近年、管理職に求められる必須のビジネス能力として「コンセプチュアルスキル」の注目が高まっています。コンセプチュアルスキルは、知識や技術、熟練度を意味する「テクニカルスキル」と、対人関係能力を意味する「ヒューマンスキル」とともに、カッツ理論で提唱されたマネジメントスキルになります。
この記事では、コンセプチュアルスキルの内容と、スキル向上によるメリットを詳しく解説しますので、管理職や部下を持つ上司の方はぜひ参考にしてみてください。
1.コンセプチュアルスキルとは
コンセプチュアルスキルは、ハーバード大学のロバート・カッツ教授が提唱するビジネススキルの一つで、管理職に求められるビジネス能力を体系化した「カッツ・モデル」を構成する要素でもあります。
カッツ・モデルとは、マネジメント層を「ローワー(下級)マネジメント」「ミドル(中級)マネジメント」「トップ(上級)マネジメント」の3階層に分け、それぞれのマネジメント層に求められる「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」のバランスを示したものです。
カッツ・モデルでは、トップマネジメント層に近づくほどコンセプチュアルスキルの重要性が高まります。
それぞれのスキルの内容と、カッツ・モデルのイメージは次の通りです。
- 「テクニカルスキル」:業務を適切に遂行するために必要な「知識や技術」「熟練度」
- 「ヒューマンスキル」:チーム内の人間関係を円滑にし、その力を最大化する対人関係能力
- 「コンセプチュアルスキル」:知識や組織内外の情報などを体系的に把握し、複雑な事象を概念化して本質を把握する能力
カッツ教授がこのモデルを提唱したのは1950年代ですが、当時とは経済や社会環境が大きく変化しているにもかかわらず、これら3つのスキルを備えた人材が不足しているため、現代ビジネスで改めて注目を集めています。
2.コンセプチュアルスキルの構成要素
コンセプチュアルスキルとは、簡単に言えば「考える力」であり、「形のないものを扱う力」とも言えます。ビジネスの世界に置き替えれば、「企画」や「戦略」といった仕事に関わることになりますが、これらの仕事の多くは、旧来の「擦り合わせ型」から「プロジェクト型」に変化してきています。このようなビジネス環境の変化から、コンセプチュアルスキルとは、プロジェクト型の仕事を成功させるために求められる能力だと言えます。
コンセプチュアルスキルが高い人、低い人を分ける基準は、その構成要素の備わり具合が大きく影響すると言われています。コンセプチュアルスキルの構成要素と要求される能力の内容を見てみましょう。
コンセプチュアルスキルを構成する要素
構成要素 | 内容 |
---|---|
1.ロジカルシンキング(論理的思考) | ロジカルとは論理的という意味です。冷静に論理的に課題を整理する能力といえます。 |
2.ラテラルシンキング(水平思考) | 常識やこれまで当たり前とされてきた固定観念を無視し、多角的に物事を捉える考え方です。 |
3.クリティカルシンキング(批判的思考) | 批判的は直訳ですが、現状の「論理の前提を疑い」、「思考の偏り」を見つけることで正しい結論を導き出す思考法だと言えます。 |
4.多面的視野 | 課題に対して複数のアプローチで検討を加えることができる能力です。 |
5.柔軟性 | 全ての業務がセオリー通りに進むとは限りません。臨機応変に対応する能力が求められます。 |
6.受容性 | 良い結果を導くためには、他人の主張を受け入れる懐の深さも必要です。 |
7.知的好奇心 | 常に未知のものへの興味を持ち続けることが重要です。ソクラテス曰く「無知は罪」です。 |
8.探求心 | 成果を得るまで粘り強く深掘りする能力です。知的執着心とも言えます。 |
9.応用力 | 知識の引き出しを増やすとともに、それを課題に応じてうまく組み合わせる能力が必要です。 |
10.洞察力 | 物事の本質を見抜く力です。 |
11.直感力 | 物事を感覚的に捉えて即応できる能力で、知識と経験に裏付けられた感性とも言えます。 |
12.チャレンジ精神 | 最初から無理だとあきらめるのではなく、果敢に挑戦する気概を持つことが大切です。 |
13.俯瞰力 | 「木を見て森を見ず」に陥ることもあります。置かれた立場や時と場合によっては、見方を変えて全体を把握する(=俯瞰する)能力が求められます。 |
14.先見性 | 先を見通す予測能力の高さですが、大きなリスクと表裏一体のものですので、他の能力を総動員しなければなりません。 |
上記のすべての要素を備え、バランスよく機能させることで、高いレベルでコンセプチュアルスキルを活かすことができます。
3.コンセプチュアルスキルを高めるメリット
近年のグローバル化の進展は、企業における人事制度や働き方にまで影響を及ぼしています。カッツ理論が提唱された頃に比べると、明らかにローワーマネジメント層に求められるコンセプチュアルスキルの比率が高まっているからです。企業の役職の定義やキャリアパスはそれぞれ異なるものの、係長や課長クラスに対して「企画」「戦略」の立案とともに、それを実現するための「調整能力」を求める場面が増え、テクニカルスキルよりもコンセプチュアルスキルが求められるシーンが拡大したことによります。
問題なのは、係長や課長に昇進しても求められる役割に適応できないというケースが増えていることです。テクニカルスキルの習得に汗をかき、ヒューマンスキルに触れたと思った途端に、未知の領域であるコンセプチュアルスキルを求められるという構図です。「ピーターの法則」の状況に陥っていると言うこともできます。
ピーターの法則
階層社会の中で、全ての人は昇進を重ね、組織内で昇進できる限界に達して、やがて無能になるという考え方。以前まで優秀にできた仕事と、昇進後の仕事内容が異なったことで、要求される能力を持ち合わせていないことを意味している。
コンセプチュアルスキルを高めることで得られるメリットは、「ピーターの法則からの脱出」と言えるでしょう。コンセプチュアルスキルを持っている管理者は、多角的な視野で課題を捉えることが可能となり、リスクや損失の最小化によって生産性を向上させるとともに、やがては会社にイノベーションという多大な恩恵をもたらす人材になり得ます。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。コンセプチュアルスキルで求められる能力はさまざまですが、現代の会社における管理職は、サッカーで言うところのユーティリティープレイヤーのような存在です。複数のポジションを平均以上の能力でこなせれば、会社の生産性を高めるために必要な有能な人材として評価されるでしょう。キャリアアップのために何をすればいいか、方向性に悩んでいる方は、ぜひコンセプチュアルスキルを伸ばして、社内の昇進や転職に有効活用してみてはいかがでしょうか。
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