刑務官は体力的・精神的な厳しさを要求される仕事であり、社会的意義のある職業として高い人気があります。刑務官になるには基本的に公務員試験を受ける必要がありますが、採用枠によって受験資格や試験内容が異なってくるため、採用試験に関する事前の確認が大切です。
そこで今回は、刑務官とその仕事内容や特徴、刑務官になるための方法や適性について、詳しく解説していきます。刑務官に興味のある方、社会的意義のある職業に就きたい方は、参考にしてみてください。
1.刑務官とは?
刑務官とは、刑事施設で働く職員をいいます。刑事施設とは、「刑務所」「鑑別所」「拘置所」「少年刑務所」などの施設のことです。刑事施設は、国の組織である法務省の管轄にあります。そのため、刑務官は、法務省の矯正局に属する国家公務員という立場で働いています。
刑務官には階級があり、「一般職」と「管理職」に大きく分類されます。一般職に分類される階級には、「看守」「看守部長」「副看守長」の3種類があります。一方、管理職に分類される階級は、「看守長」「矯正副長」「矯正長」「矯正監」の4種類となります。
刑務官に採用された人の大半は、一番下の看守の階級が与えられます。そこからキャリアを重ねて、看守部長、副看守長へとステップアップしていくのが一般的です。また、管理職に分類される階級へ進むには、原則として昇進試験を受ける必要があります。
2.刑務官の仕事内容や特徴
刑務官の業務は、「受刑者の教育・指導・カウンセリング」「刑務作業の監視・指導」「施設内の巡回・開房および閉房点検」「郵便物受領・業務報告」などとなります。各業務は具体的にどのようなものなのか、その内容や特徴を見ていきましょう。
2-1.受刑者の教育・指導・カウンセリング
刑務官の職務目的の一つは、受刑者を更生させた上で社会復帰をさせることです。それらを実現するため、刑務官は受刑者を教育したり指導したりする業務を行なっています。
刑務官が教育や指導を行なうことで、受刑者は社会への適応性を身につけられたり、これまでの考え方を改めたりするようになります。その結果が刑務官の職務目的の達成へと繋がっていきます。
また、刑務官は、受刑者からの相談に応じたり、カウンセリングを行なったりしています。何かしらの原因で自分自身が傷つき、それによって罪を犯してしまう受刑者もいます。例えば、幼い頃より両親から虐待を受け続けて愛情を受けずに育った少年が、非行に走って罪を犯してしまうようなケースです。
刑務官が相談やカウンセリングを行なうことで、受刑者が抱えている傷の痛みが解消される場合もあるので、再犯の抑制効果等が期待されています。
2-2.刑務作業の監視・指導
刑務所に収容されている受刑者は日々刑務作業を行なっています。刑務作業とは、受刑者の更生と社会復帰の実現を目的として行なわれる就業作業のことです。受刑者の中には、他の人と協調しながら作業できない人もいます。そのため、刑務作業中に受刑者同士のトラブルが発生するケースも珍しくありません。
刑務官は、上記のようなトラブルの発生を防止するため、刑務作業中に受刑者を監視したり、指導したりする業務も行なっています。
2-3.施設内の巡回・開房点検および閉房点検
刑務官の職務目的は受刑者の更生や社会復帰実現のほか、刑事施設内の保安維持もあります。そのため、刑務官は刑事施設内の巡回、開房点検、閉房点検などの業務も行なっています。
刑事施設内の巡回は、深夜の時間に行なうのが通常です。昼間よりも深夜の時間のほうが、施設内にいる人の数は少なく、受刑者の脱走や外部からの侵入も深夜に起こりやすいため、この時間に巡回作業を行なう慣例となっています。
また、開房点検と閉房点検は、受刑者の確認を目的として行なわれます。開房点検では、受刑者が決められた時間に起床しているのかを確認します、一方、閉房点検では受刑者が刑務作業を終えた後、きちんと自分の房に戻っているのかを確認します。
2-4.郵便物の管理・業務報告
刑事施設に届く郵便物の管理や業務報告などの事務作業も、刑務官の仕事のひとつです。刑事施設には、日々受刑者宛の郵便物が届きます。送られてくる郵便物の中には、不適切なものが含まれている可能性もあります。そのため、送られてきた郵便物の内容を刑務官が事前に確認した上で、問題がなければ受刑者本人へ渡す形になっています。
また、業務報告は、刑事施設内で働く刑務官同士が情報共有する目的で行なわれます。刑事施設では突発的な問題が生じたときにも対応できるように、情報共有を目的として各刑務官が業務報告を毎日行なうことになっています。
3.刑務官になる方法
刑務官になるには、おもに「刑務官採用試験」に合格する方法、「国家公務員総合職試験」に合格する方法があります。
刑務官になっている人の大半は、刑務官採用試験の合格者です。試験に合格して刑務官に採用されると初等科研修を受けます。研修を終えた後、刑務官の仕事をスタートさせる流れが基本です。
一方、国家公務員総合職試験に合格した場合、法務省の矯正局の職員として採用されるのが通常です。そのため、刑務官採用試験の合格者とは異なり、採用後は管理職からのスタートとなります。
以下では、刑務官になる方法として一般的な刑務官採用試験の受験資格について見ていきましょう。
3-1.刑務官採用試験の受験資格
刑務官採用試験には、「刑務A」「刑務B」「刑務A(武道)」「刑務B(武道)」「刑務A(社会人)」「刑務B(社会人)」の6つの採用枠があります。2020年度の刑務官採用試験の受験資格は、以下の通りです。
刑務A | 1991(平成3)年4月2日~2003(平成15)年4月1日生まれの男性 |
刑務A(武道) | |
刑務B | 1991(平成3)年4月2日~2003(平成15)年4月1日生まれの女性 |
刑務B(武道) | |
刑務A(社会人) | 1980(昭和55)年4月2日~1991(平成3)年4月1日生まれの男性 |
刑務B(社会人) | 1980(昭和55)年4月2日~1991(平成3)年4月1日生まれの女性 |
上表の受験資格を有する年齢の範囲内にある男性・女性であっても、日本国籍者ではない者、国家公務員法第38条の規定によって国家公務員になれない者、1999(平成11)年改正前の民法の規定による準禁治産宣告を受けている者は、刑務官採用試験を受験できない点にも注意が必要です。
4.刑務官に向いている人はこんな人
刑務官の仕事では職務への使命感・体力・注意力が求められるので、以下の条件に当てはまる方は向いていると言えます。
- 職務に対する使命感のある人
- 体力的に強い人
- 注意力がある人・単純作業を飽きずにできる人
4-1.職務に対する使命感のある人
受刑者を更生させたり、社会復帰をさせたりする刑務官の仕事をこなすには、人並み以上に正義感を持っていることが求められます。そのため、職務に対して強い使命感を持つことができる人は、その適性があります。
4-2.体力的に強い人
刑務官は、仕事上24時間勤務や交代勤務をこなさなければなりません。また、受刑者が刑事施設内でトラブルを起こした場合、体を使って対処しなければならないケースもあるので、体力的に強い人も向いています。
4-3.注意力がある人・単純作業を飽きずにできる人
刑務官は勤務中、受刑者のトラブル予防のため、常に監視していなければなりません。そのため、刑務官の仕事は、職務上において注意力が求められます。また、受刑者の刑務作業の監視や施設内の巡回などの職務は、日々同じことの繰り返しなので、単純作業を飽きずにできる人も刑務官に適しているでしょう。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。刑務官は罪を犯した受刑者の更生や社会復帰の実現をはかるため、日々の業務を行なっています。体力的にも精神的にも厳しさのある職業ですが、その反面、社会秩序の維持に貢献できる点が魅力の職業でもあります。
刑務官になる場合、刑務官採用試験を受験して合格するのが通常です。刑務官採用試験は、募集枠によって受験資格が異なったり、受験できない者の条件が設けられたりしています。刑務官を目指す際は、刑務官採用試験もしくは国家公務員試験の受験資格をしっかりと確認しておきましょう。
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