日商簿記検定では、統一試験(ペーパー試験)だけではなくネット試験も実施しています。ネット試験は、2020年6月の第155回簿記試験が新型コロナウイルス感染症の拡大等の影響により中止になり、受験者の申し込みに対応できなかったことも影響し、2020年末に新たに導入された試験方式です。
そこで今回は、簿記のネット試験の概要や統一試験(ペーパー試験)との違い、ネット試験を受験する際の流れ、メリット・デメリットを解説します。これから日商簿記検定を受ける方はぜひ参考にしてみてください。
1.日商簿記検定のネット試験(CBT試験)とは?
日商簿記検定のネット試験(CBT試験)は、2020年12月から開始された新しい試験方式です。商工会議所が認定した全国各地のテストセンターで試験を受ける形式です(自宅受験不可)。ただし、対象となるのは受験者の多い2~3級で、1級は年に2回の統一試験のみなので注意が必要です。
また、2021年2月までの統一試験(ペーパー試験)ではどの級も試験時間が120分でしたが、ネット試験では、3級は60分、2級は90分に短縮されました。なお、2021年6月からは統一試験(ペーパー試験)もネット試験と同じ時間に短縮されています。
出題範囲は統一試験(ペーパー試験)もネット試験も同様で、同じテキストや問題集を使って学習すれば問題ありません。また、合格基準はいずれも70点以上となっており、それぞれで難易度が変わらないように調整されています。
2.簿記のネット試験(CBT試験)と統一試験(ペーパー試験)の違い
簿記のネット試験と統一試験(ペーパー試験)でどんな違いがあるのでしょうか?主な違いを解説します。
2-1. 試験の開催回数
統一試験(ペーパー試験)は年3回の開催(1級は年2回の開催)ですが、ネット試験(CBT試験)は随時開催されていて、統一試験前後の日程以外はほぼ毎日受験できる会場もあります。受験機会が大幅に増加したことで試験を受けやすくなりましたが、「いつでも受験できる」がメリットだけでなく、ずるずると試験日を延期できてしまうデメリットにもなっています。ネット試験を上手く活用する方法のひとつは、学習を始めてすぐの段階で、早目に目標とする受験時期を決めることです。そのうえで、自分に合った学習スケジュールを計画することが大切です。
2-2. 回答の入力方法
ネット試験(CBT試験)ではパソコンの画面に問題と解答欄が表示されます。計算用紙として下書き用のA4用紙2枚と筆記用具が別途配布され、計算はその用紙に記載していく形式です。
回答は紙に記載する方法ではなく、マウスとキーボードを使いパソコンに入力します。主にプルダウンの選択式で回答を入力していきますが、金額や勘定科目をキーボードで入力する問題もあります。簿記試験に集中するためにも、基本的なパソコンの操作方法は把握しておきましょう。
2-3. その場ですぐ合否が分かる
従来の紙の試験(統一試験)では試験を受けてから合否が出るまでに1~3週間かかりましたが、ネット試験(CBT試験)では試験が終わった後にすぐ自動採点され、その場でパソコン画面に合否が表示されます。もし不合格になってしまった場合でも、約4か月後の統一試験を待つことなく、テストセンターの予定が空いていさえすれば、すぐに次回の試験申込もできることは、大きなメリットだと言えます。
2-4. 申し込みした試験の変更・キャンセルができる
ネット試験であれば、既定のキャンセル期限までなら申し込み済みの試験の変更・キャンセルが可能です。どうしても試験日に予定が入ってしまった場合など、統一試験しかない頃は、次の試験まで約4か月も待たなければならなかったことも、ネット試験であれば、直近の予定に変更できることは嬉しいですね。ただし、キャンセル期限が過ぎてからのキャンセルは手数料が発生するので注意しましょう。
3.簿記のネット試験(CBT試験)申込~受験の流れ
実際に簿記のネット試験を受ける際に、どんな流れで進んでいくのか紹介します。
3-1.試験会場を選ぶ
インターネットで申し込む場合、商工会議所ネット試験施行機関のリスト(https://links.kentei.ne.jp/organization)から受験したい地域を選び、希望の試験会場を選びます。テストセンターによって受験できる日が違うため、立地だけでなく日程も照らし合わせて選びましょう。
3-2.受験者登録をする
初めてネット試験(CBT試験)を受ける場合は、受験者登録が必要です。公式ホームページよりマイページアカウントを作成しましょう。
3-3.受験予約をする
マイページにログインしたら希望の試験と試験日程・試験会場を選択して受験予約を行います。前述の通り、キャンセル期限内であれば、試験日の変更・キャンセルが可能です。
3-4.受験料を支払う
受験予約する際に支払方法を選択し、2級であれば4,720円、3級であれば2,850円、さらにネット試験限定の事務手数料550円を支払います。(いずれも税込※2022年8月現在)
支払方法はクレジットカード決済、コンビニエンスストア決済、ペイジー決済(銀行ATM、ネットバンキング)から選択可能です。
3-5.テスト会場で受付を済ます
試験当日になったら、身分証明書(氏名、生年月日、顔写真のいずれも証明できるもの)、電卓(計算機能のみのもの)を持参してテスト会場にて試験を受けます。
試験会場に到着したら受付で本人確認書類を提示し、受験ログイン情報シートを受け取って、荷物をロッカーに預け、筆記用具とメモ用紙を受け取ってから試験室に入ります。
3-6.試験を受ける
入室したら、受験ログイン情報シートに書かれているIDとパスワードをパソコンに入力して試験をスタートします。パソコンの画面に問題と解答欄が表示されるので、プルダウン式で回答を選択したり、金額などをキーボードで入力したりして回答を入力していきます。
試験終了時に自動採点され、パソコン画面に表示される合否を確認したら、試験管を呼んで試験終了書などを受け取って終了です。
4.ネット試験(CBT試験)のメリット・デメリット
ネット試験にするか統一試験(ペーパー試験)にするか悩んでいる方に向けて、ネット試験のメリットとデメリットを解説します。
4-1.メリット
ネット試験であれば統一試験(ペーパー試験)よりも試験の実施回数がはるかに多いので、申込人数が多くても受験できないケースはほとんどなく、自分の都合や学習ペースに合わせてスケジュールを組んで受験しやすいです。急いで簿記の資格を得たい方にも適しています。
また、統一試験(ペーパー試験)だと自分で時計を見て残り時間を確認しながら解き進める必要がありますが、ネット試験だとパソコンの画面下に残り時間が表示されているので、時間配分がしやすいです。
合否結果も試験終了直後にわかるので次の行動に移しやすく、次の受験まであまり期間を空けずとも再チャレンジできます。期間が空いてしまって知識を忘れてしまうなどのリスクを避けられるのは大きなメリットでしょう。
4-2.デメリット
ネット試験はパソコンでの回答となるため、ふだんの紙ベースの練習とは勝手が違い、パソコンが不慣れな人だと操作に戸惑う可能性があります。パソコン操作に自信がない方は実際にパソコンに触れながら予行練習をしておくのがおすすめです。
また、計算用紙は配られますが問題用紙はないので、問題に下線を引くなどの書き込みはできません。特に複雑な計算が求められる決算整理などは、計算用紙をうまく使って解く練習をしておく必要があります。
5.まとめ
ビジネスのさまざまな取引を学び会計について知る日商簿記検定は、どんな業界・企業にも生かせる知識を習得できる資格です。事務関係の職種でなくても、どれくらいのコストがかかってどの程度の利益が出ているかなどの全体を見通しながら仕事ができるようになり、より精度の高い仕事をしやすくなるため、キャリアアップの味方になります。より広い視野を持って仕事に取り組みたいと考えている方にぴったりの資格でしょう。
忙しくスケジュール調整が難しい方でも、頻繁に開催しているネット試験であれば自分の予定に合わせて気軽に受験できます。モチベーションを維持しやすい通学学習や、時間や場所に縛られず受講しやすいオンライン学習など、自分に合った学習法を取り入れるのも合格の近道です。この機会に日商簿記検定の学習を進め、今後のキャリアの土台にしてはいかがでしょうか。