日本ではグローバル化と労働力不足を背景にダイバーシティが進む中、円滑な人間関係を築き、チームの力を最大化させるための「ヒューマン・スキル」が注目されています。中でも、コミュニケーションの糸口となる「ヒアリング力」は、キャリアップを目指すビジネスパーソンにとっては必要不可欠な能力となっています。今回は、ヒアリング力についてその必要性と能力向上に不可欠な要素について詳しく解説しますので、キャリアアップを目指したい方は参考にしてみてください。
1.ヒアリング力とは
ヒアリング力は、「ヒューマン・スキル」を構成する能力要素の一つとされています。まずはヒューマン・スキルとは何かを再確認してみましょう。
1-1.ヒューマン・スキルとは
ハーバード大学のロバート・カッツ教授は、自らが体系化した「カッツ理論」において、「テクニカル・スキル(業務遂行能力)」「ヒューマン・スキル(チーム内の人間関係を円滑にし、チーム力を最大化する対人関係能力)」「コンセプチュアル・スキル(知識や組織内外の情報などを体系的に把握し、複雑な事象を概念化して本質を把握する能力)」という三つのマネジメント・スキルをあげ、三階層に区分したマネジメント層に必要とされる各スキルの度合いを示しました。
(表1)ヒューマン・スキルの構成要素
能力 | 内容 |
---|---|
コミュニケーション力 | 人の集まりである組織において、人と人との信頼関係を構築し、それを維持する力です。 |
ヒアリング力 | 相手の言葉に耳を傾ける、すなわち「聴く」ことによって、相手を理解し、相手の良さを引き出す力です。 |
交渉力 | 単にディールに勝つ強さではなく、対話とプレゼンテーションをもって相手に納得してもらう力です。 |
プレゼンテーション力 | 商談相手や組織内もしくは組織間の意思疎通を目的に、自分の意思を伝える力です。 |
働きかけ(動機付け)力 | 目的に向かって、周囲の人たちを動かしていく力です。 |
向上心 | 適時のリフレクション(=内省)によってスキルの棚卸をし、絶えず自身の価値を高めるための自己管理ができる力です。 |
リーダーシップ | 他の6つの力を総合して、部下や組織をけん引する力です。 |
1-2.ヒアリング力の本質とは
ヒューマン・スキルの構成要素である「ヒアリング力」では、単に相手の話しを聞くのではなく、相手の立場や意思を尊重するとともに、その人の持つ意見を理解することも求められます。ビジネスパーソンの中には、自身の立場や意見を中心に物事を進めようとする方もいますが、組織内ではビジネス成果を収めるために自分以外の仲間の能力を引き出すことも必要です。
ヒアリング力は、そのための有力なコミュニケーション・ツールとして、マネジメントを担う立場にある人にとっては必要不可欠の能力であると言えます。コーチングの分野では、「傾聴力」というスキルとして知られ、「聴く力は人徳に比例する」と表現されるほど重要かつ奥深いスキルと言われています。
2.ヒアリング力が必要な理由とは
ヒアリング力が必要とされる理由は、今日の日本の社会や経済を取り巻く環境の変化に求めることができます。以下、その要因とともに解説します。
2-1.グローバル化とダイバーシティの影響
日本では社会・経済ともにグローバル化が進む中、労働力人口の減少に伴うダイバーシティが進展しています。この大きな環境変化は、高度経済成長時代の名残とも言える「集団主義的村社会」としての日本の企業風土に変化をもたらし、出身国や性の違いを超えて、様々な個性をチームとしてまとめる必要に迫られています。
多様な個性から構成される集団の中で、個人の能力を最大化するためには、会社の方針を示すだけではなく、個人が何を考え、どのように仕事を進めようとしているのかを知る必要があります。異なる個性を一つの方向へ導くための方法は、他者を尊重し理解するとともに、互いの共通点を見出すことが重要です。ヒアリング力は、まさにこのために必要とされていると言えます。
2-2.イノベーションへの対応
グローバル化とともに、イノベーションの速さもまた企業のあり方を変えようとしています。ビジネスの世界は、少品種大量生産の工業時代から新しい価値観を具現化した商品・サービスや事業を自ら創り出す時代に入りました。また、「個人」の裁量で仕事を任せる場面が増えることにより、当人のモチベーション向上につながる反面、あたかも組織内に個人事業主を生み出したかのような状況となり、チームで働く力を削ぐ要因となりかねません。
このような新たなリスク要因を抱えながらも、「個人」の創造力を「企業」の創造性につなげ、成長のエンジンとするためにもヒアリング力が求められているのです。
3.ヒアリング力には質問力も必要
ヒアリング力によって、個々の置かれた状況を把握するとともに、個人の考えや新しいアイデアを引き出し、チームとしての力を最大化するためには、単に「聴く」だけではなく、積極的に質問をすることも必要です。会話を盛り上げる質問をすることで、情報やアイデア、問題の解決策や当人の意欲を引き出すことにもつながります。
「質問をする」という行為は、いわば相手の「人格」や「能力」を尊重している証しです。相手にとっては、話しを聞いてもらうだけなら、単にガス抜きをしてもらった程度にしか受け取らず、気は晴れたとしても前進する糧とはなりません。適切な質問を受けることで、それまで気付かなかった自分の可能性を発見し、それがモチベーションとなって生産性の向上につながるというサイクルが生まれる可能性が高まります。
ただし、“質問の仕方”には注意も必要です。言葉の使い方やイントネーションによっては、「質問」にならず「詰問」になってしまう危険性もあります。「なんで、こんな結果を招いたのか?」「どうして、このプロジェクトは進んでいないのか?」などは、言葉としては質問形式ではありますが、責任を糾弾しようとする「非難」のニュアンスも時に含みます。
このような質問の場合、「こうなった原因のリストを作ってもらえる?」「この問題に対処するために必要な要因をあげてみてくれる?」というように、相手が一定の客観性をもって問題を捉えることができるように誘導することも必要です。部下の仕事に対する考え方や将来の夢など、質問の材料はいくつもありますが、質問する側には相応のスキルが求められると言う点に留意しなければなりません。
4.まとめ
いかがでしたしょうか。今のビジネスシーンでヒアリング力がますます重要になる理由と、能力向上に必要な要素について解説してきました。働き方改革と外国人就労者の受け入れ拡大により、今後のダイバーシティへの対応ではパーソナリティの違いへの配慮はもとより、これまで組織になかった「異なる価値観」を有力な経営資源の一つとして活用するため、ヒアリング力は欠くことのできない重要なスキルとなります。部下をマネジメントする立場にある方やキャリアップを目指している方は、自分のヒアリング力について見つめ直してみてください。
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