総務省によれば2019年の転職者数は約351万人に及ぶなど、年々増加の傾向にあります。転職先は様々ありますが、選択肢の第一候補に挙がりやすいのが「公務員」です。公務員は身分保障が手厚く、安定して長期的に仕事に取り組むことができるなどの魅力があるため、年齢や性別を問わず人気の転職先となっています。
そこで今回は、民間企業から公務員への転職する方法を詳しく解説します。転職先で悩んでいる方や、公務員になる方法を知りたい方はご参考ください。
1.社会人が公務員になる3つの方法
社会人経験者の採用について、最近は国家公務員や地方公務員でも門戸が開かれているため、以前よりも公務員への転職はしやすくなっています。公務員へ転職する方法はいくつかありますが、基本的には公務員試験に合格する方法が最もオーソドックスな方法となります。ここでは、試験に合格することで社会人経験者が公務員になれる以下3つの方法をご紹介します。
- 一般枠の採用試験を受ける
- 経験者採用試験を受ける
- 「国家一般職試験(社会人試験[係員級])」「国家専門職試験(社会人)」を受ける
1-1.一般枠の採用試験を受ける
社会人経験者が公務員になるための一つ目の方法は一般枠での採用試験を受ける方法です。
一般枠とは主に新卒者などを対象とした公務員採用枠ですが、社会人経験者であっても受験資格を満たせば受験することができます。ただし、国家公務員も地方公務員も一般枠の受験資格では年齢制限が設けられているので、注意が必要です。
一般枠の国家公務員試験では、大卒程度の一般職試験で30歳未満が受験資格として定められている年齢です。その他にも大学院を卒業した院卒者が対象となる院卒者試験、国税専門官や労働基準監督官などの専門職を採用する専門職試験などもありますが、これらも基本的には30歳未満が受験資格の年齢となっています。
一方、地方公務員でも受験資格として年齢制限は定められていますが、国家公務員よりも幅広い年齢で受験できる自治体もあります。地方公務員は募集を行う自治体によって年齢制限を定めており、国家公務員と同様に30歳未満を年齢制限としている自治体もあれば35歳までを上限としている自治体もあります。
また、最近は年齢に関係なく優秀な人材を採用する動きも徐々に広まっており、一部の自治体では公務員の定年間際である59歳まで受験できる試験もあります。
一般枠での受験は採用予定人数が多いだけでなく、多くの方が受験する試験なので試験情報が手に入りやすいという利点もあります。そのため、年齢制限に適合する方にとっては、一般枠での公務員試験受験が最も現実的な転職方法となっています。
1-2.経験者採用試験を受ける
国家公務員や地方公務員には一般枠とは別に「経験者採用試験」によって採用される公務員もいます。「経験者採用試験」とは、名前の通り社会人経験のある人材を対象とした試験で、多くの場合で受験資格として社会人経験が必要です。
例えば、国家公務員の「経験者採用試験(係長級[事務])」では大学卒業後に民間企業や官公庁、国際機関等において正社員や正職員として従事した職務経験が2年以上必要になります。
また、東京都の経験者採用試験である「キャリア活用採用選考」では、大卒後7年以上の民間企業等における職務経験が必要です。経験者採用試験は国や地方自治体が即戦力として民間企業等の社会人経験者を採用する試験で、採用後は係長級や主任級、場合によっては課長代理級での待遇となります。
そのため、国家公務員の経験者採用枠などは人数も少なくなっており、2022年度の試験では会計検査院1名、人事院1名内閣府2名、金融庁1名、デジタル庁5名、外務省2名、財務省2名、文部科学省1名他など、少人数の採用となっています。(20202年7月1日現在)
なお、経験者採用試験は一般枠の試験と異なり、年齢制限が大幅に緩和されています。国家公務員は年齢の制限が設けられておらず(国家公務員は60歳定年のため実質59歳)、東京都や横浜市などの地方自治体も59歳まで受験可能です。
ただし、地方自治体は自治体ごとに経験者採用の方法や受験資格が異なるため、詳細は受験する自治体の募集要項などで必ず確認するようにしましょう。
1-3.「国家一般職試験(社会人試験[係員級])」「国家専門職試験(社会人)」を受ける
国家公務員の採用試験には「国家一般職試験(社会人試験[係員級])」や「国家専門職試験(社会人)」などの社会人経験者を対象とした試験もあります。
「国家一般職試験(社会人試験[係員級])」は40歳未満の高校または中学校を卒業してから2年を経過している人が受験できる試験です。
他には特別な受験資格なども設けられていないため、年齢要件のみクリアすれば誰でも受験できる試験となっています。しかし、採用人数には限りがあり、2019年度では技術と農業土木の若干名のみの募集でした。
「国家専門職試験(社会人)」は法務教官や刑務官、入国警備官などの専門職の係員級職員を採用するための試験です。
この試験も40歳未満の方が受験できる試験で、他に特別な受験資格は設けられていないため、年齢制限さえクリアすれば誰にでも門戸が開かれています。
なお、地方自治体の一部でも専門職試験は実施されており、社会人だけが対象となる試験ではありませんが年齢制限が緩和されている試験もあります。
例えば、横浜市が募集している保健師は保健師資格を取得していることが受験資格となりますが35歳まで受験することが可能です。専門職で公務員への転職を考える場合は、国家専門職の社会人枠や地方自治体の専門職試験などを受験して公務員になることもできます。
2.社会人から公務員になるときの注意点
転職する理由は様々ありますが、実際に公務員へ転職する場合は注意したいポイントがあるので確認しておきましょう。
2-1.公務員が楽とは限らない
公務員は安定的な行政サービスを長期間にわたって提供できるよう、手厚い保障によってその身分が保護されています。例えば、公務員の給与は法律や条例などに基づいて年齢や役職に応じて決定されますが、支給額の平均は上場企業などの大企業にも匹敵する水準です。
もちろん地方自治体によって差はあるので、全ての公務員が同じ水準の給与を受け取っているわけではありませんが、基本的には安定した収入によって長く続けることのできる職業となっています。
しかし、安定的な収入が確保されているからといって、「公務員の仕事が楽」というわけではありません。最近は公務員も行政サービスを提供する一種のサービス業だと考えられているため、行政サービスの維持・向上には常に結果が求められており、民間と同様に職責を持って取り組まなければなりません。
また、民間企業では業績などに応じて年収が大幅にアップすることもありますが、公務員は実績によって同期と倍ほどの差が付くほどの給与アップは見込めません。もちろん、公務員も査定によって収入は増減しますが、あくまでも法律や条例で認められた範囲内となります。
2-2.年齢制限がある
公務員試験には基本的に年齢制限が設けられています。経験者採用では年齢制限がない試験もありますが、一般枠などの多くの試験では一定の年齢に達すると試験自体を受験できなくなるため注意が必要です。特に、30〜35歳を超えると一般枠での受験は難しくなる傾向にあり、経験者採用試験などは募集人数の少ない職種が多く、試験倍率が高くなる場合もあります。
そのため、公務員への転職そのものを断念する方もいますが、公務員試験は試験日程が重複しない限り複数の試験を併願することが可能です。一般職では併願できない自治体でも、経験者採用試験では日程が異なる場合があるので、公務員へ転職する選択肢を広げることができます。
このように公務員へ転職する場合は、年齢要件によっては希望する試験を受験できないこともあるので、情報収集は丁寧に行うことが大切です。
3 まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は民間企業から公務員を目指す方法や注意点などを解説しました。最近は民間企業から公務員への転職も一般的になっていますが、最も気を付けたいのが「年齢要件」です。募集要項などは事前にしっかり目を通して、併願先なども検討することで、転職の選択肢は大きく広げることができます。
公務員への転職を考えている方は、この記事を参考に受験できる職種や地方自治体を検討してみてください。
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