になりますが、せっかく簿記の勉強をするのであれば、資格取得まで目指すことを強くおススメします。採用する企業の立場で考えるとよく分かります。「簿記の勉強をしました」と面接で言われても、一体どれほどの知識を持っているのか、どれほどの仕事を任せることができるのか、その言葉だけでは判断は難しいですよね。事務系の職種では、どの程度のスキルを持っているのかがアピールしにくい(レベル差が分かりにくい)ので、資格を持っていることは、就・転職の際に威力を発揮します。当然ですが「日商3級合格してます」より「日商2級合格しています」のほうが、経理能力が客観的に評価しやすく自己アピールにもつながりますよね。

では、実際に「日商簿記3級」と「日商簿記2級」にはどれほどの差があるのでしょうか。

◆合格率で見る2級取得のハードルの高さ 
受験者数 実受験者数 合格者数 合格率
3級 111,657名 88,774名 38,882名 43.8%
2級 64,838名 49,516名 7,275名 14.7%

上記の表は直近の第150回(2018年11月18日実施)日商簿記検定試験の結果です。この数値を見ると、2級合格のハードルがグンと高くなっているのが分かりますよね。簡単に取得できる資格ではありませんが、そのスキルを必要とする仕事は多くあります。この難易度を超えて2級を取得する価値がどれだけあるのか?まずは、目標を何において簿記を学び、得た知識をどのように活かしていきたいのかを、あなたがしっかりと考えるのと同時に、2級取得のメリットを知ることが大事だと思います。このあと「3級と2級の違い」についてと、勉強時間やスクールなどの費用をかけてでも、2級取得を目指した場合のメリットについてご紹介します。

「簿記」と「経理」の違いが「3級」と「2級」の違い

「簿記」という言葉は「帳簿記入」の真ん中2文字をとったもの。そして「経理」という言葉は「営管」の頭とお尻をとったものです。「簿記の勉強をしています」とか「経理の学校に通ってます」と、一般的には同じような意味で使われていますが、厳密には違うものなのです。

  • 簿記=帳簿記入=会社などに置いているたくさんの種類の「帳簿の書き方」のこと
    ⇒ 簿記3級で学習
  • 経理=経営管理=書かれた帳簿を読み取り、分析・診断して「経営に役立てる」こと
    ⇒ 簿記2級・1級で学習。

簿記3級の知識というと、簿記の基礎は理解できていると評価されます。けれども企業側は「経理を任せるのならば、2級までのスキルが欲しいと」考えています。一般事務とは違い経理事務という職種は「簿記」という特殊技能が必要な仕事です。企業がどういった人材を求めているのかを理解したうえで「簿記」だけで終わるのか?「経理」ができるようになるのか?その差により、あなた自身の市場価値が大きく違ってくるということです。

企業によっては簿記2級以上取得で「資格手当」が出るところもあるので、勉強は大変になりますが、2級取得までを目指す方が、長い目で見れば大きなメリットになるでしょう。また、就職面だけでなく大学受験においても、簿記の資格を持っていることで推薦入試などで優遇されることがあります。(全国78大学で日商簿記取得者を優遇しています)社会人の方だけでなく、学生の皆さんにも挑戦する価値のある資格です。

出典 日本商工会議所Webサイトより:https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/usage/university

2級試験では工業簿記の学習が必要

3級試験では個人企業の商業簿記が試験範囲ですが、日商簿記2級試験では株式会社の商業簿記(配点60点)と工業簿記(配点40点)が試験範囲となります。この工業簿記は、工場など製造工業での会計処理に適用される応用簿記で、原料の仕入れから加工、製品の販売に至るまでの会計を扱います。

  • 商業簿記・・・商品販売業・サービス業などで適用される簿記
  • 工業簿記・・・製造業で適用される簿記

では、実際に商業簿記と工業簿記の簿記の違いを簡単に説明してみます。

【商業簿記】

「100円で仕入れた商品を120円で販売して差引20円の利益を得た」

このことを記帳すると↓

仕訳⇒帳簿に記入⇒決算時に利益の算定⇒公表

【工業簿記】

「100円で仕入れた材料を加工して300円の原価で完成させ、その完成品を500円で販売した」

このことを記帳すると↓

1step:「原価計算」をする。完成品が300円で作られた原価計算が必要になります。記帳手続(工業簿記)は工場の「経理課の人」がおこないますが、各製品の原価計算は工場の「原価計算係」が行います。

2step:「完成品原価」を計算する。原価計算も複雑で、工場で発生したほぼすべての費用を製造原価に組み込んで完成品原価を計算します。たとえばその製品にかかる材料費はもちろん、工場建物の固定資産税や、工場事務員が使っている文房具や工場の掃除用具の費用、また工場の社員食堂でかかる経費や工場での運動会の費用なども完成品を作るためには必要だと考えて、製造原価に入れて完成品の原価を計算するのです。製造原価に入るもの入らないものは時々2級の試験で出題されています。

3step:「利益計算」をする。完成品原価が300円として、その製品を500円で営業所に販売することにより200円の利益が工場で計上されます。さらに営業所では500円で工場から仕入れた商品を600円で外部へ販売することにより100円の利益を計上します。つまり(工場で計上する利益200円)+(営業所で計上する利益100円)=300円が会社全体の利益となる仕組みです。

いかがでしたでしょう?工業簿記になるとずいぶん複雑になるんですね。他にも「商業簿記と工業簿記の違い」で代表的なものに「財務諸表」があります。

「商業簿記の財務諸表」→ 貸借対照表と損益計算書が代表的

「工業簿記の財務諸表」→ 貸借対照表・損益計算書以外で「製造原価報告書」(=当期の完成品の製造原価を集計する書類)が財務諸表に加えられます。

※製造原価報告書の作成問題は、2級工業簿記では出題頻度の高い単元となっています。

このように2級になると試験範囲も広く難易度も高いので、独学で合格を目指すのは大変難しいと言われています。工業簿記と原価計算がごちゃ混ぜになってしまい「今何の計算をしているの?」と、学習面で壁にぶつかることもあるようです。自分のライフスタイルなどを踏まえたうえで、スクールなどでスケジュールを組んでもらい、効率的に学ぶことが合格への近道になることでしょう。

3級を目指すのか、2級までを目指すのか、どちらにしても、自分が目標としたい働き方を見据えて学習をスタートすることが、学習モチベーションを保つことに有効です。学習内容と働き方がうまくリンクしない場合は、自身のキャリア相談から始めるのもひとつの方法ですよ。

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