保育士は、児童福祉法第18条によって「保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者」と規定されています。
国家資格の取得が必要である保育士ですが、保育士には大きく分けて公務員保育士と私立保育士の2種類が存在します。
今回は、公務員保育士の概要や仕事内容、私立保育士との違いを詳しく見ていきましょう。
公務員保育士とは?
公務員保育士とは、地方自治体が運営する保育園や児童福祉施設で働く保育士を指します。
保育園には、都道府県や市区町村などが運営する公立保育園の他に、NPO法人や社会福祉法人、株式会社などが運営する私立保育園が存在しますが、公立保育園で働く保育士を公務員保育士、その他の保育園で働く保育士を私立保育士と分類しています。
公務員保育士の仕事内容
公務員保育士の仕事内容は、私立保育士の場合と異なる点はそう多くありません。
保育士免許を有する点は公務員保育士でも私立保育士でも同じであるため、保育園の方針によって仕事内容が多少異なることはありますが、大きな違いはないでしょう。
保育士の仕事内容は、乳児から小学校就学前までの子どもの保育・身の回りのお世話や成長発達へのアプローチを行うことです。
子育ての専門家として、地域の支援事業(学童保育や育児相談)を実施する保育園も増加しているため、その業務は幅広く変容しています。
私立保育士との違いとは
公務員保育士と私立保育士とでは、入職方法や福利厚生など様々な面での違いがあります。
各項目から、公務員保育士と私立保育士の違いを見ていきましょう。
就職の流れ
公務員保育士と私立保育士の大きな違いは、就職の流れです。
双方とも、まずは保育士国家資格の取得が必要となります。
その後、公務員保育士の場合は各自治体が開催する公務員試験に合格しなければなりません。
一方、私立保育士の場合は就職先の園で実施する採用試験に合格することが必要です。
公務員試験を受験する場合、地域によっては倍率が高くなるケースもあります。
また、試験に合格した時点では1年間「採用候補者名簿」へ登録され、各自治体内の保育園より採用希望の申し出があった場合に、登録がある人の中より就職が決定します。公務員保育士試験合格=就業ではないので、注意が必要です。
異動の有無
公務員保育士の場合は、2~4年ごとに異動が生じるケースがほとんどです。公務員の場合、異動辞令には従わなければなりませんが、基本的に勤務している自治体内での移動となるため、通勤が不可能となるほどの転勤を心配する必要はないでしょう。
なお、勤務先は公立保育園のみに限らず、児童養護施設などの保育園以外に配属される可能性があるのも、公務員保育士の特徴です。
私立保育士の場合、単独運営の保育園であれば異動や転勤はありませんが、多数の保育園運営をしているケースでは異動や転勤が生じることもあります。
就職前に異動などの状況について確認しておくと良いでしょう。
就業時間や保育方針
基本的な業務に大きな違いが生じることは少ないですが、就業時間には変化がみられることがあります。
公立保育園では保育時間が明確に決められており、休日保育や早朝・夜間保育などは導入していないことがほとんどです。
ワークライフバランスを整えるという面では、決まった就業時間であることのメリットは大きいでしょう。
私立保育園の場合は施設によって、早朝・夜間対応や休日保育を実施しているケースも多く、就業時間がまばらになる場合があります。
シフト制勤務を導入している施設も多いため、就業時間は事前に確認しておく必要があるでしょう。
また、保育方針に関しては公務員保育士・私立保育士ともに安定した保育方針を導入していることがほとんどですが、私立保育園では独自のカラーを出しやすいといった特徴があります。
お給料・福利厚生
公務員保育士では、公務員であるだけあって福利厚生はかなり手厚く受けることができます。
私立保育士の場合は就職先によっても違いはありますが、有給の取りづらさや長時間労働など、福利厚生に不満を持つ方が存在することも事実です。
給料面では、公務員保育士は地方公務員の一般行政職として採用され、安定した高い収入を期待できるという特徴があります。
保育園に勤務する保育士の場合、内閣府が出した令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果によると、公立の保育園では平均年収363.7万円、私立の保育園では平均年収362.2万円とそれほど差はなさそうに見えますが、地域や役職等によっても大きく収入は変わってきます。公務員保育士の場合は、基本的に毎年昇給するので、勤続年数が長くなれば、年収も上がっていきます。
例えば、令和2年度の東京都練馬区での保育士の状況は、平均年収は692.1万円となっています。
私立保育園の場合、お給料や退職金などは各園によって異なる場合も多く、安定した福利厚生を期待したい場合は公務員保育士の方がメリットは大きいといえるでしょう。
公務員資格の応募要件とは
公務員保育士の応募要件として大前提となるのが、「保育士国家資格保有又は、合格見込み」です。
その他の条件は各自治体によって異なります。今回は東京都新宿区を参考に条件を確認していきましょう。
・資格:保育士の資格を有し、都道府県知事の登録を受けている。又はその年の3月31日までに合格・登録ができる方
・年齢:採用時点で20歳以上38歳未満であること
上記2点が主な条件となっています。
おおむねどの自治体でも同じような条件が規定されている場合がほとんどです。
また、地方公務員法に規定されている欠格事由に当てはまる場合は受験ができないため注意が必要となります。
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
- 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
- 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第六十条から第六十三条までに規定する罪を犯し、刑に処せられた者
- 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
公務員保育士はこんな人におすすめ
私立保育士と比較してメリットが大きい公務員保育士ですが、公務員保育士は以下のような方におすすめです。
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- 安定した方針・勤務条件・福利厚生を満たした職場で働きたい
- 保育士として働きながらワークライフバランスを整えたい
- できるだけ収入が多い職場で働きたい
公務員保育士は、保育士国家資格の合格だけでなく、公務員試験への合格が必要となるため、就職の難易度は高くなります。
その分、メリットが大きいことも特徴なので安定して働き続けたい方にはおすすめであるといえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。保育士には公務員保育士と私立保育士の2種類が存在します。
近年、保育園の民営化が進んでいることで公務員保育士の採用数は減りつつありますが、まだまだ人気の高い仕事です。
公務員保育士を目指す場合は、国家資格と公務員資格の両方の合格を目指す必要があるため、余裕を持って計画的な学習を進めましょう。
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