司法書士試験「民法」の概要・勉強法・対策まとめ

司法書士試験の「民法」は最重要科目の一つです。多肢択一式試験における出題数は他のどの科目よりも多く、司法書士試験に合格するためには避けて通れない科目となっています。今回は、司法書士試験「民法」の概要や出題傾向を説明し、勉強法や対策についても紹介します。また、2020年度の試験から大きな影響を及ぼす民法改正についても詳しく確認するので、興味のある方は参考にしてみてください。

1.司法書士試験「民法」の概要・出題傾向

司法書士試験では多肢択一式試験における「民法」の占める割合が高くなっています。「午前の部」と「午後の部」で併せて70問出題される多肢択一式試験のうち、「民法」は20問出題され、3割弱を占めます。まずは、最重要科目の一つとなる「民法」の概要と出題傾向について説明します。

1-1.「民法」の概要

「民法」は私人同士の権利義務に関する決まりなどを定めている法律です。生活や事業などの基本となる契約や私人の財産関係の原則などを定めた法律で、私法の一般法とも呼ばれています。「民法」は、大きく分けて総則、物権、債権、親族・相続という4つの分野から構成されており、それぞれの概要は以下の通りです。

総則

総則とは、民法第一編の「総則」に規定される分野で条文の第1条から第174条を指します。総則は民法全般に関する基本的な原則等が定められているため、他の分野との関連性が高いのも特徴です。具体的には、自然人の権利能力や物の意義、契約などの法律行為に係る意思表示の効力、時効制度などが規定されています。

物権

物権は民法第二編の「物権」に該当する分野で、第175条から第398条が該当します。物権は物を直接的に支配する権利を指しており、占有権や所有権、地上権、質権、抵当権などがこれに該当する権利です。物権を有する者は他者に対してその権利を主張することができ、その権利を侵害また妨害する者に対しては排除を求めるなどの対抗する権利が認められています。

債権

「債権」は民法第三編に規定される分野で、第399条から第724条がこれに該当します。債権では債権の効力や契約などに関する規定があり、債権の相殺や消滅、連帯保証のほか売買契約や金銭消費貸借などの個別契約に関して規定されています。債権は物権と並ぶ財産権の一つですが、おもに他人に何かをしてもらう権利などを指すため、物権とは性質の異なる権利です。また、債権は特定の債務者に対してのみ権利を主張できる権利となっている点でも物権とは異なります。

親族・相続

親族・相続は主に家族に関する基本的な仕組みや考え方などを規定した家族法とも呼ばれる分野です。民法第4編の「親族」と第5編「相続」から構成され、第725条から第1044条の条文が親族・相続に該当します。親族では、親族の範囲や婚約、離婚、養子などの親族関係について規定され、相続では相続や遺言、遺留分などについて規定されています。

第1044条という数字を見ても分かるように民法は非常にボリュームの多い法律です。総則と物権、債権は財産に関する基本的なルールを定めている法律なので、まとめて財産法と呼ぶこともあります。

1-2.「民法」の出題傾向

司法書士の民法では多肢択一式試験で20問出題されます。上記の4分野からまんべんなく出題されるのも特徴です。中でも、物権は司法書士の主要業務の一つである不動産登記と深い関わりがあるため出題数が多くなっており、例年、所有権などの物権だけでなく担保物権とあわせて9問ほど出題されています。それぞれの分野からの出題数は以下の通りです。

  • 総則…3問前後
  • 物権…9問前後(うち物権4問・担保物権5問ほど)
  • 債権…4問前後
  • 親族・相続…4問前後

正しいもの(もしくは誤っているもの)を選ぶ単純な正誤問題や、正しいものの組み合わせを選択する問題、正解の個数を問う形式などで出題されています。出題内容は、条文の知識を問う問題と判例について問われる問題がほとんどです。過去には、条文解釈に関する学説問題などの出題もありましたが、近年はあまり出題されていません。条文の知識が問われる問題では細かい条文知識を問うものもあるため、条文の暗記だけでなく事例問題などを通じた条文の理解が求められます。

2.「民法」の勉強法・対策

「民法」は司法書士試験においてカギとなる科目ですが、ボリュームがとにかく多いため、効率的に学習することが重要です。また、2020年度から実施される本試験は民法改正によって大きな影響を受けることが予想されています。ここからは、民法改正への対応や勉強法と対策について説明します。

2-1.民法改正への対応

2017年に民法の一部を改正する法律が成立しました。この改正法は民法制定以来ほとんど見直しが行われていなかった債権法が改正されるもので、一部の規定を除いて原則2020年4月1日から施行されます。また、2018年には親族・相続分野の相続法について大きな改正法案が成立し、こちらについては一部の規定を除いて2019年7月1日から施行されています。

司法書士試験では原則として試験が行われる年の4月1日時点に施行されている法律について問われるため、2020年度の試験ではこれらの改正後の法律で出題が行われます。下表は債権法と相続法の主な改正項目について、その一部をまとめたものです。

改正項目 改正内容
債権法 消滅時効に関する見直し 特例である職業別の短期消滅時効を廃止し、原則権利行使できることを知った日から5年に統一されます。
法定利率に関する見直し 法定利率を年5%~3%へ引き下げます。今後も市場の金利動向に合わせて変動する仕組みになります。
保証に関する見直し 個人の保証人を保護するために、事業用融資の保証契約については、公正証書による意思確認が必要になります。
定型約款に関する規定の新設 定型約款を用いる契約においては、約款を契約内容とする旨の表示が要求されます。また、一方的に消費者の利益を害する条項は無効になります。
相続法 配偶者居住権の新設 配偶者の居住建物を対象に終身または一定期間配偶者にその使用を認める権利が創設されます。
遺産分割に関する見直し 相続された預貯金について遺産分割前でも払い戻しが受けられる制度が創設されます。
遺言制度に関する見直し 自筆証書遺言の方式緩和が行われ、遺言執行者の権限が明確化されます。法務局による自筆証書遺言の保管制度も創設されます。

今回の大改正では、時代背景に応じて新しいルールが創設されたものや、これまで判例として運用されてきたルールが明文化されたものがあり、改正項目は多岐にわたっています。そのため、初めて司法書士試験の「民法」を学習する方はこれらの改正後の「民法」で学習を進める必要があります。

また、過去に「民法」の学習経験がある方は記憶に残っている改正前の知識と改正後の知識を混同しないように改正項目を把握することが重要になります。

2-2.「民法」の勉強法と対策

「民法」はここまで説明してきたようにボリュームの多い科目です。全ての範囲を網羅するためには膨大な時間と労力を要するため、まずは早い段階で最初から最後まで一通りの内容を学習する方法をおすすめします。

これは、民法が法律全般に共通する一般的な規定を個別規定に先立って総則としてまとめる「パンデクテン方式」によって構成されていることが理由です。

例えば、総則の時効は債権分野とも深い係わりがありますが、総則を学習するだけでは債権との関連性を把握することができないため、時効という個別テーマについての理解が不十分なままになります。そのため、「民法」は時間をかけてでも一通りの学習を早い段階で終えて全体像を把握する必要があります。

司法書士試験の「民法」は多肢択一式試験におけるウエイトが大きいため、苦手な分野を作らずに8割以上の得点がとれるレベルまで対策を行うことが望ましい科目です。しかし、司法書士試験は全11科目で行われる試験のため、「民法」だけに時間をかけて対策するわけにはいきません。

そこで、ボリュームの大きい民法を効率的に学習するためには勉強方法の選択が重要になります。特に、独学では民法改正の対応なども難しくなるので、必要に応じて資格スクールの対策講座などを利用することも効率的な勉強法の一つとなります。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。司法書士試験の「民法」について概要や勉強法などを説明しました。「民法」は多肢択一試験で最も出題数の多い科目のため、司法書士試験の合格に近づくためには効率の良い対策が求められます。2020年度以降の本試験では民法改正の影響を大きく受けることも予想されるため、ポイントを的確に押さえた効率的な勉強方法を選択するようにしましょう。

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