食品衛生監視員は検疫所や保健所などで働く食の安全確保に欠かすことのできない公務員です。現在の日本は食料自給率が4割ほどと低い水準になっており、多くの食品を輸入に頼っています。そのため、食の安全の確保は食料政策の上でも非常に重要性が高くなっており、これを支えているのが食品衛生監視員の存在です。
この記事では、食品衛生監視員の仕事内容や特徴について詳しくご紹介します。食品衛生監視員になるための受験資格や適性などもご紹介するので、興味のある方は参考にしてみてください。
1 食品衛生監視員とは?仕事内容や特徴
食品衛生監視員とは、おもに食品の安全を確保する業務などに従事する公務員です。令和元年度の国内食料自給率は、農林水産省によるとカロリーベースで38%と低い水準になっており、食料の多くを海外からの輸入に頼っています。
そのため、輸入食品だけでなく国内で流通する食品の安全を確保することは重要な政策課題となっており、その重要な役割の一端を担っているのが食品衛生監視員です。食品衛生監視員には港や空港の検疫所で働く国家公務員と自治体の保健所などで働く地方公務員に分かれています。それぞれの仕事内容と特徴は以下の通りです。
1-1 国家公務員
国家公務員の食品衛生監視員は全国各地にある港や空港で以下のような業務を行っています。
輸入食品監視業務
食品等は販売などの営業目的で輸入する場合、厚生労働大臣への届出が必要です。この届出書は全国の検疫所に配置されている輸入食品届出窓口で受け付けてもらえます。その際、食品衛生監視員は届出書の内容をチェックし、輸入された食品が日本の食品衛生法に適合しているか、必要な検査が行われているかなどをチェックします。
具体的には、日本で使用してはいけない添加物の使用や製造が日本の規制を守って行われているかなどを審査し、必要に応じて輸入業者に対する指導なども行います。港湾区域や倉庫などで輸入食品の確認やサンプリングを行うモニタリング検査も輸入食品監視業務の一環です。
検査(試験分析)業務
一部の検疫所では輸入食品のモニタリング検査に係る試験分析や検疫衛生業務に関する検査を実施しています。これは検査(試験分析)業務と呼ばれ、微生物検査や理化学検査などを行うことによって病原微生物や寄生虫、有毒有害物質などの国内への侵入を防ぐことが目的の業務です。
検疫衛生業務
国内に常在しない感染症の病原体が海外から侵入しないよう、船舶や航空機、乗組員、乗客に対して検疫などを行う業務です。必要に応じて病原体の検査なども行い、感染者を発見した場合は隔離や消毒等の防疫措置を実施します。
また、国家公務員の食品衛生監視員は異動が多い点が特徴で、通常2~3年ごとに日本全国に設置されている各検疫所へと異動になります。
1-2 地方公務員
地方公務員の食品衛生監視員は、おもに都道府県の保健所などで勤務する公務員です。飲食店などの食品を提供する施設の許可事務や同施設に対する監視と指導、食品の検査、食中毒等の調査などの業務に従事します。
また、食中毒予防のための衛生講習会の実施や住民への食品衛生に関する啓発活動なども行っており、地域住民に接しながら仕事をできる点が特徴です。
2 公務員試験の受験資格
食品衛生監視員になるための公務員試験の受験資格をご紹介します。国家公務員と地方公務員に分けて確認してみましょう。
2-1 国家公務員
食品衛生監視員は専門職の国家公務員として人事院が採用試験を実施しています。2021年度に実施される食品衛生監視員の受験資格は既に発表されており、年齢ごとに定められた受験資格は以下の通りです。
21歳以上~30歳未満
1991(平成3)年4月2日~2000(平成12)年4月生まれで、次の(1)または(2)に該当する人
(1) | 大学において薬学、畜産学、水産学または農芸化学の過程を修めて卒業した人、または2022(令和4)年3月までに当該過程を修めて卒業予定の人 |
(2) | 都道府県知事の登録を受けた食品衛生監視員の養成施設で所定の過程を修了した人、または2022(令和4)年3月までに修了する見込みの人 |
21歳未満
2000(平成12)年4月2日以降生まれで、次の(1)(2)(3)のいずれかに該当する人
(1) | 大学において薬学、畜産学、水産学または農芸化学の過程を修めて卒業した人、または2022(令和4)年3月までに当該過程を修めて卒業予定の人 |
(2) | 都道府県知事の登録を受けた食品衛生監視員の養成施設で所定の過程を修了した人、または2022(令和4)年3月までに修了する見込みの人で大学を卒業または2022(令和4)年3月までに卒業見込みの人 |
(3) | 人事院が(1)または(2)に掲げる人と同等の資格があると認める人 |
国家公務員は年齢制限があり、原則として30歳未満の人だけが受験することができます。
1-2 地方公務員
地方公務員は都道府県が独自に採用を行っていますが、自治体によって年齢要件などが異なります。
東京都1類B(一般方式)の食品衛生監視員(2021年度)の受験資格は以下の通りです。
(1) | 日本国籍を有する人で平成4年4月2日から平成12年4月1日までに生まれた人(21歳から29歳) |
(2) | 食品衛生監視員となるための任用資格に該当する人 |
このように、受験資格は国家公務員と地方公務員でそれぞれ定められており、年齢要件などの受験資格が異なる点には注意が必要です。また、地方公務員は都道府県ごとに年齢要件などが異なる場合もあるため、必ず受験する自治体の採用案内などで確認するようにしてください。
3 食品衛生監視員はこんな人におすすめ
食品衛生監視員は輸入業者や飲食店などと関わりながら仕事をすることが多いため、人とコミュニケーションをとることが好きな人におすすめです。行政の立場から検査や指導なども行うため、スムーズに仕事を進めるためには高いコミュニケーション能力が求められます。
また、食品衛生監視員には食品に関する法律や検査の方法など豊富な知識も必要なので、食の安全などに興味を持ち、働きながら新しい法律の勉強を行うなど地道な努力を重ねて貪欲に知識を吸収したい人も向いています。
このほか、国家公務員の食品衛生監視員は全国各地への転勤などもあるため、日本各地の様々な場所で仕事をしてみたいという人にもおすすめです。
4 まとめ
この記事では、食品衛生監視員の仕事内容や受験資格などをご紹介しました。食品衛生監視員には任用資格があり、これを満たさないと公務員試験に合格しても食品衛生監視員になることができないため注意が必要です。また、公務員試験の受験資格は国家公務員と地方公務員で異なり、地方公務員は都道府県によってさらに年齢要件などが異なることもあります。
そのため、公務員試験の受験を検討される場合は必ず試験案内などで受験資格や年齢要件などを確認するようにしてください。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、公務員を初めて目指す方でも合格に必要な知識を身につけることができる、独自のテキストとカリキュラムを用意しています。
資格スクール大栄の公務員受験対策コースが気になった方は、ぜひ一度資料請求や自宅で受けられる無料体験レッスンをお申し込みください。
【通学・オンラインどちらのレッスンタイプも選べます!】
【詳細ページ】資格スクール大栄の公務員受験対策コースの詳細を見る