2017年以降、大幅に民法を改正する法律が成立しています。この改正により関係する税法や関連法令等も適宜改正が行われており、税理士の業務にも大きな影響を及ぼすことが予想されています。この記事では、税理士に関わる民法改正の内容や税理士試験への影響を確認し、効率よく学習する方法などについても詳しくご紹介します。税理士試験を目指している方は、参考にしてみてください。
1.税理士に関わる民法改正
2017年に民法の改正に関する法律が成立しました。今回の大改正は、取引において基本的なルールとなる契約などを定めた債権法などの法律を改正する趣旨で、民法制定以来約120年間ほとんど見直しが行われていなかった法律が対象となりました。
また、翌年の2018年には、成年年齢の引き下げや相続に関するルールを定めた相続法などの民法改正に関する法律が成立しました。これらは取引や相続などに関する基本的なルールを定めた民法の改正にあたるため、関連する税法などが改正されることによっても税理士業務にも影響を与えるものです。まずは、民法改正の内容と税理士業務に与える影響について確認してみます。
1-1.税理士業務に関する民法改正の内容
民法改正においては、下記の3点が税理士業務などに影響を与えます。改正内容を全て紹介することは難しいので、代表的な改正論点を抜粋してご紹介していきます。
- 債権法
- 成年年齢の引き下げ
- 相続法
債権法
・職業別の短期消滅時効の廃止
「医師の診療報酬は3年」などと職業別に定められていた短期消滅時効が廃止され、債権の消滅時効が5年に統一されます。法人税や所得税の貸倒損失計上において影響を及ぼす可能性があり、顧問先から回収不能債権の相談などを受けた際にも取り扱いとして債権の短期消滅時効に関する知識が必要となります。
しかし、税務上の実務では法人税法基本通達という法律によって、取引停止以後1年以上経過した場合に貸倒損失としての計上が認められています。そのため、民法の短期消滅時効によって貸倒損失を計上することがあまりないことから、現行の取り扱いに今後も大きな影響は出ないと予想されています。
・法定利率の変更
契約の当事者間で貸付金の利率や遅延損害金に関する取り決めが行われていない場合、法定利率が適用されます。改正前の法定利率は5%に固定されていましたが、これを3%に引き下げるものです。
また、改正後も利率を3%に固定するのではなく、市中の金利動向に合わせて金利が自動的に変動する仕組みが導入されています。この金利は、法人や個人事業主などが行う利率の定めのない貸付金などに適用されるため、法人税や所得税などの実務で必要となる改正項目です。
成年年齢の引き下げ
社会情勢の変化を考慮して成年となる年齢が20歳から18歳に引き下げられます。成年年齢引き下げの改正は各方面に大きな影響を及ぼすため、経過措置期間が設けられた後の2022年4月1日から施行される改正法です。
民法改正に伴い、税制上も相続人の未成年者控除や贈与税の受贈者年齢要件を18歳に引き下げる見直しが行われます。民法の施行日である2022年4月1日以降は相続税や贈与税で成年年齢を18歳として実務を取り扱わなければなりません。
相続法
・配偶者居住権
配偶者居住権では、被相続人の財産である建物に一定の条件で配偶者が居住していた場合、建物の全部について無償で使用する権利などが得られることを定めています。配偶者居住権を得た後、取得したことを登記することで配偶者は生涯その建物に居住することができます。
背景としては遺産争いで住む場所を失う配偶者などが出ないようにするため新設されました。配偶者居住権は登記することによってその建物に居住する権利が証明されるため、財産性のあるものとして評価されることが相続税法の条文で追加されました。相続税の実務では配偶者居住権の財産評価などが新たに必要になります。
・遺言制度に関する見直し
現行の民法では自筆証書遺言は全て自筆で記載しなければなりません。しかし、その有効性が紛争の原因となることなども考慮され、財産目録などの一部の書類はパソコンで作成できるようになります。また、法務局で自筆証書遺言を補完できる制度も創設されるため、自筆証書遺言を公正証書遺言に近い効果があるものとして取り扱うことが可能です。相続税の実務では、遺言書の作成や保管に関する相談でこの改正に関する知識が必要となり、その中の財産目録などの作成方法も異なることになります。
上記は民法改正のほんの一部ですが、税理士の実務には様々な影響を及ぼします。関連税法や法令等の改正が行われることもあり、実務を行う上では様々な対応が必要です。
1-2.民法改正の税理士試験に与える影響
税理士の実務では、民法改正に伴い税法などが改正されるものもあるため、対応が必要になります。しかし、税理士試験では改正された民法の内容を直接問うような問題は出題されないため、税法が改正される項目をしっかりと押さえることで対応が可能です。
債権法の改正については、取引が課税ベースとなる消費税法や短期消滅時効、法定利率の変更に影響を受ける法人税法、所得税法などの科目で多少の影響が出る可能性はありますが軽微なものにとどまるでしょう。
また、成年年齢の引き下げや相続法は税理士試験の相続税法と密接な関係にあるため、ある程度影響を受ける可能性はあります。特に相続税法では、計算問題でいかに財産評価が的確にできるかどうかがポイントとなりますが、配偶者居住権などの財産性のあるものは、その評価額が問われる問題などが出題される可能性もあり、対策が必要になります。
いずれも改正される税法や関連法令等をしっかりと確認することで対応は可能なため、改正項目についても抜けや漏れがないように対策しましょう。税理士試験には他に簿記論や財務諸表論、国税徴収法、固定資産税などの試験科目もありますが、試験に直接与える影響については軽微なものだと予想されています。
2.効率良く学習するには資格スクールがおすすめ
税理士試験では税制改正された論点がすぐに出題されることもあります。そのため、基本的には試験が実施される年度の4月1日時点で適用されている税法等は、改正点も含めて全て押さえておく必要があります。
しかし、科目ごとの受験が認められている税理士試験でも全ての税法や関連法令を押さえるためには膨大な学習時間が必要で、そのうえ今回の民法改正による影響などを民法の条文解釈などから始めていると時間が足りなくなります。そこで、効率よく税理士試験の学習をするためには、資格スクールの活用がおすすめです。
税理士試験は、簿記と国税徴収法を除いた全ての科目が、基本的に税法と計算問題が半分ずつの組合せで出題されています。そのため、理論問題と計算問題のポイントを押さえた資格スクールの教材は効率の良い学習を手助けしてくれます。
また、今回説明した民法改正についても必要な税法や関連法令等の改正が適宜行われていますが、資格スクールなどでは改正項目についてもタイムリーに授業に取り込んでいくため、時間をかけて改正論点を調べる手間が省けます。
試験の直前には改正論点なども盛り込んだ問題演習なども行ってくれるため、重要ポイントを効率良く押さえた学習が可能となります。資格スクールを活用することはある程度の出費となりますが、税理士試験は独学で結果を出すことが難しい試験です。税理士試験に効率よく合格できれば、払った費用以上の見返りを結果として求めることもできるため、費用がかかっても資格スクールを活用した勉強方法をおすすめします。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。民法改正が税理士試験や税理士の実務などに及ぼす影響について確認しました。税理士試験では改正された民法を直接問うような問題は出題されませんが、それに伴う税法や関連法令等の改正が行われるため、対応は必要です。改正項目を網羅するためにはポイントを押さえた学習をする必要があるため、資格スクールなどを上手に活用すると良いでしょう。
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