簿記1級は企業で経営管理や経営分析ができるレベルの非常に高度な知識とスキルを保有している者として扱われ、就職や転職でも有利に働くなど、ビジネスにおいて非常に高く評価される資格です。簿記自体も今後取得したい資格で常に上位にランクインしており、学生からビジネスパーソンまで幅広い人気を誇ります。そこで今回は、日商簿記の中で最高峰となる日商簿記1級の試験について、試験内容やおすすめの勉強法を詳しく説明します。
1.簿記とは?
簿記とは企業などの経済活動を帳簿に記録して管理する技術です。簡単に言えば、売上や仕入、経費支払いなどの外部との取引記録をお金の単位で帳簿として記録する方法になります。簿記で記録する主な目的は、外部の利害関係者に企業などの業績を正しく伝えることです。つまり企業であれば株主や取引先、取引金融機関、徴税を行う官公庁(税務署など)などの利害関係者に対して正しい業績報告ができるように財務諸表を定められた形式に従って作成することになります。
2.簿記検定とは?
簿記検定とは一般的に日本商工会議所が実施する日商簿記検定を指します。商業高校の生徒が受験する全国商業高等学校協会主催の全商簿記などもありますが、ここでは毎年約60万人が受験する日商簿記検定について紹介していきます。
2-1.日商簿記1級の試験とは?
日商簿記には次の3つの級が設けられており、級の数字が小さくなればなるほど難易度が上がっていきます。
- 1級
- 2級
- 3級
中でも日商簿記1級は合格すると国家資格である税理士試験の受験資格が得られたり、企業会計に関する法規を踏まえて経営管理や経営分析ができるスペシャリストと認められたりする資格で、就職や転職の際にも高く評価されます。
検定試験は試験を実施する各地の商工会議所で直接申し込むことが可能です。基本的には各商工会議所の窓口で受付を行っていますが、商工会議所によっては郵送やインターネットで申し込むこともできます。簿記1級の受験料は7,710円(平成31年1月時点)です。
2-2.受験者数と合格率
直近過去6回の試験結果をもとに受験者数と合格率を確認してみましょう。試験に申し込む受験者数は毎回1万人前後ですが、実際に受験した受験者(実受験者数)は7、8000人前後となります。やむを得ない事情で受験を断念した方や勉強が間に合わなかったために受験しなかった方などを除いた人数ですが、合格率は実際の受験人数のうち何パーセントが合格したかを表す数字になります。2017年11月に実施された試験は近年例を見ないような合格率の低さでしたが(5.9%)、基本的に実受験者の10%前後しか合格できない難関試験と言えます。
回(実施年月日) | 受験者数 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
150 (2018.11.18) | 9,852名 | 7,588名 | 680名 | 9.0% |
149 (2018.6.10) | 9,429名 | 7,501名 | 1,007名 | 13.4% |
147 (2017.11.19) | 10,675名 | 8,286名 | 487名 | 5.9% |
146 (2017.6.11) | 9,064名 | 7,103名 | 626名 | 8.8% |
144 (2016.11.20) | 11,062名 | 8,416名 | 783名 | 9.3% |
143 (2016.6.12) | 9,845名 | 7,792名 | 846名 | 10.9% |
データは商工会議所の検定試験サイト内受験者データページより
2-3.日商簿記1級の検定試験日程
2級や3級を含めた簿記検定の試験自体は年に3回行われますが、簿記1級の試験は年に2回しか実施されません。例年、6月と11月に実施されていて、平成30年は6月10日(日)と11月18日(日)の2回実施されました。
2-4.日商簿記1級検定試験の内容
簿記1級の試験科目は全4科目から構成されます。試験は、「商業簿記」と「会計学」をまとめた試験を最初の90分間で行い、残った「工業簿記」と「原価計算」をさらに90分間でまとめて行います。それぞれの試験科目の内容は次の通りです。
科目 | 科目内容 | |
---|---|---|
前半90分 | 商業簿記 | 企業と外部との取引を正しく記録し、株主や取引先などの利害関係者に対して正確な報告ができる決算書等を作成するための簿記技術 |
会計学 | 会計技法や商業簿記によって作成される決算書等についての学問的理解 | |
後半90分 | 工業簿記 | 製造業などの企業内部の材料費や人件費などを計算し、主に経営管理のために役立てる簿記の技術 |
原価計算 | 製品などの原価を分類・集計し、製造原価等を算出して経営管理や予算実績管理などに活かす会計手法 |
3.おすすめの勉強方法
簿記試験では理論の徹底的な理解と計算の反復練習がとても重要です。簿記1~3級の試験の全てに当てはまる体系的な勉強方法ですが、まずは簿記の理論(仕組みや構造)を納得がいくまで理解します。そして計算問題の反復練習を繰り返し、試験時間内で一通りの問題が解けるように解答速度をアップさせます。簿記の試験問題を解いていく上では暗記も必要ですが、簿記自体の仕組みや構造などの理論を理解していれば、学習時間の短縮を図ることも可能です。暗記事項は必要最低限にとどめ、理論の理解に時間を割くことが最も重要なコツです。
簿記1級の試験については、試験で求められる知識量や問題の計算量が2級などと比べると格段に増えます。必然的に必要な学習時間も多くなるため、少しでも効率よく勉強するために資格スクールや通信講座などを利用することも選択肢の一つです。蓄積されたノウハウを活かした教材を使って効率の良い学習ができるのは大きなメリットと言えます。
合格のためにどうしたら効率よく勉強を進められるかを考え、自分に合った学習スタイルを見つけましょう。
4.簿記1級はこんな人におすすめ!
簿記1級は経理・財務部門で活躍したい方におすすめの資格です。2級と比べて工業簿記や原価計算に対する深い知識と理解力が得られる資格で、管理会計に関する高度な専門知識有していることを証明する武器になります。また簿記は、最近のビジネスパーソンにとって重要なビジネスツールの一つです。中でも1級は特に取得難易度が高いため、就職や転職を有利に進めたい方にとっては他の応募者と差をつけられる重要な資格の一つになっています。
さらに地道に努力を続けられる方にとってもおすすめの資格と言えます。経理や財務の仕事は決して華やかな仕事ばかりではなく、地道に正確な作業を続けられる能力が求められます。1級は膨大な勉強量を地道にこなさなければならない大変な試験です。しかしそのような対価を払ってでも十分な見返りが得られる価値のある資格ですので、キャリアアップを考えている方にはぜひ一度チャレンジしてほしい資格です。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?日商簿記1級は非常に難易度が高い試験のため、有資格者が就職・転職時に得られるメリットは大きく、経理・財務部門で活躍する方にとっては業務内容の深い理解とキャリアアップにもつながる資格です。難易度の高い試験という理由で敬遠されることもありますが、資格スクールや通信講座を利用すれば効率的に合格を目指すことも可能です。経理・財務部門への就職・転職やキャリアアップを考えている方はぜひ参考にしてみてください。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、簿記の勉強は初めてという方を対象にした3級講座(BK3)から、会計のエキスパートを目指す簿記1級講座まで提供しています。段階を踏んで着実に知識を身につけていける効率的なカリキュラム構成で合格を目指します。
また、リンクアカデミーでは合格までの学習過程も、ご自身のキャリアを見直す大事な時間だと考えております。独自の自己診断サービス(BRIDGE-C)であなたのやる気が変わりやすいポイントや目指す姿に近づくために求められるスキルをデータ化したものをカウンセリングを通じて深堀し、あなたのキャリアの棚卸しをしっかり行いますので、資格取得だけでなく取得後のキャリアに向けた準備を着実に進めることができます。
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