中小企業診断士第1次試験で出題される「企業経営理論」は、経営コンサルティングの基本となる科目です。この科目は第2次試験とも深い係わりがあるだけでなく、プロのコンサルタントとして業務を行う上でも基礎となる重要な試験科目になります。この記事では、「企業経営理論」について概要や難易度、試験範囲、勉強法などを分かりやすく解説しますので、参考にしてみてください。
1.「企業経営理論」とは?
「企業経営理論」は企業を経営する上で必要となる理論を学習する科目です。企業を取り巻く市場環境や規制などの外部環境と企業内部のヒトやモノなどの経営資源の双方を分析する力、その企業の成長や競争力強化を目的とした経営戦略を立案するための知識などが問われます。さらに、経営資源であるヒトの能力を最大限に発揮するための組織戦略や市場調査に基づくマーケティング戦略などの知識も問われる科目です。「企業経営理論」の試験を行う目的としても以下の通り明記されています。
「企業経営において、資金面以外の経営に関する基本的な理論を習得することは、経営に関する現状分析及び問題解決、新たな事業への展開等に関する助言を行うにあたり、必要不可欠な知識である。(以下省略)」
中小企業診断士の重要な役割である企業の成長戦略策定を行うための基本となる知識が問われるだけでなく、経営戦略を実行するためにクライアントへ行う様々なアドバイスにも欠かすことのできない知識です。そのため、第2次試験とも深い係わりがあり、実務上も重要性の高い科目の一つになっています。
2.企業経営理論の難易度・試験範囲
中小企業診断士にとって必要不可欠な知識を学習する企業経営理論において、試験対策をピンポイントで行うためにはその難易度や試験範囲を正しく理解しておく必要があります。
2-1.企業経営理論の難易度
中小企業診断士第1次試験は、7科目合計の総得点が60%以上で1科目も40点未満がなければ合格となります。第1次試験に合格できなかった場合でも、60%以上得点した科目は科目合格となる仕組みです。その仕組みを頭に入れて以下の2つのデータを確認してみます。まずは、中小企業診断士試験の第1次試験における過去5年の合格率です。
中小企業診断士第1次試験の合格率
年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 申込者に対する合格率 | 受験者の合格率 |
---|---|---|---|---|---|
平成30年度 | 20,116人 | 13,773人 | 3,236人 | 16.1% | 23.5% |
平成29年度 | 20,118人 | 14,343人 | 3,106人 | 15.4% | 21.7% |
平成28年度 | 19,444人 | 13,605人 | 2,404人 | 12.4% | 17.7% |
平成27年度 | 18,361人 | 13,186人 | 3,426人 | 18.7% | 26.0% |
平成26年度 | 19,538人 | 13,805人 | 3,207人 | 16.4% | 23.2% |
申込者に対する合格率は15%前後にとどまっていますが、全ての科目を欠席せずに受験した方の合格率は17.7%から26%となっています。この数字だけをみると年度によって難易度は変わるものの、平均して20~25%ほどの合格率となります。これは全ての科目を欠席せずに受験した方のおおよそ4、5人に1人が第1次試験に合格できることを示しています。
企業経営理論の科目合格率
年度 | 科目受験者数 | 科目合格者数 | 科目受験者数に占める 科目合格者数の割合 |
---|---|---|---|
平成30年度 | 13,037人 | 927人 | 7.1% |
平成29年度 | 12,108人 | 1,091人 | 9.0% |
平成28年度 | 12,659人 | 3,746人 | 29.6% |
平成27年度 | 12,628人 | 2,105人 | 16.7% |
平成26年度 | 13,796人 | 1,849人 | 13.4% |
上表は第1次試験の企業経営理論の科目受験者とその合格率を集計した表です。この科目合格者には第1次試験に合格した受験者は含まれていません。第1次試験に不合格の場合でも約7%~30%ほどの受験者が毎年科目合格となっています。
つまり、毎年約3割~4割を超える受験者が第1次試験を合格、もしくは企業経営理論の科目合格者となっていることがわかります。そのため、第1次試験の企業経営理論は年度によって難易度が異なるものの、入念に対策を行うことで対応ができるレベルと言えるでしょう。
2-2.企業経営理論の試験範囲
企業経営理論では幅広い知識が問われます。試験範囲は大きく分けて以下の3分野です。
- 経営戦略論
- 組織論
- マーケティング論
経営戦略論
市場・政治・経済・規制などの外部環境と、人材・商品・資金などの経営資源を分析し、長期的な経営目標を定めることを経営戦略と言います。製品と市場の関係に着目した成長戦略やコスト・差別化に着目したポーターの競争戦略などが主な論点です。この分野では、経営計画から経営管理、企業戦略、成長戦略、経営資源戦略、競争戦略、技術経営(MOT)から国際経営まで幅広い知識が問われます。
組織論
組織論では、経営戦略で定めた目標を達成するために経営資源である人材をどのように活用し、定められた経営目標をどのように達成するかという知識が問われます。経営組織の形態や構造に関する知識や、人材の配置や管理といった人的資源管理、経営者や上司に関わるリーダーシップ論などが主な論点です。また、労働基準法や労働組合法、労働関係調整法といった労働法規に関する知識も問われます。
マーケティング論
マーケティング論は、マーケティングの基礎概念や市場調査の方法、消費者行動、製品計画、価格計画などが出題範囲です。マーケティング論では、経営戦略で定めた目標を達成するためにマーケティング戦略の立案を行いますが、これを実現するために必要な、製品(プロダクト)、価格(プライス)、販売促進(プローモーション)、場所や物流(プレイス)の4Pの戦略理論が中心となって出題されます。
3.企業経営理論の勉強法とコツ
企業経営理論は中小企業診断士にとって基本となる知識のため、第2次試験とも深い関連のある科目です。そのため、第1次試験対策だけのために勉強するのではなく、第2次試験でも活きるように知識を身につける必要があります。
まずは、テキストを読みながらインプットの作業をしていくこととなります。分からない用語は調べながら内容の理解に努めることが重要です。特に経営学の勉強や企業経営に携わる仕事をされたことがない方にとっては、聞きなれない専門用語なども多くなりますが、まずは用語の暗記よりもその意味をよく理解しましょう。内容の理解ができた分野は問題集などでアウトプットの練習も並行して行うとより効果的です。
試験範囲を一通り学習できたら過去問などを利用して本試験で求められるレベルを体感しながら知識の定着を図ります。その後、考え方とキーワードを押さえながら解けなかった問題などを整理していくことで、第1次試験に必要な知識の定着を図ることができます。このように暗記ではなく理解を中心とした学習を組み立てることで、第2次試験にも活用できる知識を効率的に身につけられるようになります。
企業経営理論は用語も難しく、特に初学者の方にとっては考え方を理解することも時間のかかる作業になります。また、初学者でなくとも、試験範囲が広いため試験に合格する水準までの対策を行うには多くの時間が必要です。
そのため費用はかかりますが、必要に応じて資格スクールなどの対策講座を受講することも、短期間で効率的に勉強するコツです。試験問題を徹底的に研究した専門家によって、試験のカギとなるポイントがテキストや問題集にまとめられているため、短期間で効率的に学習することが可能になります。また、理解しにくい問題があっても質問すれば答えてくれる講師がいることで勉強効率が上がります。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。中小企業診断士第1次試験の企業経営理論について説明しました。中小企業診断士の第1次試験では7科目の試験が行われるため、より効率的な学習が求められます。さらに企業経営理論は学習範囲が広い上に理解を中心とした勉強法が必要になるので、対策には時間を要する科目となります。必要に応じて資格スクールを活用するなど、ご自身に最も合った勉強方法を検討してみてください。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、中小企業診断士講座を用意しています。大栄の中小企業診断士講座は、中小企業診断士資格の他にもビジネスに役立つ複数の資格を取得できるカリキュラムとなっており、忙しい社会人の方でも効率的にキャリアアップを目指せる講座です。
大栄の中小企業診断士講座に興味がある方は、ぜひ一度資料請求や無料体験をお申し込みください。
【詳細ページ】資格スクール大栄の中小企業診断士講座の詳細を見る