政府は、2018年6月に「人づくり革命基本構想」を公表し、人生100年時代を生き抜くための個人のキャリア形成の推進を表明しました。これにより、長期化する就業期間を自ら設計するとともに、長い人生を有意義に生きるためのすべを、早い段階で自主的に身につけなければならない時代に入ったと言えます。
このような中、キャリア形成にあたり、ネガティブに見られがちな離職期間を肯定的に捉えようとする新しい考え方「キャリアブレイク」が提唱されています。仕事から離れることをブランク(=空白)ではなく、むしろキャリア向上に必要なブレイク(=休暇)にするというものです。キャリア形成の途上にある方、立ち止まって足元を見つめ直そうとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.「ブランク=ネガティブ」は古い?今話題の「キャリアブレイク」とは?
いま日本で提唱されている「キャリアブレイク」は、結婚や出産・育児、その他の事由による離職期間を肯定的に捉えるというものです。
就業した会社でキャリア形成を図ろうとすると、特に女性の場合は出産・育児で長期間の離職を余儀なくされることがあります。従来、離職期間は、キャリア形成上のブランク(=空白)と認識され、成長が停滞するとの見方がされてきました。このブランクを停滞期間というネガティブな捉え方ではなく、むしろ自分が成長するための有効な時間として認識しようというのが、キャリアブレイクの考え方です。
もともとキャリアブレイクという考え方は、長時間労働が深刻化していたイギリスにおける「ワーク・ライフ・バランス政策」に端を発した「長期休暇制度」が広く欧州で発展した仕組みです。イギリス内の著名企業が「タイム・アウト」と呼ばれる手法を採用して、目的を特定しない2年間の長期休暇を付与し、この期間中に新しい技能や考え方を身につけて職場復帰することを期待した制度が有名です。
また、欧州の中でも先進的な長期休暇制度として注目されたのが、ベルギーの「キャリアブレイク制度」で、欧州で初めて職業キャリアの中断制度として導入されています。のちに「タイムクレジット制度(=職業キャリアの中断)」に再編されますが、男女ともに出産・育児および介護休暇制度以外に法制化された点が注目されます。
内容としては、完全休業や労働時間短縮などで1回につき3カ月から1年までの休業取得が認められる制度です。育児や介護休業としても利用できますが、学校教育や職業訓練と言った理由によっても取得可能であり、キャリアを中断したとしても労使ともにメリットが得られる制度として普及しました。
海外ではこのように、労使ともにメリットを享受するという考え方で長期休暇が付与されますが、日本の企業で導入するには相応の環境整備が必要です。日本では、政府の「人生100年時代構想会議」が「より長いスパンで個々人の人生の再設計が可能となる社会を実現するため、何歳になっても学び直し、職場復帰や転職が可能となるリカレント教育を抜本的に拡充する」(人づくり革命基本構想平成30年6月発表より)という方針を打ち出すなど、キャリア形成のための一定の支援策は準備されたものの、企業が本腰を入れて取り組むには、「人手不足」という大きな障壁が残っています。
企業にとっては「まずは人材を確保する」ことが優先されますが、「働き方改革関連法案」の成立によって、副業やダブルワークが解禁されるなど、個人の働き方が大きく変貌するとともに、経済と社会環境もまた大きな変革期を迎えていることを考えれば、いずれは、「キャリアブレイク」のような仕組みを制度化する方向に進むと考えられます。
2.キャリアブレイクを有意義に過ごす3つの方法
企業における制度化の有無に関わらず、自身のキャリア形成を進めるにあたり、思い切って休職や退職という選択をすることも時には重要です。有意義なキャリアブレイクの過ごし方には次のものが挙げられます。
- 海外留学へ行く
- ワーキングホリデーに行く
- 資格の勉強をする
2-1.海外留学へ行く
キャリアブレイクの先進地である欧州では、長期休暇を取得して海外留学することがあります。経済を中心にグローバル化が進む中、ビジネスの世界では異国の風土や慣習に触れることで多様な価値観を知るとともに、自らの対応力と感性を高めることが求められるようになりました。机上の学習だけでは得られない経験やふれ合いもあります。語学力やコミュニケーションスキルを磨く意味でも、自ら海外へ飛び出していく積極性が求められます。このような観点から、海外留学はキャリアブレイクを活かす方法としては有益な方法の一つであると言えます。
2-2.ワーキングホリデーに行く
ワーキングホリデーとは、日本とワーキングホリデー協定を締結した国に長期滞在が可能な制度です。海外旅行のような短期間とは異なり、協定国によって1~2年の長期滞在ビザが許され、就学、就労、生活、旅行と幅広い活動が許容されます。外国で働きながら語学力向上を目指すことが可能で、滞在期間中にそのまま海外で起業に至るケースもあります。協定国は、オーストラリア、イギリス、カナダ、ドイツ、韓国、台湾など22か国に及びます。
ワーキングホリデービザは、18〜30歳の日本国民なら申請可能で、18歳で申請しビザが許可されれば12年間有効で、2年間の滞在が可能な国もあるため、最大で15年間海外で就業しながら生活ができることになります。年齢制限はあるものの、目的次第では使い勝手の良い制度ですので、積極的に活用する価値は高いでしょう。詳細は日本ワーキング・ホリデー協会(JAWHM)で確認できます。
2-3.資格の勉強をする
語学や外国人とのコミュニケーションスキルの習得以外にも、キャリアアップを図るために必要な資格取得に向けた学習時間に充てるのも良いでしょう。働きながらでは、まとまった学習時間を確保することが困難なため、キャリアブレイクを利用して難関資格の取得に挑戦することも意義があります。
たとえば税理士、会計士、宅建士、中小企業診断士などの国家資格は取得後には独立開業まで視野に入れることができます。平均年収は高く、社会的な需要も高いため、本人の努力次第で大きく活躍することもできるでしょう。このように、キャリアブレイクは通常1~2年の学習時間を要するような資格に挑戦するには良い機会となります。
3.まとめ
日本人にとってネガティブな印象が強かった休職・離職期間といった状況は、人生100年というこれからの長い就業期間を考えれば、むしろ肯定的に捉え、自らのキャリア形成のための攻めの一手とすることで有意義なものに変えることができます。
キャリアは、自発的に動いて作り上げる時代に入っており、自らのスキルとキャリアそのものをたな卸しし、備えるべきものを整理し直すという意味でも、キャリアブレイクは有効な手段となり得るでしょう。キャリアブレイクについて興味が湧いた方は、普段の仕事以外でキャリアを広げる可能性のあるものを、ぜひ一度検討してみてください。
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