社会保険や労務関係のスペシャリストとして知られる社会保険労務士は、専門的な知識を活かして会社の事業経営や雇用問題のサポートをできるなど、やりがいのある仕事です。また、士業と呼ばれる職業のひとつに数えられるので、独立開業して働ける点も人気の理由の一つとなっています。
そこで今回は、社会保険労務士について詳しく知りたい方のために、社会保険労務士の仕事内容と適正について詳しく解説するので、参考にしてみてください。
1.社会保険労務士の仕事内容
社会保険労務士の主な業務は、社会保険等や労務関係の書類の作成、提出代行、相談などです。また、法改正により、労働トラブルの裁判や紛争解決業務にも関わることができるようになっています。
社会保険等に関する業務には、「社会・労働保険の手続業務」や「社会保険料の算定基礎届の作成業務」などがあります。また、労務に関する業務として、「就業規則の作成業務」、「法定三帳簿の作成業務」などが挙げられます。
それぞれどのような業務なのか、具体的に見ていきましょう。
1-1.社会・労働保険の手続業務
会社では、原則として経営者と雇用者の社会保険の加入が義務付けられているため、健康保険や厚生年金などの社会保険の加入手続をしなければなりません。また、会社に雇われた人が、31日以上雇用される見込みがあり、労働時間が1週間に20時間以上である場合、その者の雇用保険の加入義務も発生します。さらには、社会保険や労働保険の適用となった場合、給付の請求をしなければなりません。
社会保険や労働保険の加入や給付の手続は、提出しなければならない書類が多く、手続期限もあるため、社内で手続を行なう場合、大きな負担となります。そのため、社会保険労務士が会社に代わって負担の大きい社会保険や、労働保険の加入や給付の手続を行なっています。
1-2.社会保険料の算定基礎届の作成業務
会社は毎年、算定基礎届を提出しなければなりません。算定基礎届とは、社会保険料の算出基準である「標準報酬月額」を決める際の判断材料となる書類です。
算定基礎届の対象には、社会保険の被保険者だけではなく、70歳以上の健康保険の被保険者も含まれるなど、イレギュラーな事項もあります。また、7月1日時点の算定基礎届対象者を記載した上で届出書を作成し、同年7月10日までに提出しなければなりません。届出書を短期間で作成しなければならないので、会社にとっては負担となる作業です。
そこで社会保険労務士が、社会保険料の算定基礎届の作成を代行し、会社の負担軽減に貢献しています。
1-3.就業規則の作成業務
常に10人以上雇用する会社の場合、就業規則を作成し、労働基準監督署長に届ける義務があります。就業規則とは、給料や勤務時間などの労働条件や職場内のルールを定めたものです。就業規則で定めた内容が法律の規定に反している場合、その部分は法的に無効となります。
社会保険労務士は、法的に問題のない就業規則の作成し、社内トラブルを予防する役割も果たしています。
1-4.労務・年金に関する相談や指導
社会保険労務士は、書類の作成や提出代行だけではなく、コンサルティング的な業務も行なっています。具体的には、働いている従業員が納得できるような給料支給額や労働条件を提案したり、会社の成長につながる人材の獲得や育成方法をアドバイスしたりしています。
また、社会保険労務士は年金に関する専門家でもあります。そのため、個人に対して年金に関する相談も行なっています。
年金にも様々な種類があるので、1つ1つを正確に把握できていないケースも珍しくありません。例えば、公的年金は、対象者が老後にもらえる老齢年金だけではなく、障害を負ったときにもらえる障害年金や、対象者が亡くなったときに遺族がもらえる遺族年金も含まれます。また、各種年金の受給規定も複雑なので、わかりにくい面も多くあります。
そこで、社会保険労務士が人々に対して年金に関する情報をわかりやすく提供しています。
1-5.労働関係の裁判外紛争解決代理業務
会社と従業員の間で労働トラブルが起こるケースもあります。例えば、「残業をしたのに残業代が支払われない」「支給された給与が雇用契約の条件よりも少ない」「休日出勤を強要された」などの場合です。
このような場合、まずトラブルの当事者同士が話し合いをして解決を図るのが通常ですが、社会保険労務士は、この労働関係の裁判外紛争解決手続に代理人として参加することができます。
ただ、労働関係の裁判外紛争解決代理業務を行なえるのは、特定社会保険労務士に限られます。特定社会保険労務士とは、一定の研修を受けた後、裁判外紛争解決代理業務に関する試験に合格した社会保険労務士のことです。
1-6.社会保険労務士補佐人業務
発生した労働トラブルが当事者同士の話し合いで解決できないケースもあります。このような場合、裁判所で解決を図ることになりますが、社会保険労務士は補佐人という立場で参加できます。補佐人とは、裁判所に出頭して意見を述べられる者のことです。
当事者の代理人となって裁判手続を行なうのは弁護士です。しかし、労働トラブル事件の裁判をする際、その分野の専門家の意見を聞いた上で手続をしたほうが円滑に進みます。
そのため、法改正により社会保険労務士が補佐人として労働トラブル事件の裁判に参加できる制度が創設されました。
なお、社会保険労務士が補佐人として裁判に参加するためには、事件当事者の訴訟代理人である弁護士と一緒に裁判所へ出頭しなければなりません。
2.社会保険労務士に向いているのはどんな人?
どのような職業にも適性・不適正があります。社会保険労務士に向いているのはどのような人なのかを見ていきましょう。
2-1.地味で複雑な計算作業を早く正確に行なえる人
社会保険等や労務関係の書類を作成する際、給与額、保険料、年金支給額などを正確に計算するスキルが求められます。中には、複雑な計算作業を要するものもあるので、地味な作業を根気よく行なえる人は、社会保険労務士に向いています。
また、上記書類の中には、提出期限が短いものも少なくありません。そのため、短期間で正確な事務作業ができる人も社会保険労務士の適性があります。
2-2.人とのコミュニケーションを取るのが得意な人
社会保険労務士は、会社や個人を相手に労働、雇用、年金に関する相談を行ないます。また、特定社会保険労務士となり、労働関係の裁判外紛争解決代理業務を行なう際、当事者の間に入って交渉しなければなりません。これらの業務を行なうには、コミュニケーション能力が必要です。
3.初めて社会保険労務士試験に取り組むなら資格スクール受講を検討しよう
社会保険労務士になるには、国家試験を受験して合格する必要があります。社会保険労務士試験の受験対策方法には、主に「資格スクールを受講して勉強する方法」と「独学で勉強する方法」がありますが、初めて社会保険労務士試験に挑戦するなら、資格スクール受講を検討するのがおすすめです。
平成12年から令和元年までの社会保険労務士試験の合格率は、2%~10%台で推移しています。つまり、受験者数100人のうち合格できるのは2人~10人程度で、初めて受験する人が独学で挑戦するには難しい試験といえるでしょう。
また、社会保険労務士の試験問題は、労務、社会保険、年金に関する法令から幅広く出題され、合格に求められる知識の量も多いのが特徴です。初めて試験を受ける人が独学で勉強しても、量の多さに圧倒されて、知識をしっかりと身につけられないケースもあります。
一方、資格スクールを受講すると、出題頻度の高い分野を中心に学習できるので、合格に必要な知識を効率的に身につけられます。また、学習のペースメーカーにもなるため、試験合格まで勉強を続けられるようになる点もメリットです。
4.まとめ
社会保険労務士は、業務を通じて会社の経営や雇用の問題解決を図ることにより、企業成長の一翼を担っています。また、当事者の代理人として労働トラブルの話し合いに参加したり、弁護士と一緒に労働トラブルの裁判に参加したりできるようになり、業務の幅も広がっています。
社会保険労務士になる第一歩としては、まず国家試験合格に合格する必要があります。独学で目指すことも可能ですが、初めて挑戦する場合は資格スクールや通信講座を活用して、効率的な合格を目指しましょう。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、初めて社労士を目指す人でも、合格に必要な知識を無理なく効率良く身につけることができるよう、独自のテキストとカリキュラムを用意しています。
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