政府による働き方改革実行計画の一環として、2018年1月に厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、これまで日本企業ではタブーとされてきた副業や兼業を促進する姿勢を鮮明にしました。このような状況下で、本業や副業に優先順位の差をつけない「複業」という新しい言葉も頻繁に使われるようになっています。
そこでこの記事では「副業」と「複業」の違いとともに、企業側・従業員側のそれぞれから見る副業のメリット・デメリットについて詳しく解説します。副業に関心のある方は参考にしてください。
1.副業とは?
もともと副業とは、農林漁業者の兼業や、アルバイトの掛け持ちのように収入(所得)を増やすための働き方を示していました。しかし最近は自己実現や自身が成長する機会として、また、老舗企業が相次いで倒産するような変化の激しい現代において、一つの企業に属することのリスクヘッジとして捉えられるようになっています。
よくある形としての副業とは、本業に就きながら収入源を増やす方法として別の仕事をすることです。例としては次のような仕事を挙げることができます。
- 経営コンサルタント
- セミナー講師
- 不動産事業(賃貸業)
- 株式投資
- ライター
- カメラマン
このように副業の内容は、アルバイトから起業まで人によって取り組む範囲は広いため、取り組み方次第で所得増加・スキル向上など様々な経験を積むことが可能です。副業をすることで所得増加のみならず、スキルの向上と様々な経験を積むことができれば、自らのキャリア形成に活用することができるという副次的効果も生みます。
2.複業とは?
複業とは「複数の仕事に従事する」ことであり、言葉としては副業も包含した捉え方です。複業と近い概念としては、近年注目度が高まっている「パラレルキャリア」が挙げられます。
パラレルキャリアというのは、ピーター・ドラッカー氏が提唱した考え方です。本業を持ちながら、ボランティアや地域・社会貢献活動等に参加するなど、必ずしも収入を伴う仕事に就くのではなく、広い意味で本業とは別に自分のキャリアを築くことが目的となります。
本業は本業としてしっかり取り組み、それとは違ったところにも夢ややりがいを持つという「新しい生き方のスタイル」とも言えます。そのため、自分の視野を広げるために大学や大学院に入って学ぶことも含まれ、新たな知識を習得する機会を得るとともに新しい人脈をも拡大することも可能です。
3.副業・複業のメリット
副業・複業に取り組むことで生まれるメリットについて、従業員側と企業に分けて整理すると次のようになります。
3-1.従業員にとってのメリット
離職しなくても別の仕事に就くことが可能なので、手軽に空き時間で副収入を得られます。また、自分のやりたいことに挑戦し、自己実現を図ることができるので、スキルや経験を得れば複数のキャリア形成を図ることができます。
3-2.企業にとってのメリット
人材育成という面では、自社だけでは提供できない機会を与えることができるため、従業員のスキル向上につながります。また、多様な働き方を認めることで従業員の「モチベーション向上」につながるとともに、特定の技術や知識をもったビジネスパーソンの獲得を含め、採用力の向上につながります。
また、自社以外の企業もしくは事業環境や文化に触れることで、自律性の向上につながるとともに、得意分野以外のスキルを獲得でき、多様な人材との交流の中でリーダーシップを育むことができます。
このように従業員に対して、社外の環境に身を置く機会を与えることで、「新しい知識」「最新の情報」「新たな人脈」等を得ると言う、いわゆるオープン・イノベーションが起こり、自社の事業拡大の機会を生むことになります。(参考:厚生労働省のガイドラインに示された「副業・兼業の促進の方向性」)
4.副業・複業のデメリット
メリットがあれば、その副作用としてのデメリットや解消すべき課題もあります。それぞれ従業員と企業に分けて見ていきましょう。
4-1.従業員にとってのデメリット
本業を優先しつつも別の仕事にも取り組むことになるため、労働時間の長時間化が懸念されます。企業側の配慮も必要とは言え、基本的には自分自身で業務の進捗管理、労働時間管理及び健康管理を行う必要があります。
また、限られた時間内での種類の違う複数業務への取り組みは、各業務への時間の割り振りがうまくいかないと、全ての業務に対するコミットメントが低下するというリスクもあります。本業の効率化が進めばリスクを減らすことができますが、いずれにしても高い自己管理能力が問われることになります。
さらに、企業が副業・複業を認めるとは言え、会社法や民法をベースとした「職務専念義務」「秘密保持義務」「競業避止義務」が課せられることに変わりはなく、社外に身を置く機会が生まれることで、これらの義務はむしろ厳格化されるとも考えられます。
本業先での雇用条件によっては、1週間の所定労働時間が基準に満たない業務を複数行うことになることも考えられ、このような場合、雇用保険等の適用がないこともあるため注意が必要です。
4-2.企業にとってのデメリット
従業員の就業管理や健康管理への関与を根本的に検討し直す必要があります。副業・複業における業務の進捗管理、就業、健康管理を全てセルフコントロールのみに頼る管理手法では、制度の成功確率は低下する恐れがあります。
そのため、企業として従業員の副業や複業にどのように関与し、セルフコントロールを支援するのかを根本的に検討する必要があります。場合によっては、新たな経済的負担が発生することも留意しなければなりません。
従業員に求める「職務専念義務」「秘密保持義務」「競業避止義務」等について、規程類の整備を含め、企業の管理方法を実効性の高いものとする必要があるでしょう。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。副業・複業の違いと新しい働き方について解説してきました。言葉の定義では多少の違いはあるものの、副業・複業という働き方は、従業員と企業双方にとってメリットが大きいと言えます。しかし、このような柔軟な働き方には、労働時間の長時間化や機密情報の流出といった副作用(デメリット)も懸念されるので、取り組む際には慎重に検討しましょう。
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