コンプライアンスや企業倫理の重要性が高まる中、企業の労務管理をサポートする社労士が欠かせない存在となっています。社労士は労働関係のスペシャリストとして活躍できる専門性の高い資格であり、独立・開業を目指せるほか、活躍次第では高年収を得ることも可能です。
この記事では、社労士の試験内容や仕事内容、年収、メリットについて詳しくご紹介していきます。就職・転職、キャリアアップのために資格取得を検討している方は参考にしてみてください。
1 社労士とは
社労士とは、社会保険をはじめとした労働関係のスペシャリストとして活躍できる資格です。正式には社会保険労務士といい、健康保険や労働保険、公的年金などの社会保険関係に精通し、採用から退職までの労務管理全般で企業などをサポートします。
社労士の仕事内容は多岐に渡ります。労働社会保険に関する書類の作成および手続き代行だけでなく、就業規則や賃金台帳などの法律に基づいた労働社会保険に関する帳簿作成、労務管理の相談および指導なども行います。
なお、社労士は社会保険労務士法に基づいた国家資格のため、資格取得のためには国家試験に合格する必要があります。その後、実務経験が2年以上ある場合は全国社会保険労務士会連合会に登録することで、社労士として業務を行うことが可能になります。
一方、実務経験が無い場合は、全国社会保険労務士会連合会の実施している事務指定講習を修了すると社労士として登録できるようになります。
2 社労士試験の内容
社労士試験の内容について詳しく確認してみましょう。
2-1 日程
社労士試験は例年8月の第4日曜日に実施されており、2021年度は8月22日に実施されました。試験は毎年4月中旬頃に厚生労働大臣の官報公示で詳細が発表され、例年5月末までが受験申込みの受付期間です。その後、試験を経て10月末頃〜11月上旬の間に合格者が発表されます。
2-2 受験資格
社労士試験には受験資格が定められており、以下3つのうちいずれかの条件を満たしていると受験可能です。
学歴
大学、短期大学、専門職大学、高等専門学校(5年生)などを卒業、または大学で一定の単位などを取得した者。
実務経験
労働社会保険諸法令の実施事務に3年以上従事した者や、国又は地方公共団体の公務員などとして行政事務に3年以上従事した者など。
試験合格
司法試験予備試験や旧司法試験の第一次試験、行政書士試験、その他厚生労働大臣の認める公務員試験や国家試験などに合格した者。
社労士試験は受験資格がやや複雑なため、学歴以外の受験資格で出願を検討する場合は、条件等の詳細をしっかり確認することが大切です。
2-3 試験内容
社労士試験は本試験当日に80分の選択式試験と210分の択一式試験の2つの試験がマークシート方式で実施されます。試験科目と配点は以下の通りです。
試験科目 | 選択式試験 計8科目(配点) |
択一式試験 計7科目(配点) |
労働基準法及び労働安全衛生法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
労働者災害補償保険法 (※択一式のみ労働保険の保険料の徴収等に関する法律からも出題) |
1問(5点) | 10問(10点) |
雇用保険法 (※択一式のみ労働保険の保険料の徴収等に関する法律からも出題) |
1問(5点) | 10問(10点) |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 1問(5点) | 10問(10点) |
社会保険に関する一般常識 | 1問(5点) | |
健康保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
厚生年金保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
国民年金法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
合計 | 8問(40点) | 70問(70点) |
参照:社会保険労務士試験
合格するには、各試験科目で総得点による基準と科目別の基準の両方を上回る必要があります。例年は、選択式試験で総得点23~26点以上かつ各科目3点以上、択一式試験で総得点42~45点以上かつ各科目4点以上が合格ラインとなっています。
2-4 難易度・合格率
過去5年の受験者数と合格者数、合格率の推移は以下の通りです。
実施年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率 |
令和2年度 | 34,845 | 2,237 | 6.40% |
令和元年度 | 38,428 | 2,525 | 6.60% |
平成30年度 | 38,427 | 2,413 | 6.30% |
平成29年度 | 38,685 | 2,613 | 6.80% |
平成28年度 | 39,972 | 1,770 | 4.40% |
参照:厚生労働省
平成28年度は4.4%とやや低い水準ですが、過去5年間の合格率は概ね6%程度で推移しています。合格率のみで他の国家資格試験と比較すると、3%前後の司法書士試験より易しく、10%前後の行政書士試験よりも難しいレベルとなります。
ただし、社労士試験は、選択式と択一式の両試験で各科目とも足切り点をクリアした上で、合格基準となる60%超の得点が必要です。万全な対策をした上で試験に挑む必要のある難関試験となっています。
3 社労士の資格が必要な仕事
社労士の独占業務は、大きく分けて1号業務と2号業務があります。主な仕事内容は以下の通りです。
3-1 1号業務
健康保険や厚生年金、雇用保険などの労働社会保険諸法令に基づく書類の作成や手続きの代行、これらの手続きに関する行政の調査や処分などに対する主張や陳述を代理して行います。
3-2 2号業務
労働社会保険諸法令で作成が義務付けられている労働者名簿や賃金台帳、就業規則等の帳簿書類を作成します。
このほか3号業務と呼ばれる業務もあります。3号業務は、労務管理のコンサルティングなどを行う仕事ですが、社労士の独占業務ではありません。しかし、働き方が多様化する現在において社労士の重要な業務の一つとなっています。
4 社労士を取得するメリット
社労士を取得すると就職や転職の選択肢が多くなる点はメリットの一つです。社労士の業務を専門的に行う社労士事務所だけでなく、税理士事務所や行政書士事務所などの様々な職場で働くことができ、将来的な独立なども視野に入れたキャリア形成が可能になります。
また、一般企業での採用が有利になる点も社労士資格を取得するメリットです。労務管理の知識は労務関係を専門的に扱う人事部などの管理部門だけでなく、役員や管理職にも求められているため、就職や転職の際に社労士の有資格者は重宝されます。
5 社労士の年収
社労士の平均年収は厚生労働省などの統計資料を基にすると500万円前後となります。しかし、社労士は独立開業している方から企業で勤めている方まで幅広いため、平均年収はあくまでも目安として捉えておきましょう。
会社勤めの社労士の場合、安定的に収入を得ながら働くことは可能ですが、平均を大幅に超えるような収入や、逆に200~300万円前後などのケースは少なくなります。
一方、独立開業の場合、数千万円などの高収入を得られるケースもあれば、新人社労士で200~300万円前後の場合もあるなどさまざまです。
6 社労士はこんな人におすすめ
社労士試験は難関な試験にも関わらず、働きながら試験に合格する方の多い試験です。そのため、会社に勤めながらキャリアアップや転職などを考えている方にはおすすめできる資格です。
また、社労士試験は国家資格の中でも比較的女性の合格者が多く、キャリアアップを目指す女性にとっても資格取得後のキャリア形成がしやすい資格となっています。そのため、男女を問わず新たなキャリアを築きたいと考えている方にも向いています。
7 まとめ
社労士は企業活動をする上で避けて通ることのできない労務管理のスペシャリストとして活躍できる資格です。そのため、社労士事務所での勤務や独立開業だけでなく、一般企業などでも幅広く活躍することができます。
また、働きながら合格される方も多いため、キャリアアップや有利な条件での転職などを考えている方にもおすすめできます。社労士に興味のある方は、受験資格、試験概要や学習スケジュールなどもしっかり確認した上で検討してみてください。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、社労士資格の勉強が初めての方でも、合格に必要な知識を身につけられる独自のテキストとカリキュラムをご用意しています。
資格スクール大栄の社労士(社会保険労務士)資格講座が気になった方は、ぜひ一度資料請求や自宅で受けられる無料体験レッスンをお申し込みください。
【通学・オンラインどちらのレッスンタイプも選べます!】