建築や土木などの業界では設計図の作成はとても重要な作業です。設計図の出来栄えによってその後の作業クオリティが変わることも少なくありません。そのような設計図の作成を行う上で役立つのが、「CAD」と呼ばれる専用の設計ツールです。今回の記事では、CADの意味や用いるメリット、種類ごとに異なる特徴について分かりやすく解説します。建築や土木、服飾などの業務に携わっており、今後CADを活用してみたいと考えている方は、この記事をぜひ参考にしてください。
1.CADとは?
CAD(Computer Aided Design)とは、コンピュータを使用してデザインや設計図などを作成すること、またはそのために用いる設計ツールです。
1-1.CADの種類
CADは「キャド」と呼ばれており、1960年にアメリカ国内で使用されたのが始まりとされています。CADは、分野に関係なく多様な用途に活用できる「汎用CAD」と、ある特定の業種・分野に特化している「専用CAD」の二種類に大別されます。
なお、似た用語で「CAM(Computer Aided Manufacturing)」や「CAE(Computer Aided Engineering)」がありますが、それぞれ使用する目的が異なります。CADが設計段階で用いられるのに対して、CAMは実際にモノを製造する場面で使用されます。一方でCAEは製品データのシミュレーションを行う場面で活用されます。実際の業務では、CADにより設計したデータをCAMで作成し、完成したものや完成前のデータをCAEで検証する流れで各ツールを活用します。
1-2.CADを使用するメリット
CADを使用すると、おもに次の3つのメリットが期待できます。
- 手書きよりも簡単かつ正確に製図を行える
- 簡単に修正作業を行える
- データの共有が楽に行える
手書きよりも簡単かつ正確に製図を行える
図面を作成する際、同じ仕様の部分については、基本的に線の太さを均一にする必要があります。そのため手書きで作成するとなると、線の太さを均一にするのに相応のスキルが必要となります。しかしCADではコンピュータにより作図するため、CADの使い方さえ理解していれば誰でも同じ線を引くことができます。またコンピュータを用いるため、手作業で生じ得るミスなどを削減する効果も期待できます。
簡単に修正作業を行える
手書きの図面を修正する場合、他の線を消さないように慎重に作業する必要があります。そのため、万が一他の線を消してしまった場合には、大幅な手戻りが生じるリスクがあります。しかし、CADはクリック一つで修正したい部分をピンポイントで簡単に修正できるため、ミスが生じても始めからやり直す必要はありません。
データの共有が楽に行える
以前は紙に印刷していた図面データをサーバー上で保存することができ、関係者が複数いる場合でも同じものをリアルタイムで共有できるため、設計作業だけでなくプロジェクト全体の効率化も図れます。
2.CADの種類とそれぞれの特徴
CADには、使用する場面などによって様々な種類があります。実際にCADを活用する際には、目的に応じて適切な種類のCADを選ぶことが大切です。また、汎用性の高いソフトが各業界で導入されているものもあります。シェアが高いソフトを学ぶことで、企業が求めるスキルにつながります。それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
2-1.機械CAD
機械CADとは、機械の図面設計に特化したCADツールです。具体的には飛行機や家電製品、自動車などの精密な技術を要する機械の設計に用いられています。汎用的なCADから、ネジやナットなど機械に関連した機能(コマンド)が搭載されている専門的なCADソフトがあります。
機械CADには、データを2次元(平面)で表現する2次元CADと、立体的に図面を設計する3次元CADがあります。3次元CADを用いると、体積や重心などの情報を加味した上で設計を行えます。主な機械CADソフトには、「ソリッドワークス(SolidWorks)」や「オートキャド・メカニカル(AutoCAD Mechanical)」などがあります。また、汎用CADソフトとしては、「オートキャド(AutoCAD)」が製造業や機械設計で圧倒的なシェアを持っています。
2-2.建築CAD
建築CADとは、建物や構造物などを設計することを目的として用いるCADツールです。立体的な建築物を断面図や透視図などにより表現しつつ設計を行うため、建築物特有の複雑な図面をスムーズに作成できます。
建築CADには、壁や窓の作図など建築関連の機能が搭載されていることが多くなります。使用するツールによっては、アニメーション機能などを用いて設計のプロセスを進めることができます。主な建築CADソフトには、「オートキャド・アーキテクチャー(AutoCAD Architecture)」や「ベクターワークス・アーキテクト(Vectorworks Architect)」などがあります。また、汎用CADソフトとしては、「オートキャド(AutoCAD)」、「ジェイダブリュ・キャド(jw_cad)」が多く使用されています。
2-3.土木・測量用CAD
土木・測量用CADとは、土木現場で用いられる種類のCADです。土木・測量用CADは、一般的に道路や橋などを設計する際に利用されます。主に構造物の形状や寸法などを表す「構造図」や、工事する場所の座標を表す「説明図」などを作成する目的で使用します。
土木・測量の場面では、建築CADのソフトを使用することが多いですが、建築物の作成と土木関係の建造物の作成では若干図面の書き方に違いがあるため、土木・測量に特化したCADツールを使用するケースも少なくありません。主な土木・測量用CADソフトには、「HO_CAD pao」や「DynaCAD土木Plus」などがあります。
2-4.服飾デザインCAD(アパレルCAD)
服飾デザインCADとは、服飾デザインの作成に特化したCADであり、「アパレルCAD」とも呼ばれています。他の種類のCADと同様に服飾デザインの設計に特化した機能が数多く存在します。たとえば洋服の型紙を作成できる「パターン」や、パターンのサイズを設計できる「グレーディング」などの機能が搭載されています。
建築や機械と比べて大きく異なる部分が多いため、服飾デザインを作成する際には専用のCADツールを用いるのが一般的です。主な服飾デザインCADソフトには、「パターン・マジック3D(Pattern Magic 3D)」や「モダリス・3D・フィット(Modaris 3D Fit)」などがあります。
2-5.レゴCAD
特定の業界や分野で活用するCAD以外には、遊びに活用できるCADも存在します。例えば「レゴCAD」は、人気ブロック玩具である「レゴ(LEGO)」を実際に組み立てる際に役立つCADです。
レゴを使って何かを組み立てたいと思った際、試作するにも大量のレゴが必要となるため、多額の費用がかかってしまいます。しかしレゴCADを用いれば、仮想空間の中で誰でも簡単にレゴを使って遊ぶことができます。レゴCADのツールとしては、レゴの開発会社が公式に出している「レゴ・デジタル・デザイナー(Lego Digital Designer)」や「エスアール・3D・ビルダー(SR 3D Builder)」などがあります。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。CADを使用すれば正確に設計図を作成できるだけでなく、作業効率の大幅な向上も期待できます。CADには建築CADや機械CAD、服飾デザインCADなど、それぞれの分野に特化したソフトがありますので、製図や設計に関わる仕事をしたい方は、この記事を参考に自分が設計したいものに合わせたCADのスキル習得を検討してみてください。
なお、リンクアカデミーが運営する「パソコンスクールアビバ」では、機械・建築業界で、圧倒的なシェアを誇る「AutoCAD」や、建築業界でAutoCADと並ぶほどの利用者がいる「jw_cad」の2次元CADコース、さらに注目の3次元CAD「Fusion 360」を使用する3D CADのコースを用意しております。
シェアの高いCADソフトを学習することで、就職転職、スキルアップで実践力として評価してもらうことができます。CADオペレーターとして働くことも考えている方は、ぜひ一度パソコンスクールアビバにお問い合わせください。
【詳細ページ】パソコンスクールアビバのCADコース詳細ページを見る