公務員の教養試験で出題される自然科学は、数学や物理などの理系科目を中心に出題されます。計算問題が多く、暗記だけではなかなか対応が難しいため苦手とする受験生も少なくありません。さらに、職種によっては問題数がかなり少ないため、効率的な対策が求められる分野でもあります。
今回は、公務員試験を受験する方のために、教養試験の自然科学について出題範囲と特徴、傾向と対策などを分かりやすく説明しますので、参考にしてみてください。
1.教養試験とは?
教養試験とは公務員採用試験の一次で課される筆記試験です。5肢択一などの択一式で実施され、マークシート方式で解答を行います。
国家公務員の採用試験では「基礎能力試験」という名称で実施されていますが、実質的な内容は地方公務員の教養試験と同じです。教養試験は全40~50問程度で出題され、全問必須回答の試験や選択問題がある試験もありますが、その形式は受験する職種などによって異なります。
また、各問題の出題内容も受験する職種などによって大きく異なるため、出題傾向などを事前に確認しておくことが重要です。
1-1.教養試験の出題分野
教養試験は大きく分けて「知能分野」と「知識分野」の2つから出題され、この記事で説明する自然科学は知識分野に該当します。それぞれの分野からの出題内容は以下の通りです。
知能分野 | 数的処理(数的推理、判断推理、資料解釈など)、文章理解(現代文、英文、古文など) |
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知識分野 | 社会科学(政治、経済、法律、社会など)、人文科学(日本史、世界史、地理、文学、芸術など)、自然科学(数学、物理、化学、生物、地学) |
分野ごとの出題数は職種などによって異なりますが、基本的にどの公務員試験も知能分野からの出題数が多い傾向にあります。例えば、国家公務員一般職(大卒程度)は40問中27問、東京都1類Bは40問中24問、国家公務員一般職(高卒程度)は40問中20問と、約5~7割弱が知能分野からの出題です。
そのため、教養試験では知能分野に重点を置いた対策を求められますが、知識分野の対策をおろそかにすると合格基準に達すること自体が難しくなるため、注意しなければなりません。
2.出題範囲別の特徴・傾向・対策
自然科学は出題範囲が広い割に出題される問題数が少ないという大きな特徴があります。対策に時間をかけても試験の得点自体はあまり伸びないコストパフォーマンスの悪い分野とも言えます。このことを念頭に、以下で自然科学の出題範囲や傾向、その対策について確認してみましょう。
2-1.各科目の出題範囲
自然科学は主に中学校から高校で学習する数学、物理、化学、生物、地学という理系の5科目から出題されます。それぞれの出題範囲は以下の通りです。
数学
高校で学習する数学の学習内容である「数と式」や「方程式」、「図形と式」に関する問題が主に出題されます。
数と式 | 因数分解、数の計算、実数、有理数など |
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方程式 | 二次方程式、関数など |
図形と式 | 直線や円などの方程式や不等式、領域、図形の面積や体積など |
上記の他にも、数列や三角比、微分積分などの単元も出題されます。
物理
物理は中学校〜高校で習う基本的な内容が問われる科目です。主な出題内容としては以下の単元が挙げられます。
力と運動 | 等加速度運動、ニュートンの運動3法則など |
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運動量 | 運動量保存の法則、エネルギー保存の法則など |
波動 | 波動の性質など |
電気 | 直流回路、クーロンの法則など |
原子 | 原子構造、放射線など |
化学
化学では主に高校で学習する理論化学と無機化学の問題が出題されます。
理論化学 | 化学反応式、物質の三態、中和反応、原子など |
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無機化学 | 金属元素、非金属元素、物質の特性など |
有機化学は全ての職種で出題される単元ではありませんが、出題される試験もあるため必要に応じて対策が必要です。
生物
生物も高校で学習する内容から主に出題されています。生物の頻出単元は以下の通りです。
動物の体 | 神経細胞、ホルモン、脳のはたらきなど |
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植物の体 | 植物の光屈性、花芽形成など |
細胞 | 体細胞分裂、動物細胞、植物細胞など |
遺伝 | メンデルの法則、血液型など |
生殖 | 有性生殖、器官形成など |
地学
地学は中学校の理科や高校の地学で学習する内容が主な出題範囲で、以下の単元から多く出題されています。
地球の内部構造 | 地球の内部構造、地震波など |
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岩石と地層 | 火山、堆積岩、地層など |
気象 | 大気の循環、天気、流水の循環など |
天体 | 地球の運動、太陽、惑星、恒星など |
2-2.出題パターン
受験する職種などによって上記5科目の出題数はそれぞれ異なりますが、自然科学はほとんどの試験で出題パターンが決まっています。主な出題形式は大きく分けて以下の3つです。
知識問題
自然科学の知識を問う問題で「次の記述のうち、妥当なのはどれか?」、「次の空欄に当てはまる語句の組み合せとして妥当なのはどれか?」という形式で出題されます。数学以外の全ての科目で出題される自然科学の基本的な問題パターンです。
計算問題
計算によって解答を導く問題で、「~の値はいくらか?」や「~として正しいのはどれか?」といった形式で出題されます。数学は主にこの形式で出題されますが、物理や化学でも計算問題が出題されるため注意が必要です。
図表問題
与えられた図やグラフをもとに解答する問題で「図は~を示したものである。この図に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか?」という形式で出題されます。主に生物や地学などで出題される問題形式です。
2-3.対策方法
自然科学は教養試験の中でも出題数が少ない傾向にあるため、その対策が難しい科目になります。例えば、国家公務員一般職(大卒程度)は40問中3問、東京都1類Bは40問中4問、国家公務員一般職(高卒程度)は40問中5問が例年出題されており、一般知能分野と比較すると出題数はかなり少ないと言えます。
なるべく少ない学習時間で大きな効果を得られる効率の良い試験対策が必要ですが、出題範囲も広いため全ての科目の対策ができない場合は、「捨て科目を作る」という選択肢も必要になってきます。それぞれの科目の具体的な対策例は以下の通りです。
数学
数学は大卒程度の国家公務員の一般職などでは基本的に出題されません。他の職種で出題されても1問程度なので、数学が苦手な方は捨ててしまうという選択も時には必要です。
数学の学習範囲はとても広いため、大学受験などで高校数学の学習をした方は公務員試験の過去問などを利用し、記憶を呼び起こす程度の対策に留めておくのが良いでしょう。
物理
物理は問題を解くために基本的な理解が必要となる科目です。そのため、頻出項目に絞って基本事項の理解と問題演習を行う勉強法をおすすめします。物理は出題されても1問程度なので、必ず過去問などで頻出単元の確認を行ってから必要な項目だけ対策を行うことが重要です。
化学
化学は全般的に基礎知識の暗記が必要な科目となっています。そのため、頻出項目に絞った基本事項の理解と必要な知識を暗記することで、ある程度の対策を行うことが可能です。
理論化学では計算問題なども出題されることがあるため、時間的に余裕があればこれらの対策を行うことも重要です。ただし、化学も物理と同様に出題されても1問程度なので、他の知能分野などの学習時間が足らない場合は、そちらを優先することになるでしょう。
生物
生物は知識問題の出題が中心です。そのため、計算が必要となる数学や物理とは違って基本事項の暗記だけでほとんどの問題が解けるようになります。生物も他の自然科学の科目と同様に1問程度の出題となっていますが、基本事項の暗記に時間が割ける方は優先的に対策を行ったほうが良い科目と言えます。
地学
地学も生物と同様に知識問題の出題がメインです。そのため、基本事項の暗記をする時間のとれる方は、優先的に対策したい科目となります。地学も1問程度の出題ですが、中学校などで学習した内容も含まれているため、自然科学の中では最も得点につながりやすい科目の一つです。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は教養試験の自然科学について出題範囲の特徴や対策などを確認しました。自然科学は学習量の割に点数に結びつかない分野のため、いかに効率的に対策を行えるかが合格のカギを握ります。必要に応じて予備校や資格スクールを利用するなど、効率良く学習できる方法を検討してみてください。
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