司法書士は登記や会社設立などの分野で活躍する法律の専門家であり、近年は簡易裁判所での訴訟代理業務もできるようになるなど、活躍の場は広がっています。司法書士試験の合格率は3%前後ととても低く、国家資格の取得には相当の時間と労力を要しますが、資格取得後のキャリアは多くの可能性を秘めているため、現在も根強い人気がある国家資格のひとつです。今回は、司法書士試験の概要やおすすめの勉強方法について詳しく解説しますので、司法書士試験を効率的に突破したい方は参考にしてみてください。
1.司法書士の仕事とは?
司法書士は登記の専門家として認知度の高い職業です。不動産登記では、当事者間の契約だけでは補完できない法律上の権利を登記によって明確にし、大切な財産である土地や建物に関するトラブルを未然に防ぐ大切な役割を担っています。また、会社を設立する際にも商業登記が必要となり、会社の立ち上げ時にも会社組織を設計していく上で頼りになるパートナーとなります。
以前は不動産登記や裁判所へ提出する書類などの作成が主な仕事でしたが、最近は従来の業務以外にも活躍の場を広げています。その一つが、2003年に導入された訴訟代理権に基づく簡易裁判所での訴訟代理業務です。司法書士試験に合格後、特別研修を経て法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所で行われる民事事件(訴訟の目的物140万円未満の請求事件)等で代理人を務めることができ、弁護士と同様に法廷に立って弁護活動をすることができます。
また、2000年に始まった成年後見制度では、病気などにより判断能力が不十分な成人の成年後見人を務めることができ、不動産や預貯金などの財産管理の手助けや不利な契約等の締結から財産を守る手助けなども行います。
このように、司法書士は活躍できるフィールドの拡大と共に需要が高まっている職業であり、資格取得後の比較的早い段階でも独立開業などを目指せる資格です。
2.司法書士試験とは?
司法書士試験を受験するチャンスは年に1度で、例年7月に実施される筆記試験と10月に実施される口述試験の両方に合格する必要があります。ここからは、司法書士試験について詳しく見ていきます。
2-1.受験者数と合格率
まずは司法書士試験の受験者数と合格率についてです。下の表は法務省が発表している過去5年の司法書士試験の結果をまとめたものです。
司法書士試験 年度別合格率
年度 | 出願者数 | 最終合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成30年(2018年) | 17,668 | 621 | 3.5% |
平成29年(2017年) | 18,831 | 629 | 3.3% |
平成28年(2016年) | 20,360 | 660 | 3.2% |
平成27年(2015年) | 21,754 | 707 | 3.2% |
平成26年(2014年) | 24,538 | 759 | 3.1% |
(参考:法務省)
出願者数は毎年2万人前後となっていますが、ここ5年は年々減少傾向にあり、直近の2年間は2万人を割り込んでいます。最終合格者は毎年700人前後ですが、出願者数の減少と共に減少傾向にあるため、平成30年度は621人となりました。合格率は3%超と狭き門ですが、平成30年度は出願者数17,668人に対して筆記試験を実際に受験した受験者数が14,387人のため、実際の合格率は4.3%と少し高くなります。しかし、これでも国家資格の中ではかなり合格率が低い試験に分類されるため、合格率から難易度を考えれば難関国家資格試験の一つに数えられます。
2-2.司法書士試験の試験内容
司法書士試験は筆記試験と口述試験で実施され、筆記試験に合格した受験生のみが口述試験を受験できます。筆記試験は同日の午前と午後に内容の異なる試験が行われます。概要は以下の通りです。
筆記試験
・午前の部
試験時間 | 120分 |
---|---|
出題形式 | マークシート方式による多肢択一式 |
出題数 | 35問 |
出題科目 | 憲法、民法、商法(会社法その他の商法を含む)、刑法 |
・午後の部
試験時間 | 180分 |
---|---|
出題形式 | マークシート方式による多肢択一式と記述式 |
出題数 | 35問(多肢択一式)、2問(記述式) |
出題科目 | 民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法(※記述式は不動産登記法と商業登記法から各1問ずつの出題) |
午前の部と午後の部の多肢択一式はそれぞれ35問で105点満点、午後の部の記述式は2問で70点満点の配点です。
司法書士試験の大きな特徴は筆記試験にそれぞれ足切りとなる点数が定められており、午前の部の多肢択一式と午後の部の多肢択一式、午後の部の記述式のいずれかで足切り点を下回っている場合は、合計の点数で合格点を上回っていても不合格となってしまう点です(午前の部または午後の部の多肢択一式試験で足切り点を下回った場合は、その時点で不合格となり記述式が採点されません)。
平成30年度に実施された試験では、午前の部の多肢択一式が105点中78点、午後の部の多肢択一式が105点中72点、午後の部の記述式は70点中37点が足切り点となりました。平成30年度は筆記試験全体の合格点が280点中212.5点必要となっていることから、多肢択一式試験でそれぞれ70%前後得点した上で記述式でも53%超得点し、なおかつ全体で76%以上の得点が必要となります。
このことから筆記試験は広い範囲からコンスタントに得点を積み上げなければ合格は難しい試験と言えます。
口述試験
口述試験は筆記試験の合格者を対象に以下のような概要で試験が行われます。
試験時間 | 15分ほど |
---|---|
出題形式 | 面接官2名による口頭試問形式 |
出題科目 | 不動産登記法、商業登記法、司法書士法の他、司法書士業務を行うために必要な知識 |
筆記試験では主に司法書士の業務に必要な知識が問われますが、口述試験は実務を行う上での基本的なコミュニケーション能力や人柄についての確認という側面もあります。口述試験のみの合格率は正式に発表されていませんが、大きな問題が無ければ通過できる試験といえます。
2-3.司法書士試験の受験資格
司法書士試験は学歴や年齢、性別などを問わず誰でも受験できる試験です。学歴も一切不問で大学の専攻内容などが試験に影響を与えることもありません。司法書士を目指す全ての受験生に同じ門戸が開かれているため、試験の出来のみが合否を分ける万人に平等な試験といえます。ただし、筆記試験については、前年に筆記試験に合格したものの口述試験で不合格となった場合は、その翌年に限り、筆記試験が免除される制度があります。
3.おすすめの勉強方法
司法書士試験では主要な4科目からの出題が多肢択一式問題の75%以上を占めます。主要4科目とは民法、商法(会社法)、不動産登記法、商業登記法です。そのため試験対策はこの4科目が中心になり、以下のポイントを押さえた効率的な学習を心がける必要があります。
- 出題数の多い主要4科目は基礎を重点的に押さえる
- 基準点を超えるためには主要4科目以外の学習も必要
- 民法改正による影響
3-1.出題数の多い主要4科目は基礎を重点的に押さえる
主要4科目の中でも最も出題数が多いのは民法です。民法は他の法律を理解するための前提となる法律でもあるので、基礎から重点的に学習します。また、民法以外の商法や不動産登記法、商業登記法についても苦手な科目や分野を作らないように学習することが大切で、特に基礎となる項目については重点的に押さえておきます。
3-2.基準点を超えるためには主要4科目以外の学習も必要
司法書士試験は足切りをクリアした上で全体としても7割超の得点が必要になります。出題数が多い主要4科目だけを学習しても合格基準に達することは難しいため、残りの7科目についてもバランスよく学習することが大切です。
3-3.民法改正による影響
改正された民法の大部分が、2020年4月から施行されます。これにより、2020年度から実施される司法書士試験は改正された民法が試験の出題範囲となります。
以上のポイントを押さえた学習をするためには広い試験範囲を網羅する必要があり、相当の労力と勉強時間の確保が課題になります。そのため、精選された講義やテキストなど出題ポイントを効率的に学習できる資格スクールの活用がおすすめです。特に、民法の改正においては、過去の法改正なども徹底的に分析している資格スクールが的確な予想問題などを活用して万全の対策を行ってくれます。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。司法書士資格の試験内容やおすすめの勉強方法について説明しました。司法書士は幅広い分野で活躍できる職業ですが、司法書士試験に合格するには膨大な試験範囲をいかに効率的良く学習できるかが大きなポイントです。必要に応じて資格スクールなどを上手に活用し、難関試験の合格を掴みとりましょう。
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