少子高齢化の伸展がもたらす生産年齢人口の継続的減少によって、労働力不足という量的な問題が深刻化しており、最近はさらに「労働生産性の低さ」という質的な問題も日本経済にとって改善すべき重要な課題として指摘されています。
そこで今回は、ビジネス生産性の改善に影響を与えると言われる「モチベーション」について、詳しく解説します。働く際のモチベーションを上げたい方や、社員や職場内のモチベーション低下に悩んでいる方は、参考にしてみてください。
1.ビジネスの現場にモチベーションが必要な理由とは?
2017年度の年次経済財政報告(内閣府)では、働き方改革の促進がもたらす効能の一つとして、ビジネスの現場における労働者側のモチベーションと、企業側の生産性の向上について触れています。労働者側においては、同一労働同一賃金等による非正規雇用の処遇改善は、職務や能力が正当に評価されることを通じて、働くモチベーションを高め、能力開発に向けたインセンティブとなることが期待されています。
また、企業側にとっては、非正規社員の処遇改善を進めることで、彼らの技能向上や企業への定着志向へのインセンティブが高まることが挙げられます。これにより、職業訓練を含めた教育研修機会の増加など人的資本への投資が促進されるとともに、長時間労働の是正、柔軟な働き方の導入等による業務見直しが実践されることで、優秀な人材の採用や離職率の低下につながり、生産性を改善させることが期待されています。
このように、現在の経済情勢ならびに労働市場の動向等を鑑み、労働者の生産性を左右する心理的要因の一つとして、モチベーションの重要性が認識されるようになってきました。
2.モチベーションの種類
人事労務管理の分野でモチベーションを説明するとき、「動機付け」という言葉で説明されることがあります。動機付けのアプローチとして、米国の心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ氏は、人事労務管理に必要な要素を「動機付け要因」と「衛生要因」に分けて考えるべきであり、仕事における「満足」と「不満足」につながる要因はそれぞれ全く違うものであると説いています。
動機付け要因とは、「達成感」「承認されること」「責任」「昇進」「仕事のやりがい」などの仕事の満足度に関わる要素を言います。
一方、衛生要因は、「給与」「福利厚生」「人間関係」「働く環境」など仕事の不満につながる要素であり、「不満足要因」とも呼ばれており、たとえ整備されていても必ずしも満足につながるわけではないという特徴があります。例えば、給料が同業他社と比べて高いのはいいけれど、職場環境や人間関係を理由に満足できないといった論理です。
この動機付け要因と衛生要因は相互補完的な関係にありますが、仕事のやりがいとともに生産性の向上へ向けて実質的に重要になるのは動機付け要因とされ、さらに次のように区分されます。
- 外発的動機づけ
- 内発的動機づけ
2-1.外発的動機づけ
外発的動機付けは、行動の要因が「評価」「賞罰」「強制」などの他人から与えられる刺激によるものであるという考え方です。一般的に外発的動機付けの効果は一時的であり、ビジネスの世界で言えば「人材」としての成長には必ずしもつながらないと言われています。
ビジネスにおける外発的動機付けとしては、「給料」「昇給・昇進」などが代表的で、ほとんどの企業で取り入れられている「報酬と評価制度に基づくインセンティブ」となります。「高い報酬」を与えることや「罰」を与えるといった単純かつ明瞭な方法で分かりやすいため、対象となる仕事に興味がない人や、意欲的でない人などのモチベーション向上に有効に働き、短期間で効果が表れるという点がメリットになります。
一方で、従業員にとっては受身の動機付けとなるため、「効果が持続しない」「主体性や創造性を阻害する」「仕事に対する価値観を醸成できない」といったデメリットが指摘されています。しかし、外発的動機付けによって行動をしているうちに興味・関心が生まれ、後述する内発的動機付けへと変化していくこともあると言われており、個人や置かれた状況によって違いがあります。
外発的動機付けを、内発的動機付けにつなげる例としては、仕事で興味のない分野の担当になった社員が「与えられたプロジェクトを成功させて昇進する」ことを目的に勉強しているうちに興味が湧き、自発的にその分野の情報を深掘りして精通するようになるといったケースが挙げられます。
2-2.内発的動機づけ
内発的動機づけとは、行動を起こす際の意欲の質に関する概念であり、個人の内面に湧き起こった興味や関心、意欲などを行動要因とする考え方です。米国の作家ダニエル・ピンク氏は、その著書「モチベーション3.0」の中で、内発的動機づけについて「自主性」「成長」「目的」などのキーワードを使って解説しています。
内発的動機づけが高い人は、自らが主体となって目標達成のための学習に積極的に取り組み、たえず成長することに価値をおぼえ、満足を得ています。そして、このような人は、「社会や地域に対する貢献」「組織とともに成長すること」にも関心が高いという特徴がみられ、その存在感が高まれば周囲に波及して企業に好影響をもたらすことにもつながります。
また、内発的動機づけは、現代のビジネスで必要とされる「創造力」や「問題解決能力」などの高いスキルの醸成につながるため、新たなビジネスの創出や生産性の向上にも効果が期待できます。そのうえ、内発的動機づけ自体が自発的なものであるため、外的な要因に影響されることが少なく、当人は自分のモチベーションを維持することができます。
3.仕事の特性と動機付け
このように、外発的動機付けと内発的動機付けでは、仕事に対する動機付けのアプローチが異なるので、すでに内発的動機付けがなされている従業員に対して外発的動機付けを行うと、逆効果(アンダーマイニング現象)になる点にも注意が必要です。
そのため、仕事の特性を考慮した上で動機付けを行う例としては、まず、即時的なパフォーマンスが要求される業務においては外発的な動機付けを行い、徐々に創造的な仕事や、それに伴う学習等が必要となる分野へ移行する時に内発的動機付けを行っていくといった方法が挙げられます
内発的な動機付けで重要となるのは、「有能感」と「自己決定感(自律性とも言えます)」です。有能感とは、有能でありたいという思いや、その思いを行動に移し、自らの認識や技能を高めることです。これを成果につなげて高い評価を得ることができれば、さらに有能感を高めることにつながるので、企業には的確な評価を与えるための仕組み作りが求められます。
自己決定感とは、自律性を高めることで、様々な業務遂行過程や必要な学習に自ら進んで参加するなど、自らの行動は自らが決定したいという意思を持つことです。企業側は、従業員が自らの行動を選択する機会を増やすとともに、本人に、自らが選択しているということを認識させる仕掛けとして、適切なタイミングで助言や問いかけといったサポートを行う体制作りが必要となります。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。モチベーションについて「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の視点から解説してきました。一般的には内発的動機付けを中心に語られることの多い分野ですが、外発的動機付けは否定されるものではありません。この2つの要素を相互に有効に作用させることがモチベーションマネジメントを成功させるためのポイントとなるので、働く際のモチベーションを上げたいという方やマネジメント層のビジネスパーソンの方は、今回ご紹介したモチベーションの考えを活用してみてください。
また、仕事でのモチベーションアップには、資格取得やスキルアップも効果的だと言われています。
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