社会保険労務士(社労士)は、社会保険労務士法に基づく国家資格で人気がある仕事の一つです。社労士は、企業における労働社会保険や年金に関する実務・相談・指導を行うなど、専門的かつ広範囲な業務を担うのが主な仕事で、安定した収入や定年退職後も働ける職業として注目されています。
そこで今回は、社労士の仕事内容や年収について詳しくご紹介します。社労士の資格を目指している方、社労士の仕事に関心がある方は、参考にしてください。
1.社労士の仕事内容とは?
社労士は、次のような業務を行っています。
- 労働社会保険の手続業務
- 労務管理の相談・指導業務
- 年金の相談業務
- 紛争解決手続の代理業務
- 補佐人の業務
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1.労働社会保険の手続業務
労働社会保険とは、労働保険(労働者災害補償保険、雇用保険)および社会保険(健康保険、厚生年金保険)をまとめた名称です。社労士は、労働関係法令や社会保険関係法令に基づく業務を行うことにより、企業における労働社会保険への適正な加入を確保し、社員が安心して働くことができる職場環境の維持や改善を行います。
・具体的な業務内容
労働社会保険の適用・年度更新・算定基礎届 | 社員の入退社に伴う資格取得や喪失の手続きを行います。 |
労働者名簿・賃金台帳の作成 | 法定帳簿(労働者名簿や賃金台帳)を適正に作成します。 |
助成金の申請 | 雇用や職業能力開発に関する各種助成金の申請手続きを行います。 |
就業規則・労使協定の作成・変更 | 法令を遵守した就業規則や労使協定(36協定)の作成・変更を行います。 |
1-2.労務管理の相談・指導業務
労働者が安心して働くことのできる職場環境を作るため、労務管理の相談・指導を行うのも社労士の仕事です。
雇用・人材育成に関する相談 | 人材の雇用や育成に関する相談を受け、提案を行います。 |
人事・給与・労働時間に関する相談 | 企業の人事・給与・労働時間に関する相談を受け、提案を行います。 |
経営労務監査 | 企業の労働社会保険の適用や雇用・労務管理の運用について監査を行い、法令違反や職場のトラブルを防止します。 |
1-3.年金の相談業務
企業や個人からの年金についての疑問や相談を受けるとともに、年金にかかる手続きを行います。
年金の受給資格・加入期間などの確認 | 年金加入記録に基づき、年金の受給資格の有無や受取開始年齢、年金額などを確認します。 |
裁定請求書の作成・提出 | 裁定請求書の作成・提出など、年金の受給申請手続きを行います。 |
年金相談センターでの年金相談 | 全国社会保険労務士連合会では、街角の年金相談センターで年金相談を受けています。 |
1-4 紛争解決手続の代理業務
紛争解決手続の代理業務は、特定社労士が行うことができます。特定社労士になるには、厚生労働大臣が定める研修を修了し、紛争解決手続代理業務試験に合格する必要があります。
特定社労士は、当事者の主張を聞きながら、労働関係の紛争をあっせん手続きによって解決に導くことができます。
労働関係紛争における裁判外紛争解決手続き・あっせん・調停の代理 | 個別の労働関係紛争において、法に基づき紛争解決手続きを代理して解決に導きます。 |
1-5.補佐人の業務
社労士は、労働社会保険に関する行政訴訟や個別の労働関係紛争において補佐人としての役割を務めることもできます。
補佐人として意見陳述 | 労働社会保険に関する行政訴訟や個別の労働紛争による民事訴訟において、裁判所に出頭して意見を陳述します。 |
2.社労士の年収
社労士の年収は、勤務社労士・開業社労士によって異なります。それぞれ確認してみましょう。
2-1.勤務社労士の平均年収
勤務社労士とは、一般企業または社労士事務所などに勤務している社労士です。勤務社労士は、勤め先の企業や事務所から給料が支給されます。
令和元年(2019年)賃金構造基本統計調査によると、勤務社労士の平均年収は次のようになっています。
・社労士の年収
性別 | 年齢 | 勤続年数 | 給与月額 | 年間賞与等 | 平均年収 |
---|---|---|---|---|---|
男性 | 43.8歳 | 12.0年 | 33.68万円 | 80.59万円 | 484.75万円 |
女性 | 46.3歳 | 15.9年 | 27.14万円 | 90.59万円 | 416.27万円 |
男性社労士は、平均年齢43.8歳、勤続年数12.0年で、給与月額が33.68万円、年間賞与等が80.59万円となっており、合算すると年収は484.75万円になります。
一方、女性社労士は、平均年齢46.3歳、勤続年数15.9年で、給与月額が27.14万円、年間賞与等が90.59万円となっており、年収は416.27万円です。
2-2.開業社労士の平均年収
独立開業している社労士の年収は必ずしも一定ではありません。年収1,000万円以上を稼ぐ高額所得者がいる一方、年収100~200万円程度のケースもあります。
これは、開業社労士の年収が、本人の職業能力・営業力・地盤などの影響を大きく受けることが要因です。社労士として稼ぐには、専門分野の実務能力やコミュニケーション能力に加え、顧客を確保するための営業力が必要です。営業力に長けた社労士は、積極的に企業開拓して顧問契約を増やしていくことができます。
さらに、長期にわたり開業している社労士は強固な営業地盤を持っていますが、新参の社労士は営業地盤ができていないため、得意先の数もそこまで多くありません。このように、開業社労士によって専門分野の能力や営業力、地盤などは異なるため、年収に大きな差があらわれることもあります。
2-3.会社員の年収と比較
令和元年(2019年)分民間給与実態統計調査によると、会社員の平均年収は次の通りです。
区分 | 平均年収 |
---|---|
男性 | 540万円 |
女性 | 296万円 |
正規 | 503万円 |
非正規 | 175万円 |
会社員の平均年収は、男性が540万円、女性が296万円となっています。また、正規・非正規別では、正規社員が503万円、非正規社員が175万円の結果となっています。
これを社労士の年収と比較してみると、男性は会社員のほうが若干高くなっていますが、女性は社労士のほうが120万円以上も高い結果となっています。
・社労士と会社員の年収比較
社労士・男性(A) | 484.75万円 |
会社員・男性(B) | 540万円 |
差(A-B) | ▲55.25万円 |
社労士・女性(C) | 416.27万円 |
会社員・女性(D) | 296万円 |
差(C-D) | 120.27万円 |
このような結果になった要因として、女性会社員は男性会社員と比べてアルバイトやパート等の非正規社員が多く含まれているため、年収の平均値が下がったことが挙げられます。そのため、女性社労士の年収は民間企業に比べて、かなり高い水準となっています。
3.まとめ
社労士は、労働社会保険にかかる各種の手続きをはじめとして、労務管理や年金に関する相談・指導、労働関係紛争における代理や行政訴訟における補佐人としての役割など、専門的で幅広い業務を行っています。
また、社労士の平均年収では、男性社労士は会社員とあまり大差がないのに対して、女性社労士は会社員に比べて高水準なのが特徴です。
社労士になるには、国家試験である社会保険労務士試験に合格することが必要です。社労士の仕事内容に興味をもった方は、この記事などを参考に試験科目やスケジュールについてもチェックしてみてください。
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