専門試験なしで広がるチャンス! 国家公務員一般職試験「教養区分」が目指す新しい公務員像
今回は、新設された国家公務員一般職試験「教養」区分(以下 教養区分)についてお話しいたします。大きく4つの流れに沿ってお伝えしますので、ぜひじっくりと読み進めながら、今後の学習計画づくりに役立ててみてください。
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1. まずは「教養区分」って何だろう?
2. なぜこのタイミングで新設? そこから見える公務員像
3. 試験の内容と対策のポイントを押さえておきましょう
4. 合格に向けた学習戦略と、最後にお伝えしたいこと
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1.まずは「教養区分」って何だろう?
国家公務員試験には、これまで〈総合職〉〈一般職〉〈専門職〉などの職種が設けられていましたが、その一般職の中に、新たに「教養区分」という試験区分が生まれました。これにより、公務員を目指す皆さんの選択肢はさらに広がりました。簡単に言うと、公務員試験を勉強するにあたって、専門試験の学習が要らず、教養試験の学習で受験できるようになったということです。
この教養区分は、大学3年生から受験することができます。日本の国づくりには興味があるけど、民間企業にも惹かれている。といった、まだ進路を絞りきれない大学3年生にもチャンスとなり、新しい「教養区分」で、将来の選択肢を広げることができます。
専門分野だけでは分類しきれない「あなたの得意」を、新しい「教養区分」でいかしてみたいという方におすすめの公務員試験だと思います。
相談に来られる受験生の中にも、「特定の専門分野を深く学んできたわけではないけれど、幅広い業務に関わって行政に貢献したい」という方が多くいらっしゃいます。そういった方にとっては、この教養区分によって新たな可能性が開けるかもしれません。
2.なぜこのタイミングで新設? そこから見える公務員像
「教養区分って何となくイメージはわかったけれど、なぜ急に新設されたの?」という疑問をお持ちの方もいると思います。ここでは、その背景をお伝えしながら、これからの国家公務員に求められる力について触れていきましょう。
2-1.多様化・複雑化する行政課題への対応
まず押さえておきたいのは、いま行政が抱える課題が非常に多様化し、複雑になっているという点です。少子高齢化、地域活性化、デジタル改革、環境問題など、一つの専門分野だけで解決できる話ではなくなっています。いろいろな部署や分野の知識を総合し、柔軟に対応していくことが求められているわけです。
こうした状況では、特定の法律や経済、理工だけを突き詰めた人材だけでなく、幅広い知識を活かしながら臨機応変に動ける人が必要とされます。だからこそ、専門試験を設けずに、教養試験や論文・面接を軸に受験者を選抜する「教養区分」が新たに設定されたというわけですね。
2-2.新しい人材獲得ルートとしての狙い
もう一つのポイントは、人材獲得競争への対応です。民間企業でも「専門職」だけでなく「ゼネラリスト的な素養を持つ人材」も必要で、両方の人材の採用が進められています。公務員にも同じ流れが訪れているといえます。
「自分は総合職を狙うほど専門分野が得意なわけではないけれど、もっと幅広い領域で力を発揮したい」という受験生が、これまでの仕組みだと受験を諦めてしまうこともありました。教養区分が設置されたことで、そうした方々が公務員になる道が開かれたとも言えますし、行政側としても多様な人材を確保しやすくなるメリットがあります。
2-3.求められる人物像をまとめると
要するに、新設された教養区分が目指すのは「いろんな物事に興味・関心を持って、多角的に考えられる方」を採用したいということです。もちろん専門的な知識があれば強みになりますが、それだけに頼らず、広い視野で課題解決に取り組める力こそが重要視されています。
- 幅広い知見を習得しようとする姿勢
- 論理的かつ柔軟な思考力
- コミュニケーションや調整能力
こういった資質を持っている方は、教養区分で合格した後も、様々な現場で活躍できる可能性が高いでしょう。
3.試験の内容と対策のポイントを押さえておきましょう
それでは、実際の試験ではどのような科目や流れになるのか。ここを正しく押さえておかないと、合格に向けた戦略が立てられません。大まかに言うと、教養区分では「教養試験」「論述試験(小論文など)」「面接」を軸に選考が行われます。
3-1.教養試験の位置づけ
「教養区分」という名前の通り、筆記試験では教養試験(正しくは、基礎能力試験)が中心となります。出題範囲は、文章理解、数的処理、資料解釈、人文科学、社会科学、自然科学など多岐にわたります。専門試験がない分だけ気楽と感じる方もいるかもしれませんが、その分、教養試験での得点が非常に重要になることを忘れないでください。
教養試験は「点数を伸ばしやすい分野」と「伸ばしにくい分野」が割とはっきりしているので、まずは過去の国家公務員試験の傾向をチェックして、自分の得手不得手を見極めるところから始めましょう。苦手分野を放置すると合格ラインに届かなくなるリスクが高いため、最低限の基礎固めを徹底することが大切です。
3-2.論述試験(小論文など)のコツ
続いて、多くの方が苦手意識を持つのが論述試験です。教養区分では、特定の法律や経済知識を問うのではなく、社会問題や政策課題について論理的に考えをまとめる力が求められます。「自分が実際にその課題に取り組むとしたら、どうアプローチするか」を筋道立てて書けるかどうかが評価のポイントですね。
日頃から新聞やニュースをチェックし、興味を持ったテーマについて自分なりの意見をメモしておくと、いざ論述試験で問われた際にスムーズに書きやすくなります。また、公務員試験対策のスクールや教材では、論文添削を行っているところも少なくありません。採点基準を意識しながら文章構成を学ぶことで、試験本番での精度が格段に上がるでしょう。
3-3.面接のポイント
論述と並んでウェイトが高いのが、人物試験(個別面接)です。新設区分ということもあって、面接では「どうして教養区分を選んだのか」「この区分でどのように力を発揮したいのか」などを問われる可能性が高いでしょう。ここが曖昧だと、熱意や方向性が伝わりにくくなってしまいます。
具体的には、以下のような点を整理しておくと効果的です。
- なぜ公務員を目指すのか(志望動機)
- どんな分野や課題に取り組みたいのか
- 自身の学生時代の活動や仕事経験から得た強み・学び
あらかじめ自分の話したいエピソードを言語化し、面接の中で無理なく伝えられるように準備しておきましょう。
4.合格に向けた学習戦略と、最後にお伝えしたいこと
それでは、ここまでの話を踏まえて「実際にどう勉強すればいいのか」を整理してみます。
4-1.幅広い分野を見渡しつつ、焦点を絞るメリハリがカギ
教養試験対策では、出題範囲が広い分、「どこから手をつければいいのか分からない」という声をよく聞きます。まずは過去の国家公務員試験の傾向をチェックして、「頻出分野」「比較的出題頻度が低い分野」を明確に切り分けてみることがおすすめです。頻出分野を重点的に攻略し、苦手意識のある分野も捨てずに最小限の対策をする。このメリハリが、効率良く点数を伸ばす秘訣といえます。
4-2.論述・面接は積極的に練習機会を活用
論述試験や面接は、独学だけではどうしても限界がある場合が多いです。自分が書いた文章を客観的に見てもらったり、模擬面接でフィードバックをもらったりすることで、大きな伸びが期待できるんですね。スクールの添削指導や面接対策講座などをうまく活用しながら、早め早めに実践経験を積んでいくのが、合格への近道です。
4-3.時事問題へのアンテナを張り、自分の意見を深める
教養区分は、社会課題に対する柔軟な思考を重視しているという点が大きな特徴です。ですから、日頃から新聞やニュースサイトを確認しながら、「なぜこういう政策が必要なのか」「自分ならどう提案するか」を考える習慣をつけるのもおすすめです。
論述でも面接でも、具体的な時事ネタや施策の話題が出てくると、説得力や面接官へのアピール度合いがグッと上がります。ただ暗記するだけでなく、「自分はこう感じた」という視点を持っておくことが重要です。
4-4.情報が少ない今こそ、柔軟に対策を組み立てる
新設区分のため、まだ合格者データや傾向分析が十分に出揃っていない面があるのも事実です。だからこそ、これまでの一般職や地方公務員の教養試験の傾向を参考にしつつ、自分なりにアレンジした学習計画を立てていく必要があります。早い段階から模試や受験仲間との情報交換などを積極的に行い、臨機応変に戦略をアップデートしていきましょう。
まとめ
以上が、新設された「国家公務員教養区分」についての概略と、合格に向けた勉強方法の大枠となります。簡単に振り返ると、
- 幅広い教養と総合力を重視する、新しい採用ルート
- 多様化する行政課題に対応するため、専門試験を設けずに幅広い人材を取り込む狙いがある
- 教養試験・論述・面接の3本柱を見据えて、バランス良く対策することが重要
- 最新の時事や社会問題への関心を高め、自分なりの意見を持つ習慣づくりがポイント
という流れになります。公務員受験指導をする中で、さまざまな受験生が「自分の得意」を活かす道を探している姿を見てきました。皆さんの中にも「専門知識にこだわらず、より広い分野で活躍したい」という思いをお持ちの方が多いのではないでしょうか。そうした方にとって、この教養区分は大きなチャンスになり得ます。
もちろん、新設区分ならではの未知数な部分もありますが、一方で従来の教養試験や論述・面接のノウハウは充分に応用可能です。早めに情報を集め、効率的に学習を進めることで合格ラインをしっかりと射程に収めていただきたいと思います。
教養区分は、行政区分同様に地域ごとで採用されますので、国家公務員と言いながら、「できるだけ地元に近いところで働きたいな」という受験者におすすめの試験と言えます。
困ったときは、スクールや予備校の模試・講座などをうまく活用しながら、着実に力をつけていきましょう。皆さんが教養区分の合格を勝ち取り、これからの行政を支える存在として大いに活躍されることを心から応援しています。もちろん、大学3年生のみならず、対象の方は受験できる公務員試験です。一緒に頑張っていきましょう。
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