裁判所職員とは、裁判官のサポートや様々な事務処理を担う重要な職業です。裁判を円滑に進める上で欠かせない役割を担っており、責任感の強い方や仕事を丁寧に進める方に向いています。裁判所職員になるには、裁判所職員採用試験を受ける必要があり、筆記試験および人物試験に通過した後、全国の各裁判所に配属される流れとなります。
今回は、裁判所職員の特徴、仕事の内容、採用試験の種類や受験資格などについて詳しくご紹介します。裁判所に関わる仕事がしたい方、法律の知識を活かした仕事がしたい方などは裁判所職員の受験を一度検討してみてください。
1.裁判所職員とは?仕事内容や特徴
裁判所では様々な事件が日々審理されており、「適正・迅速な裁判」を実現するため、裁判官ほか、裁判所に従事する職員がそのサポートを行っています。裁判所に勤務する裁判所職員は、主に「裁判所事務官」「裁判所書記官」「家庭裁判所調査官(補)」の3つの職種に分かれます。以下、詳しく見ていきましょう。
1-1.裁判所事務官
裁判所事務官は裁判書類の作成や当事者の出頭確認、手続案内を行うのが主な仕事です。所属先は「裁判部」または「事務局」に分かれ、裁判部では裁判所書記官のもとで様々な裁判事務に携わり、事務局では総務課、人事課、会計課等において司法行政事務に携わります。
裁判所事務官の職務コースには「総合職」「一般職」の2つがあり、総合職は全国転勤が適用され、一般職は原則受験した地区の高等裁判所の管轄内での転勤に限定されます。
1-2.裁判所書記官
裁判所書記官は、法廷立会、調書作成、訴訟上の事項に関する証明、執行文の付与など以外に支払督促の発付等の業務を行います。また、裁判の円滑な進行を担うコートマネージャーの役割を担っており、法令や判例を調査して弁護士、検察官、訴訟当事者等と打合せすることもあります。
裁判所書記官は裁判所の開廷に不可欠な存在で、各裁判所に配置されています。裁判所書記官になるためには、裁判所職員として一定期間の勤務後に裁判所職員総合研修所入所試験に合格の上、同研修所で約1~2年の研修を受ける必要があります。
1-3.家庭裁判所調査官(補)
家庭裁判所調査官は、家庭裁判所で扱う家事事件や少年事件などに関する調査を行います。例えば、離婚、親権者の指定・変更等の紛争関係者や事件送致された少年や保護者について、その原因や非行の動機、生活環境などを調査します。
家庭裁判所調査官になるには、裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)を受験して家庭裁判所調査官補として採用された後、裁判所職員総合研修所に入所して約2年間の研修を受ける必要があります。
2.裁判所職員になるための試験とは
裁判所職員採用試験は総合職試験と一般職試験に大きく分かれ、さらに職種や学歴等によっても区分されています。
2-1.総合職試験(院卒者区分・大卒程度区分)
総合職試験はおもに「院卒者試験」と「大卒程度試験」の2区分に分かれ、それぞれ「裁判所事務官」と「家庭裁判所調査官補」があります。政策の企画立案等に関する能力などを問う採用試験で、合格者は裁判所事務官または家庭裁判所調査官補として採用されます。
・裁判所事務官
院卒者区分 | 30歳未満で大学院修了および修了見込み者が受験可能 |
---|---|
大卒程度区分 | 21歳以上30歳未満の者が受験可能(21歳未満で大学卒業および卒業見込み者も受験可能) |
・家庭裁判所調査官補
院卒者区分 | 30歳未満で大学院修了および修了見込み者が受験可能 |
---|---|
大卒程度区分 | 21歳以上30歳未満の者が受験可能(21歳未満で大学卒業および卒業見込み者も受験可能) |
2-2.一般職試験(大卒程度区分・高卒程度区分・社会人区分)
一般職試験には「大卒程度試験」「高卒程度試験」「社会人区分」の3区分に分かれます。的確な事務処理に関する能力を問う採用試験で、合格後は裁判所事務官として採用されます。
・裁判所事務官
大卒程度区分 | 21歳以上30歳未満の者が受験可能(21歳未満で大学卒業および卒業見込み者も受験可能) |
---|---|
高卒程度区分 | 高卒見込みおよび卒業後2年以内の者が受験可能(中学卒業後2年以上5年未満の方も受験可能) |
社会人区分 | 20歳以上40歳未満の者(高卒者区分の受験資格を有する者を除く)が受験可能 * 採用予定がある場合に実施されます。 |
2-3.裁判所職員採用試験の試験内容
総合職試験と一般職試験の各々で一次試験と二次試験があり、総合職試験では三次試験も実施されます。
一次試験は主に多肢選択式の基礎能力試験と専門試験、二次試験は法律に関する記述式(論文試験も)の専門試験と人物試験(面接)です。総合職試験(裁判所事務官)では三次試験として、人物試験(集団討論および個別面接)が行われます。
裁判所職員は丁寧な職務遂行能力、几帳面さ、公平性などの資質とともにコミュニケーション能力も必要となることから人物試験が重視されています。
2-4.裁判所職員採用試験の難易度
直近の裁判所職員採用試験の受験状況については、合格倍率が7倍以上と難易度が高く、特に裁判所事務官の総合職大卒区分は50倍以上の難関試験です。
・裁判所事務官総合職 令和1年度実施結果(院卒者区分、大卒程度区分)
試験種別 | 1次試験有効受験者数 | 最終合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
院卒者区分 | 104人 | 10人 | 10.4倍 |
大卒程度区分 | 376人 | 7人 | 53.7倍 |
・裁判所事務官一般職 令和1年度実施結果(大卒程度区分、高卒者区分)
試験種別 | 1次試験有効受験者数 | 最終合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
大卒程度区分 | 8,848人 | 1,255人 | 7.1倍 |
高卒者区分 | 3,140人 | 130人 | 24.2倍 |
・家庭裁判所調査官補総合職 令和2年度実施結果(院卒者区分、大卒程度区分)
試験種別 | 1次試験有効受験者数 | 最終合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
院卒者区分 | 151人 | 16人 | 9.4倍 |
大卒程度区分 | 495人 | 64人 | 7.7倍 |
3.裁判所職員に向いている人はこんな人
裁判所職員としては次のような資質が求められます。
3-1.丁寧な調査を几帳面にできる人
裁判所事務官が調査して準備する裁判の関係資料などは、裁判の正確さや進行のほか、判決に直結します。そのため、裁判所事務官には裁判に関わる情報を漏らさず正確に確保するという丁寧な調査能力が不可欠であり、職務を几帳面にコツコツと進められる方が望ましいと言えます。
また、必要な情報を把握・選定するための知識や理解力、正確な情報を求める探求心などがある方なども適しています。
3-2.コミュニケーション能力の高い人
裁判所の仕事は、裁判官や裁判所書記官などとのチームワークで成り立ちます。また、裁判に関係する当事者、弁護士・法律事務所の関係者、裁判員などへの案内や説明等も必要となるため、裁判事務官には協調性やコミュニケーション能力が不可欠です。
3-3.公平性を保てる人
裁判所事務官は裁判の関係者に対して裁判や調停などについて説明することがあるため、公平に接することが求められます。どちらか一方に有利となるような助言や情報を提供することは許されないため、裁判所事務官等は中立や公平を保てることが不可欠です。
4.まとめ
裁判所職員の主な職種は裁判所事務官、裁判所書記官と家庭裁判所調査官(補)です。裁判所職員になるためには裁判所事務官等の採用試験に合格することが必要ですが、採用者数が少ないため競争倍率が高い難関です。しかし、裁判所事務官で10年以上従事すれば司法書士の資格が得られるなどの道も開けます。裁判所職員になりたい方は、職務内容や採用試験の概要について把握することから始めてみてください。
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