新型コロナウイルスの影響で公務員の安定性があらためて注目される中、各自治体は社会の多様化に対応すべく、社会人経験者枠の採用に積極的です。しかし、民間企業で培った経験やスキルを十分に活かすためには、対象者や受験資格などの社会人採用枠の特徴について、事前にしっかりと把握しておくことが重要です。
そこで今回は、民間から公務員への転身を図る際に知っておきたいポイントを詳しく解説します。転職を考えている方、公務員になるメリットを知りたい方は、参考にしてみてください。
1.地方公務員採用の現状
総務省の資料によれば、地方公共団体の総職員数は、2019年4月1日時点で274万653人です。最も職員数の多かった1994年をピークとして約54万人減少しています。一般行政部門でみると、1996年から前年対比で減少しはじめ、2015年以降は前年対比で増加に転じたものの、総数では依然としてピーク時よりも減少しています。
このように組織全体の職員の減少が見込まれる中、現在の職員全体の質や水準を維持しつづけるためには、民間からの有能な人材の獲得や職員個人の能力の引上げが不可欠と指摘されているため、最近の各自治体は、社会人採用枠の拡充に対して積極的になっています。
2.社会人枠採用の特徴
社会人枠採用の特徴について、「対象者」「受験資格」「試験形式」「メリット・デメリット」などのポイントを詳しく見てみましょう。
2-1.対象者
社会人枠の主な募集職種は、「事務」「総合土木」「行政」「小学校事務」「保健師」「保育職」「土木技術職」「事務職(障害を有する人)」などになります。募集職種によっては、特定の資格やスキルが求められるので、募集要項を十分確認する必要があります。基本的には、多様な経験や技術を持つ人材を公務員に登用するのが目的なので、例えば非正規雇用の経験しかないとしても、実際にたずさわった仕事の内容や成果も採用判断の材料となります。
2-2.受験資格
社会人経験者枠の年齢要件では、「30歳以上59歳未満」「27歳以上59歳未満」など、幅広く採用しているのが特徴です。また、各自治体の社会人枠採用の採用区分としては、「キャリア採用」「経験者採用」「就職氷河期世代支援採用」「民間企業等職務経験者」「社会人経験者」などがあり、指定した年齢内で社会人として民間企業や自営業で働いたことがある人を対象としています。
就職氷河期とはいわゆる「バブル崩壊後」の年代のことで、1993年~2005年に卒業・就職活動となった世代です。アジア通貨危機や不良債権問題に起因する国内金融機関の経営破綻の余波を受けて景気が一気に悪化し、企業が採用を極端に絞ったことで、フリーターや派遣労働者などの非正規雇用者を大量に生み出した時期と言われています。そのため、最近の国や自治体は、この世代の人たちの就職支援に積極的に取り組み、採用活動を活発化させています。
2-3.試験形式
社会人採用枠の試験形式は、主に、「択一式教養試験」「論作文」「経験者論文」「適性検査」「個別面接」の内容で構成されています。ただし、対人能力やマネジメント能力の高い社会人経験者を採用するため、「職務経歴評定」「集団討論」などを試験項目に加えている場合もあります。
2-4.メリット・デメリット
公務員は民間企業と比べると、様々な面で安定性しています。例えば、公務員の給与体系は年功制が採られており、初任給の額が比較的安く、高額な成果報酬がない代わりに確実な昇給があります。福利厚生制度が整備されているため長期就業が可能であることと合わせれば、その経済的な安定性は民間企業に比べて高いのが大きな特徴です。
もう一つの安定は、公務員法で定められた「身分保障」です。国家公務員法第75条は、「職員は、法律又は人事院規則(地方公務員は「地方公務員法」)に定める事項に該当する場合(勤務実績不良、心身故障による職務遂行困難等)以外は、職員本人の意に反して、降任、休職又は免職されることはない」と規定するなど、民間企業にはない待遇が約束されています。
公務員は経済環境が悪化した時や、今般のコロナ禍のような事態に陥ったときにおいても、生活の基盤である収入と社会的地位が守られるため、公務員特有のメリットと言えるでしょう。
一方、デメリットとしては、一部を除いてルーティンワークが多いことや、多様なスキルを磨く機会が少ないことが挙げられます。定年後の再就職や民間企業への再転職を考えたとき、専門知識やスキルなどを持たない場合、ある程度の難しさが伴うでしょう。
また、安定性はあるものの、残業が意外と多いのも公務員の特徴です。部署によっては、選挙管理委員会の職務や自治体主催のイベントの企画から運営など、週末や祝日に様々な業務が入ることもあります。
3.公務員に転職する際の3つのポイント
次に、公務員への転職を検討するにあたり、受験資格や職種の選び方、面接対策や仕事に対する姿勢等に関するポイントを見ていきましょう。
3-1.受験資格のハードルは高くない
民間企業等における職務経験という点では、主に、「1週間あたりの勤務時間」「1年以上継続していた期間」などが問われます。
例えば、職務経験年数等の要件として、「会社員や公務員、団体職員、自営業者などとして、週30時間以上の勤務を1年以上継続して就業していた期間(ボランティア活動等の期間は除く)」などです。
このほか、育児休業を取得した期間の取扱いなど、詳細は各自治体の試験案内を十分確認する必要がありますが、民間の企業に一定期間勤務していれば満たすことができる程度なので、受験資格自体は特別なスキルや経験を求められているわけではありません。
3-2.民間の経験を公務に活かす視点が重要
地方自治体の試験案内には、「求める人物像」といった言い方で、その自治体が求める人材について明記しています。例えば、次のような内容です。
一.〇〇市の将来へ向けた「まちづくり」の推進に、強い意欲と熱意を有し、目標達成へ向けて積極的にチャレンジすることができる方
二.社会の在り方や経済活動が多様化した現代にあって、これに対応するための様々な行政課題に対し、民間企業等で培った創造力と実行力を発揮し、創造的且つ生産性の高い行政サービスを提供できる方
三.〇〇市外で活躍中の方で、〇〇市にUターン・Ⅰターンを希望し、客観的な目で〇〇市の長所・短所(強み・弱み)を的確に捉え、○○市をよりよい「まち」にしようという熱意をお持ちの方
このように、民間で醸成された創造力や外部からのものの見方、自治体に長く在籍する職員からは生まれにくい発想など、民間経験者ならではの着眼点を求めているのが特徴です。
3-3.面接対策が重要
「択一式教養試験」や「経験者論文」の対策が重要なのはもちろんのこと、2次試験となる「面接試験(口述試験)」は、個別面接のほか集団討論による試験を行う自治体も多く見られます。
個別面接では、人柄を見るほか、民間における業務内容・地位・主な業績・自治体における目標などについても質問されます。そのため、限られた時間内において合理的かつ正確に熱意をもって伝えることがポイントとなります。
一方、集団討論においては、自身の考えを明確に伝えることが重要なほか、他者の意見を聴く「傾聴力」や、意見の相違を新たな視点で捉えて調整する能力なども問われます。民間経験者採用の場合、合否判断の要素として筆記試験よりも「個別面接」と「集団討論」のウエイトが高い傾向にあるので、十分な事前準備が必要です。
4.まとめ
民間で一定の経験を積んでいれば、公務員に転身すること自体はそれほど難しくはありません。ただし、一般枠に比べて社会人採用枠の競争率は高くなりやすいので、面接対策では「民間で培ったスキルをどのように生かすか」のプレゼンテーション力をしっかりと磨いておく必要があります。これは、集団の中で自身をどのようにプロデュースできるかにもつながるので、入念に準備して試験にのぞむようにしましょう。
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