公務員には社会人採用枠と呼ばれる社会人経験者向けの採用試験があります。しかし、社会人採用枠での受験を検討する場合、一般枠と比べると採用人数が少ない上、受験資格や試験の形式なども異なるため、試験概要についてしっかりと確認することが大切です。
この記事では、公務員試験の社会人採用枠について一般枠と比較しながらメリットやデメリットについて詳しくご紹介します。難易度や勉強方法なども併せて解説するので、公務員への転職などを考えている方は、参考になさってください。
1 民間経験者採用(社会人採用)試験とは
民間経験者採用試験とは、民間企業などで職務経験のある方を対象とした公務員採用試験です。社会人採用試験と呼ばれることもありますが、正式名称は試験を実施する自治体によって異なります。そのため、一般枠の試験と区別するために社会人採用枠とも呼ばれています。
民間経験者採用試験は、国家公務員と地方公務員の両方で実施されており、それぞれの職種や自治体で定めた受験資格に該当する方が受験可能です。また、一般枠と同じように日程が重複しない限り、複数の自治体の民間経験者採用試験を併願することも可能です。
2 一般枠の試験との比較
まずは、一般枠の試験と比較しながら社会人採用試験の特徴について確認してみましょう。
2-1 対象者と受験資格
一般枠は主に新卒者・第2新卒者などを対象とした採用試験のため、受験資格は基本的に年齢要件のみです。中には、獣医師や看護師などの資格保有者であることが受験資格となる専門職の試験もありますが、行政職(事務系)などは基本的に年齢要件さえクリアすれば誰でも試験を受けることができます。
年齢要件は受験する職種や自治体によって異なりますが、多くの試験では概ね30~35歳が受験できる年齢の上限です。
一方、社会人採用試験は民間企業などで既に社会人としての技能や専門知識などを身につけた方を対象に行われる試験です。そのため、年齢要件のほかに職務経験年数が受験資格として求められることが多くあります。
社会人枠の年齢要件は募集を行う省庁や自治体によって異なりますが、35~40歳前後を上限とする試験が多くなっています。一部の自治体では59歳を上限にしている試験もあり、一般枠よりも年齢上限は高めの設定です。
しかし、年齢要件とは別に職務経験も求められ、多くの試験では5年以上の職務経験年数が受験資格となっています。求められる職務経験年数は、募集を行う省庁や自治体によって異なりますが、自営業やパートタイマーでの勤務などを換算できる場合も多いので、事前に試験要綱などで詳細を確認することが重要です。
2-2 試験形式
一般枠の試験では、一次試験で教養択一試験や専門試験、論文試験などが行われ、合格者のみが二次試験を受験できる仕組みになっています。二次試験では、個別面接や集団面接、集団討論などの様々な形式で面接試験が実施され、最終的な合格者が決まります。
社会人採用枠も一般枠と同じように一次試験や二次試験が実施され合格者が決まる流れです。しかし、一次試験で課される試験は主に教養択一試験と論文試験が多く、事務系の職種で専門試験が実施される自治体は少ないです。
また、論文試験は与えられた政策課題などに対して回答する形式だけでなく、過去の社会人としての勤務経験などを活かして回答する趣旨の試験になっている点が特徴です。
二次試験では主に面接試験などが行われますが、一般枠と同様に個別面接や集団討論などの形式で実施されます。個別面接だけでなく、グループ討議やプレゼンテーションなどを行う集団討論形式の面接試験もあります。
これらの試験概要は募集を行っている省庁や自治体によって変わるため、試験対策を行う前には要綱などで試験内容を確認しておくことが重要です。
3 社会人採用のメリット・デメリット
社会人採用枠を利用するメリットは大きく2つあります。1つ目は、一般枠と比べると筆記試験の負担が少ない点です。
一般枠では教養択一試験のほかに専門試験などが課される場合もあり、筆記試験対策が負担になります。しかし、多くの社会人採用試験ではほとんどが教養択一試験のみとなっているため、一般枠と比べて筆記試験の対策に要する手間や時間が少なくて済むのがメリットです。
2つ目は、職務経験をアピールできる点です。社会人採用枠では面接や論文など職務経験をアピールできる機会が多くあります。これにより、筆記試験や面接の印象だけでなく、過去の仕事で培った経験やスキルで他の受験者との差別化を図ることも可能です。
一方、社会人採用枠で公務員を目指す場合、一般枠と比べて採用人数が少ないことがデメリットになります。採用人数が少ない自治体や、そもそも社会人採用枠での募集自体を行っていない自治体もあります。そのため、希望する自治体や職種の試験を受けることができない可能性もあるため、この点は注意が必要です。
また、採用人数が少ないことから倍率が高くなる試験も多く、一般枠よりも狭き門になるケースも少なくありません。
4 社会人採用試験の難易度・勉強方法とは?
ここからは社会人採用試験の難易度や勉強方法についても確認してみましょう。
4-1 社会人採用試験の難易度は?
社会人採用枠の筆記試験は、一定期間勉強から離れている社会人を対象とした試験のため、ほとんどが教養択一試験のみとなっています。
筆記試験は受験する省庁や自治体によって変わりますが、概ね3~5倍程度の倍率です。そのため、事前に時間をかけて対策を行うことで、比較的合格を目指しやすい難易度となっています。
しかし、社会人採用試験は筆記試験よりも人物や職務経験を重視する傾向が強いため、二次試験の面接試験などの倍率が一般枠よりも高くなっています。そのため、一次試験と同様に二次試験についても万全な準備が必要です。
4-2 社会人採用試験の勉強方法
社会人採用試験の筆記試験は一般枠と同様に資格スクールや参考書などを活用しながら対策を行うことが可能です。
職務経験論文や一般論文については、民間企業での経験をどのように公務員として活かせるかを表現できることがポイントになります。
様々なテーマに対して論文を作成できる能力が問われるので、作成した論文を添削してもらい、職務経験を織り込みながら表現できる能力を身に付ける勉強方法が効果的です。
また、社会人採用試験では個別面接や集団討論などの職務経験面接の対策も重要です。特に、個別面接では転職に関して細かく質問されることもあるため、実戦形式の模擬面接などで様々な受け答えをできるように対策する必要があります。
論文や面接の対策は独学ではなかなか難しいため、状況によっては資格スクールや通信教育などを利用しながら勉強を進めるのも選択肢の一つです。
5 まとめ
社会人採用試験は募集を行う省庁や自治体によって試験の内容が異なるため、まずは希望する職種や自治体の試験要綱を確認することが重要です。
その上で、試験対策を行わなければなりませんが、社会人採用試験は一般枠よりも論文や面接などが重視される傾向にあるため、これらの対策もしっかりと行わなければなりません。
論文や面接試験は独学ではなかなか対策も難しいため、必要に応じて資格スクールなども上手に活用しながら必要な試験対策を行うようにしましょう。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、公務員試験の勉強が初めての方でも二次試験の対策まで万全にできるよう、独自のカリキュラムが組まれています。独学での対策に不安がある方や、公務員試験の勉強が初めての方は、ぜひ一度資料請求や自宅で受けられる無料体験レッスンをお申し込みください。
【通学・オンラインどちらのレッスンタイプも選べます!】
【詳細ページ】大栄の公務員受験対策コースの詳細を見る