最近は東京などの大都市で就職するのではなく、自然環境に恵まれた地方で働き口を探すケースが増えています。中でも市町村や都道府県に就職する地方公務員は学生から社会人まで人気の職種として注目を集めています。
そこで今回は、市町村職員および都道府県職員の職種、仕事内容、仕事のやりがい、どちらが自分に向いているかについて詳しくご紹介します。地方公務員に関心のある方は、参考にしてみてください。
1.市町村役場職員の職種と仕事
まずは市町村役場職員の職種と仕事について見ていきましょう。
1-1.市町村役場職員とは
市町村役場職員は、市・町・村などの地方自治体(地方公共団体)で働く公務員です。市町村には、大阪市や横浜市のような大規模な自治体もあれば、人口1,000人未満の小規模な自治体もありますが、市町村職員はこのような規模に関わらず、管轄する地域の住民に対して行政サービスを公平に提供する役割を担っています。
1-2.市町村役場職員の職種と仕事
市町村役場職員の職種と仕事は、以下の通りです。
区分 | 職種 | 仕事の内容 | 勤務場所 |
---|---|---|---|
行政 | 事務員 | 事務・会計・税務などを行う | 本庁・すべての出先機関 |
技術 | 土木・建築・機械・電気・農業・林業技師など | それぞれの専門分野で、施設・設備の設計・管理・施工検査などを行う | 土木事務所・河川事務所・農林事務所・スポーツ文化施設など |
福祉 | 相談員・ケースワーカーなど | 地域の高齢者・障害者・児童福祉、生活保護などを行う | 福祉事務所など |
医療 | 医師・看護師・保健師など | 地域の医療活動を行う | 病院・医療施設など |
教育 | 教員 | 児童・生徒の教育を行う | 本庁・学校など |
公安 | 消防官 | 地域の防火・救急活動を行う | 本庁・消防署など |
その他 | 研究員・学芸員・司書など | それぞれの研究分野について研究を行う 施設・展示物の管理や行事の企画を行う |
研究機関・博物館・美術館・図書館など |
市町村職員の職種は、主に「行政」「技術」「その他専門職」に分けることができます。
行政職では事務や会計などを行うのが中心ですが、本庁では予算・決算・条例案や議会委員会資料作成などのデスクワークおよび庁内外の連絡調整なども行います。出先機関では、本庁に比べて地域住民に直接関わる業務が多くなります。
技術・専門職員は、それぞれの分野で自分の専門性を生かした業務を行います。例えば、管内の橋を架け代える場合、土木技師が工事の仕様書を作成し、入札を行って施工業者を決めます。工事が始まってからは、進捗状況の管理を行い、完成後は仕様書どおりに行われたか検査した上で契約金を支払います。
市町村における業務の特徴は、次の通りです。
業務範囲が市町村の管轄範囲内であり、比較的狭い地域を対象とする
業務を行う範囲が、A市ならA市の範囲内、B町ならB町の範囲内と、比較的狭い地域を対象とするため、地域の地理や事情に精通している職員が多いのが特徴です。中には、自分が生まれ育った市長村に就職する職員もいることから、昔の情報に詳しい人もいます。
業務内容が個別具体的で、実際の事業が多い
市町村の業務は、都道府県に比べ、個別具体的で実際の事業が多いことも特徴の一つです。
例えば、地域商店街振興のための補助金(補助割合:都道府県1/2、市町村1/2の場合)を都道府県から受け、市町村職員が、直接地元商店街の経営者たちと相談しながら、補助金を使ったアーケードの設置事業などを行う場合などです。
この場合、直接アーケード設置事業を発注するのは、補助金を最終的に受ける地元商店街ですが、その設計から補助金交付の過程まで、市町村職員が地元住民に指導・相談しながら事業を完成に導き、最終検査を行います。
地域住民と直接接触する業務が多い
市町村は、その地域の住民に直接関わる業務を行っています。そのため、地域住民と直接接触する機会が多いのも特徴です。
例えば、役場の窓口で住民票や印鑑証明書を交付したり、生活保護の申請を受け保護費を支給したりするなどの業務です。台風被害の助成金の申請を受け交付するなどの業務もあります。
このように、直接地域住民と相対して進める業務が多いことから、仕事を通して地域と触れ合うことができるのも市町村業務の特徴です。
1-3.市町村職員のやりがいと適性
市町村職員は、地域住民と直接関わる業務が多いことから、住民からの期待が大きく、仕事上で感謝される機会もあります。また逆に、仕事がスムーズに進まない場合は、住民からのクレーム対応なども行う必要があります。このように、その地域の住民と直接触れ合うことができることが、市町村職員のやりがいに繋がっていきます。
また、業務の対象範囲が比較的狭く、自分たちが精通している土地や住民を相手にすることが多いため、仕事を進める中で自然と熱も入り、達成していく段階でやりがいを感じることができます。
このようなことから市町村職員に向いているのは、次のような人物・人柄です。
- 地域や土地に愛着心を持っている人
- まちづくりや地域福祉・医療などを通して地域・地域住民に貢献したい人
- 人と触れ合うことが好きな人
2.都道府県庁職員の職種と仕事
次に、都道府県庁職員の職種と仕事について見ていきましょう。
2-1.都道府県庁職員とは
都道府県職員は、都・道・府・県などの地方自治体(地方公共団体)で働く公務員です。全国では1都1道2府43県の自治体があり、それぞれの気候・文化・産業・財政状況などが異なる中で、管内の住民に対して等しく行政サービスを提供しています。
2-2.都道府県庁職員の職種と仕事
都道府県庁職員の職種と仕事は、市町村職員と重なる場合もありますが、大きく異なるのは、公安分野の職種である消防官が警察官に代わり、勤務場所が本庁・警察署・派出所となる点です(福祉分野の生活保護は、都道府県も実施しています)。
都道府県職員の仕事内容および特徴を確認してみましょう。
業務範囲が都道府県の管轄範囲内であり、広い地域を対象とする
都道府県の業務範囲は都道府県の管轄範囲と広くなるため、出張に要する時間も市町村より長くかかります。同じ都道府県内でも、エリアが異なれば土地の文化や産業なども違ってくるため、その都度新鮮な空気に触れることができ、新しい発見もあります。
市町村と比べて管理的・連絡調整的なものが多い
都道府県職員の業務内容は、市町村と比べて管理的・連絡調整的なものが多いのも特徴です。これは、都道府県の業務が管内の全域を対象とするため、管内市町村との連絡調整が大きな役割を担うことも一因です。
地域商店街振興のための補助金の例をあげましたが、市町村が実際に地域商店街振興の旗振り役として地元に密着した仕事を行うのに対し、都道府県はその企画や連絡、調整事務が主な業務になります。
都道府県は、地域商店街振興のための補助金交付の要件を定めた補助金交付要綱を策定し、管内市町村を集めて説明会を開催するなどの業務を行います。その上で、市町村からの補助金交付申請を受付け、審査・交付決定・終了後の実績報告・検査などを行います。この過程を進める中で、補助金交付先の市町村とは頻繁に連絡調整が行われます。
市町村と比べて、地域住民と直接接触する業務が少ない
都道府県の業務には、税務事務所や農林事務所など出先機関を中心に直接地域住民と関わりを持つ仕事もありますが、その比率は市町村に比べて低くなります。地域住民に直接関わる具体的な業務の多くは市町村が分担しており、都道府県は市町村との連絡調整や指導・管理的な業務の割合が大きくなります。
2-3.都道府県庁職員のやりがいと適性
都道府県職員は、A府、B県など特定地域に密着した業務を行っていますが、市町村に比べると全県が対象だけに広域的な仕事も多く受け持ちます。
複数の市町村を通る県道の敷設などの業務は、広いエリアの関係市町村や企業・住民などが関係してくるため、計画段階から地元との調整や説明が必要です。全県が一斉に対象となる事業などでは、各市町村の足並みを揃えることも重要です。
このように、市町村より広域的・大規模な仕事を行うことができるのは、都道府県職員の達成感に繋がります。
また、指導・管理的な業務や連絡調整は、多くの場合連絡通知や説明資料が求められるため、文章・資料を作ることが好きな人にはやりがいにもなります。
このことから、都道府県職員に向いている方は、次のような人物・人柄です。
- 地域や土地に愛着心を持っている人
- 広域的な地域振興や住民サービスを行いたい人
- 文章・資料を作るのが好きな人
3.まとめ
市町村職員と都道府県職員の職種や仕事内容は似ていますが、実務面では異なる部分も多くあります。どちらの仕事がやりがい・達成感に繋がりやすいかは、それぞれの人生観や価値観によっても大きく変わります。
地域への愛着と地域住民に貢献したいとの目的意識があれば、仕事を進める中で自ずとやりがいや達成感も醸成されます。地域に根差した仕事に関心がある方は、地方公務員を候補の一つとして検討してみてください。
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