人生100年時代の幕が上がった今、これからの社会人が取り組むべき課題の一つとして、長い人生を「生き抜く力」と、それを担保するための「働き方・キャリア」をどのように作り上げていくかが問われています。個人・企業ともにキャリア形成に対する関心が高まる中、この記事では、キャリア形成にあたり社会人として身に付けるべき能力について整理しましたので、ご参考ください。
1.キャリアとは
人手不足の深刻化と急激に進むグローバル化に対応するため、政府は施策の基本を「キャリア形成の促進」に向けています。厚生労働省、経済産業省、文部科学省はいずれも「キャリア教育」や「キャリア形成支援」に関する施策を打ち出しており、前提となる「キャリア」の定義を示しています。キャリアの意味は、省庁の立場の違いから微妙に相違は見られるものの、言葉だけが独り歩きするような乱雑な用いられ方に一定の歯止めがかかり、官民ともに同じ方向性で人材育成に取り組んでいくための基準が示されたといえます。
1-1.厚生労働省が定義するキャリア
厚生労働省は、「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会報告」において、「キャリア」とは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」、「関連した職務の連鎖」であり、時間的な持続性・継続性を持った概念であると定義付け、「キャリア形成」は「関連した職務経験の連鎖を通して職業能力を形成していくこと」と捉えるのが適当だとしています。
1-2.文部科学省が定義するキャリア
文部科学省は、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方(中央教育審議会答申)」の中で、「キャリアとは、人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見出していく連なりや積み重ね」と定義付けています。
1-3.経済産業省が定義するキャリア
経済産業省は、文部科学省の定義に基づき、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」をキャリア教育と位置づけ、働き方改革並びに人生100年時代への対応策を公表しています。
このようにキャリア形成とは、時間的な継続と累積の中で自分の役割や価値を見出し、そのための能力や態度を醸成して自分固有の職業能力とするまで高めることだと言えます。働き方改革が本流となる時代にあって、キャリア形成を進めるためには、これからの社会人に必要とされる能力を把握した上で、計画的に習得していくことが求められます。
2.社会人に求められる6つの能力とは
キャリア形成へ向け、政府の各専門機関も関わりを深めていますが、それぞれの打ち出した施策は、「100年を生き抜くことができる社会人の育成」という共通の目的を持っています。これらの施策の中で重視されている「社会人に求められる能力」を整理し、具体的に見ていきましょう。
- 基礎学力
- 社会人基礎力
- 職に関する専門スキル
- 常識・倫理観(=社会・対人関係能力)
- 学習意欲、忍耐力(=自己制御能力)
- 心身の健康管理等(=自己管理能力)
2-1.基礎学力
読み書き計算、ITスキル等主に学校教育を通じて習得される基礎的な知的能力です。基礎学力は、学校教育(小・中・高校)で得られる水準の学力ですが、現在、学校教育で導入されている「キャリア教育」との併用が注目されています。キャリア教育は、職場体験を通して、「学ぶこと」と「働くこと」の密接な関連性に気付かせることで、学習意欲を喚起させるという取り組みです。職場体験はすでに教育として定着していることから、学力向上面でも効果が期待されています。
2-2.社会人基礎力
社会人基礎力は、経済産業省主幹の「社会人基礎力に関する研究会報告書(平成18年)」で提唱された考え方です。職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を、3つの能力と12の能力要素で構成される「社会人基礎力」として定義しています。
社会人基礎力の3つの能力と12の能力要素
前に踏み出す力 (アクション) |
考え抜く力 (シンキング) |
チームで働く力 (チームワーク) |
|
---|---|---|---|
能力要素 | 一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力 ・主体性 ・働きかけ力 ・実行力 |
疑問を持ち、考え抜く力 ・課題発見力 ・計画力 ・創造力 |
多様な人々とともに、目標に向けて協力する力 ・発信力 ・傾聴力 ・柔軟性 ・情況把握力 ・規律性 ・ストレスコントロール力 |
2-3.職に関する専門スキル
仕事に必要な知識や資格など自分の付加価値となるものです。グローバル化の進展と人材不足により、個人のキャリアは、「終身雇用を前提とした仕組みの中で会社が作ってくれるもの」から、「キャリアオーナーシップのもとで自らが作り出すもの」に変化しています。この変化に伴い、職に係る専門知識についても絶えず学び続け、アップデートを繰り返すとともに新たなスキルを獲得するなど、自身の付加価値向上が求められるようになりました。付加価値向上の取り組みは、ライフステージの各段階において、今までのキャリアを振り返ることでスキルのたな卸しを行い、明確な目標を設定して行うことが重要となります。
2-4.常識・倫理観
一般常識や倫理観、公共心、他者を尊重する心は、いわば「対社会・対人関係能力」とも言えます。学校教育、社会教育、家庭教育の連携によって社会人になるまでの過程で習得しておきたい要素です。それぞれの教育過程において、「コミュニケーションスキル」や「リーダーシップ」を養う機会を見出し、積極的に参加すること(教育者側にとっては参加させること)が重要です。
2-5.学習意欲、忍耐力
学校教育、社会教育、家庭教育の連携で醸成していくべき能力で、教育者側の働きかけとしては、学習意欲や忍耐力を学ぶ生活習慣を身に付けさせるために、実生活との関わりの中で好奇心を喚起させ、新たな知識や技能を習得しようという意欲を持てるような機会を作るなど、より実践的な取り組みが必要となります。
2-6.心身の健康管理等
健全なキャリア形成には、心身を管理する自己管理能力も不可欠です。どれだけ人材市場で高い評価を得られるだけの能力を身に付けたとしても、病気やケガなどで就業期間が短ければその価値を失うことになります。心身を適度にリフレッシュし、最良の状態に保つ環境を整えることも、これからのビジネスパーソンにとって重要なスキルの一つといえます。
このようにキャリア形成の土台には、「常識・倫理観」「学習意欲、忍耐力」「心身の健康管理等」などの人間性・基本的な生活習慣が必要となり、その上に「基礎学力」「社会人基礎力」「専門知識」という3本柱が立ち、これらが相互に作用して、自立した社会人として生き抜くための総合力(=人間力)を形成するという構図になります
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。「キャリア」という言葉は、各時代の社会情勢と経済環境の下で、使う人の立場や状況によって多様な役割が与えられてきました。使う人の都合によって役割が変わるということは、明確な定義がなかったとも言えます。しかし現在は、「キャリアアップ」「キャリアプランニング」「キャリア教育」など官民の区別なく重要なキーワードとして使用され、新たな働き方を作り上げるための重要な役割を担っています。働き方とともに生き方が大きく変わる節目の時代に生きるビジネスパーソンの方は、この記事を参考に人生100年を生き抜くためのキャリア形成ついて、今一度検討してみてください。
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