ファイナンシャル・プランナーの国家資格である「FP技能士」は、就職や仕事で有利になるほか、生活する上でも役立つ知識となるため、近年人気が高まっています。この記事ではFP技能士になるためのFP技能検定試験について、試験の難易度や、法改正により注意しておきたい最新の試験範囲をご紹介します。資格取得を検討している方はぜひお役立てください。
1.FP技能士試験とは?
FP技能士試験とは、ファイナンシャル・プランニングに関する国家検定試験です。FP技能士には1級、2級、3級の3つの区分があり、各級において学科試験と実技試験が実施されています。試験を実施するのは「日本FP協会」と「金融財政事情研究会」ですが、どちらの団体で受験しても「FP技能士」の資格を取得できます。
1-1.学科試験の内容
試験方式はマークシート(1級は一部記述式)による筆記形式で、試験の科目は下記の6分野で、合格基準は60%以上となります。
- ライフプランニングと資金計画:公的年金・社会保険など
- リスク管理:生命保険・損害保険など
- 金融資産運用:金融商品の仕組みなど
- タックスプランニング:各種税制など
- 不動産:不動産の賃貸・有効活用など
- 相続・事業承継:相続・贈与など
1-2.実技試験の内容
試験方式は筆記形式で、FP事例に基づいた以下の5業務について出題されます。
- 資産設計
- 資産相談
- 個人資産相談
- 中小事業主資産相談
- 生保・損保・保険顧客資産相談
2.FP技能士試験の難易度・合格率
日本FP協会と金融財政事情研究会が、それぞれ実施する直近(2019年1月時点)の試験状況は下表の通りです。
・日本FP協会が実施する試験
受験者数 | 合格率 | |
---|---|---|
3級(学科と実技の同時受験) | 21,148人 | 73.50% |
2級(学科と実技の同時受験) | 16,852人 | 40.39% |
1級(実技試験:資産設計提案業務) | 14人 | 100% |
・金融財政事情研究会が実施する試験
受験者数 | 合格率 | |
---|---|---|
3級(学科と実技の合計) | 29,766人 | 47.75% (学科:51.91%) |
2級(学科と実技の合計) | 30,600人 | 37.48% (学科:31.11%) |
1級(学科試験) | 7,310人 | 8.45% |
3.FP技能試験の制度改正のポイント
FP技能試験では法令の基準日に即した対応が必要です。各試験がどの時点の法令に基づいているか、法令基準日に合わせて試験にのぞむ必要があります。直近の試験日と対応する法令基準日は下記の通りです。
試験実施月 | 2019年5月 | 2019年9月 | 2020年1月 |
---|---|---|---|
法令基準日 | 2018年10月1日 | 2019年4月1日 | 2019年10月1日 |
例えば、2019年5月の試験の場合は、2018年10月1日時点で効力が生じている法令に合わせた解答が求められます。さらに、FP業務に関連する時事的問題などへの対応も必要になります。
制度改正のポイントを「ライフプランニングと資金計画」「タックスプランニング」「不動産」に分けて見ていきます。
3-1.ライフプランニングと資金計画
2019年5月以降の試験で注意しておきたい法改正のポイントです。
健康保険
国民年金保険料の産前産後期間の免除制度について、国民年金第1号被保険者が出産した場合に、出産前後の一定期間の国民年金保険料が免除される制度が2019年4月1日から開始されました。
介護保険
介護保険料の改定について、2018年8月施行の制度改正で、第1号被保険者(65歳以上の方)だけではなく、第2号被保険者(40~64歳)の介護保険料も改定されています。今回の改正により、2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合が3割となりました。ただし、月額44,400円の負担の上限が設定されています。
雇用保険
専門実践教育訓練の教育訓練給付金の改正について、2018年1月1日から専門実践教育訓練給付金の内容が以下の通り改正されました。
- 支払った教育訓練費に対する給付額の年間支給率が40%から50%へ
- 給付額の年間上限額が32万円(最大96万円/3年間)から40万円(最大120万円/3年間)へ増額
- 受給対象者の支給要件期間が10年以上から3年以上に緩和など
- 教育訓練支援給付金の雇用保険の基本手当日額が50%から80%へアップ
確定拠出年金
個人型確定拠出年金(iDeCo)の中小事業主掛金納付制度について、2018年5月から一定の要件を満たしている事業主に使用される従業員がiDeCoに加入している場合、従業員加入者掛金に加えて事業主が事業主掛金を上乗せして拠出できるようになりました。
企業が上乗せで拠出する金額は1,000円~22,000円/月で、加入者掛金額との合計額は5,000円~23,000円/月の範囲ですが、以下の条件を満たす必要があります。
・従業員:個人型確定拠出年金制度(iDeCo)に加入している
・企業:従業員数が100名以下で、他の年金を実施しておらず、実施についての労使合意があること
3-2.タックスプランニング
所得拡大促進税制は、一定の要件を満たした事業者が前年度より給与等の支給額を増加させた場合、増加額の一部が法人税から控除できるという制度で、改正により控除率の拡充などがありました(平成30年4月1日以降の開始の事業年度から適用)。
- 前年度比1.5%以上の賃上げが行われた場合、従来の制度よりも控除率が10%から15%へ拡充される
- 前年度比2.5%以上の賃上げに加えて教育訓練費を10%以上増加する、あるいは経営力向上に取り組む企業に対しては、税額控除率25%が適用される
また、雇用促進税制については、同意雇用開発促進地域で無期雇用かつフルタイムの労働者を新規雇用した場合に、1人当たり40万円の税額控除が受けられた雇用促進税制は、2017年度(法人は2018年3月31日までに開始する事業年度、個人事業主は2018年暦年まで)で終了となりました。
このほか、地方拠点強化税制における雇用促進税制については、2018年4月1日から特定業務施設(整備計画に基づいて整備する本社機能を有する施設)での雇用者を特定の事業主が増加させた場合、1人当たり最大90万円の税額控除を受けられます。
3-3.不動産
不動産に関する改正ポイントは次の通りです。
田園住居地域の新設
都市計画法の改正により新たな用途地域として、田園住居地域が設けられました(2018年4月より施行)。その結果、田園住居地域内の農地に関して、土地の形質の変更、建築物の建築・工作物の建設等を行う者は市町村長の許可を得ることになりました。田園住居地域の設定により、宅建業法も改正され重要事項の説明対象となっています。
宅建業法の改正
宅建業法の改正により建物状況調査(インスペクション)に関する説明や斡旋が2018年4月1日から義務化されています。国土交通省が示す宅地建物取引業者の義務は以下の3点です。
- 媒介契約において建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の交付
- 買主等に対して建物状況調査の結果の概要等を重要事項として説明
- 売買等の契約成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付
低廉な空き家等に関する報酬の限度額
物件価格が400万円以下の低廉な空き家等の売買・交換の媒介等について、通常と比較して現地調査等の費用を要するものは、現行の報酬上限額に加えて当該現地調査等に係る費用相当額を合計して18万円を上限に受領できるようになりました(※宅地建物取引業法の改正により2018年1月1日施行)。
居住用超高層建築物への固定資産税等
改正により高層階が増税され低層階が減税されることになりました(店舗等の非居住用部分は対象外)。適用時期は、固定資産税・都市計画税が2017年1月2日以後に新築された居住用超高層建築物に対して課され、2018年度以後年度分について適用されます。
不動産取得税は、2017年4月1日以後に新築された居住用超高層建築物で2018年4月1日以後に取得するもについて適用されます。
都市計画税
特定所有者不明土地を利用して行う、地域福利増進事業の用に供する土地等に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準額は、最初の5年間、2/3を乗じた額とされます(2019年6月1日施行~2021年3月31日まで)。
不動産取得税
2018年度の改正で不動産取得税は以下のようになりました。
- 宅地等の取得に関する課税標準を1/2とする特例措置が2021年3月31日まで延長
- 住宅・土地を取得した際の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置が2021年3月31日まで延長
- 住宅用土地を取得した際にかかる不動産取得税の減額措置に関して、土地取得後の住宅新築までの年数を3年にする特例措置が2020年3月31日まで延長
- 長期優良住宅の認定を受けた住宅の不動産取得税の特例適用期限が2020年3月31日まで延長
4.まとめ
2019年5月以降のFP技能士試験では、健康保険、介護保険、雇用保険、確定拠出年金、所得拡大促進税制、雇用促進税制、宅建業法、低廉な空き家等に関する報酬の限度額、居住用超高層建築物への固定資産税・都市計画税・不動産取得税など、注意が必要な改正点が多くあります。試験日と対応する法令基準日に注意して、その他の改正点も含めてよく確認しておきましょう。
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