弁護士や裁判官などの職業に就くには、難関国家試験である司法試験に合格する必要がありますが、司法試験を受験する条件としては「法科大学院を修了している」、もしくは「司法試験予備試験に合格している」のいずれかを満たす必要があります。
この記事では司法試験予備試験に焦点をあて、司法予備試験経由で法曹界を目指すメリットを解説します。弁護士や検察官・裁判官になりたいと考えている方や、学生の方で司法予備試験のメリットを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.司法試験予備試験とは?
司法試験予備試験(通称、司法予備試験)とは、2011年より導入された資格試験であり、司法試験の受験資格を与えるために、法科大学院の修了者と同程度の知識を有しているかを測る試験です。
1-1.司法予備試験が導入された背景
司法予備試験が導入される以前までは、原則として法科大学院を修了していなければ司法試験を受験することはできず、経済的な理由もしくは時間的な制約により法科大学院に通えずに、法曹への道を諦める方も少なくありませんでした。そうした人たちに司法試験を受験するチャンスを与える目的で、司法予備試験が実施されるようになりました。
1-2.司法予備試験の概要
司法予備試験では短答式試験と論文式試験、口述試験の3つの形式の各試験に合格する必要があります。民法や商法、刑法などから幅広い知識を問われる難問が出題されるため、3つの試験を通じた最終的な合格率は4%前後となっており、難易度が高いのが特徴です。
司法予備試験は毎年1回実施されており、受験料は17,500円となっています。何度でも受験可能ですが、綿密な受験計画と試験対策を行い、万全の態勢を整えた上で試験に臨むことが求められます。
2.司法予備試験のメリット
法科大学院を修了すれば司法試験の受験資格が得られるため進学する方は多いですが、合格率は20%前後と苦戦しています。また多額の学費と時間を要するため、かえって遠回りになることもあります。
一方、司法予備試験を受験するメリットは次の通りです。
- 時間とお金がかからない
- 予備試験合格者の司法試験合格率は77.6%
- 法科大学院との併願も可能
2-1.時間とお金がかからない
順調にいけば法科大学院を終了する場合と比べて早く司法試験に挑戦することができます。法科大学院を経由する場合、卒業するまで(司法試験の受験資格を得るまで)に2〜3年かかります。一方、司法予備試験経由の場合は、ストレートに合格すれば1年で司法試験の受験資格を得られます。難易度が高いため1年で合格できる割合は少ないですが、早く司法試験の受験資格を得られる可能性があります。
また、法科大学院に2~3年通う際の学費等を削減できるのも大きなメリットです。
2-2.司法予備試験合格者の司法試験合格率は77.6%
司法予備試験合格者の司法試験合格率は、法科大学院修了者と比べて高いのが特徴です。
司法予備試験と本番の司法試験は、共に短答式試験と論文式試験が課される点で試験の形式が類似しています。また、試験で課される内容も共通しているため、司法予備試験のために勉強した内容が、そのまま司法試験の受験に役立ちます。加えて、試験の作成委員や試験の採点基準なども司法試験と司法予備試験では共通点が多いため、予備試験を受験することで本番の司法試験に通用する学力を効率的に習得できます。
このような理由から、法科大学院の修了者と比べて司法予備試験に合格した方のほうが、司法試験の合格率ははるかに高くなっています。平成30年度の司法試験の合格者数を見た場合、京都大や東京大の法科大学院出身者の合格率が40~60%前後である一方、司法予備試験合格者の合格率は77.6%と大きく上回っています。
2-3.法科大学院との併願も可能
法科大学院との併願が可能であるため、司法予備試験を受験しつつ保険として法科大学院を受験することも可能です。
法科大学院のみを受験する場合、合格できなければ司法試験を受験できるタイミングが先延ばしになります。一方、法科大学院の受験を滑り止めとして、司法予備試験の勉強に本格的に取り組んだ場合、仮に司法予備試験に落ちても比較的難易度が低い法科大学院入試に合格できる可能性は高いでしょう。
本来、司法予備試験は法科大学院の修了レベルの知識があるかどうかを確かめる試験です。短答式で7科目、論文式で9科目もの法律系科目の学習を行うため、法科大学院に入学するレベルの知識は身につくことが期待できます。近年は、リスクヘッジを兼ねて法科大学院の受験を司法予備試験の滑り止めとして受験する方も少なくありません。法科大学院を併願先としつつ、司法予備試験を受験するのもオススメです。
3.司法予備試験は社会人におすすめ!
社会人が法科大学院に通う場合、勉強する時間が固定されるなど融通が利かないことも多いですが、司法予備試験を受験する場合、自分のペースで空いた時間を活用して学習を進めることが可能です。加えて司法試験に直結する勉強を行えるため、より少ない時間で法曹界に入ることも期待できます。
このような理由から司法予備試験を経由するルートは、勉強する時間を自由に確保しづらい社会人の方に向いています。ただ、司法予備試験は非常に難しく完全に独学で目指すのは厳しいため、資格予備校や通信講座を利用するなど、より効率的に合格を目指す方法を模索する必要はあるでしょう。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。司法試験の受験資格を得る手段として注目されている司法予備試験のメリットをご紹介しました。司法予備試験は、単に法科大学院の代替手段として捉える方も多いですが、より経済的に司法試験を目指せることや、司法試験に直結した勉強をできる点、法科大学院との併願受験も可能であるなど、そのメリットの大きさは見逃せません。司法試験に合格し、法曹の夢を叶えたいと考えている方は、司法予備試験経由で受験する方法もぜひ検討してみてください。
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