宅建士資格の試験は毎年25万人前後の受験生が申し込む人気の国家資格試験です。宅建士資格は、不動産業界の必須資格と言われていますが、実際には宅建士の資格を保有しないで勤めている方もいます。
この記事では宅建士資格の概要を確認し、不動産業界で働くためには宅建士資格が必須なのか、無くても就職・転職できるのかといった疑問を解決します。不動産業界への就職・転職を考えている方はぜひ参考にしてください。
1.宅建士とは?
宅建士とは不動産取引のスペシャリストである宅地建物取引士の略称です。宅建士の資格を保有していると、不動産の売買取引や賃貸物件の斡旋を行う際に宅建士にしかできない独占業務を行うことができます。宅建士にのみ許された主な独占業務は以下の通りです。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書(35条書面)への記名・押印
- 契約書(37条書面)への記名・押印
1-1.重要事項の説明
宅地や建物などの不動産は高額なため、売買や賃貸を行う際にはその不動産を購入(または賃借)するかどうかを決断するための重要な情報を提供しなければなりません。これを「重要事項の説明」と言い、宅地建物の取引に関する法律である宅建業法で定められている宅建士の重要な業務の一つです。具体的には、買主(賃借人)に対してその建物がどのような設備を備えているかなどの物件の説明と、契約の解除に関する事項などの取引条件に関する説明を行う必要があります。
1-2.重要事項説明書(35条書面)への記名・押印
重要事項の説明方法として、重要事項を記載した書面を作成し、先に書面の交付または確認をしながら宅建士本人が説明するよう宅建業法で定められています。重要事項を記載した重要事項説明書へ記名、押印できるのは宅建士だけの業務です。
1-3.契約書(37条書面)への記名・押印
宅地建物取引の事業者が関与して不動産取引が成立した場合には、契約書の交付が宅建業法により定められています。この契約書には、売買代金(賃借料)やその支払い方法、物件の引き渡し時期などを明記し、宅建士が記名・押印したものを契約当事者に交付しなければなりません。この契約書の記名・押印も宅建士だけができる独占業務です。
このような独占業務ができることにより、不動産などを中心とした幅広い業種で活躍できるのが宅建士資格です。
2.宅建士資格がなくても不動産業界で働ける?
宅建士の資格がなくても不動産業界で働くことは可能です。不動産業界で働く人はほとんど宅建士の資格を保有していると思われがちですが、売買や仲介を行う不動産業を営む場合は一つの事務所において、業務に従事する5人につき1名以上の割合で専任宅建士がいれば合法に業務を行うことができます。つまり、不動産業を営む事務所に5人勤務している場合は、そのうちの1人が専任宅建士であれば残りの4名は宅建士資格を保有していなくても不動産業を営むことができるのです。
不動産業の主な仕事は、営業や事務、開発などの部門に分かれます。営業や事務などは宅建士資格がなくても問題ありません。特に、営業職は営業成績による歩合制給与を採用している会社も多く、営業成績の振るわない方が離職することがあるため人手不足になりがちな職種です。このように営業職においては、宅建資格を保有していることよりも営業成績が重視されることもあります。
しかし、開発などの部門では用地取得や物件調査、地権者との交渉などの業務が主となるため高い専門知識が必要になります。そのため、宅建士資格が応募条件となる場合も多く、資格がなければこれらの部門で働くことは難しくなります。
3.不動産業界に就職するなら宅建士資格が必要な3つの理由
宅建士資格がなくても不動産業界に就職することはできますが、資格があると就職・転職活動を有利に進めることも可能です。不動産業界に就職するなら宅建士資格が必要となる3つの理由について確認してみましょう。
- 重要事項の説明ができる
- 金融サービス領域での相談や助言にも活用できる
- 業界内での知名度が高く信用が得られる
3-1.重要事項の説明ができる
宅建士資格を保有していると重要事項の説明ができます。宅建士の重要な独占業務を行えるのは就職・転職の際に大きなメリットとなります。前述したとおり宅建士資格がなくても不動産業で働くことはできますが、資格保有者は高い専門知識があることを国家資格によって保証されているため、資格を持たない応募者と比べると評価されやすい傾向にあります。営業でも宅建士資格を保有している営業マンから説明を受けるほうが、購入者は安心しやすくなります。昨今は宅建士資格を重視して営業マンを採用する会社も少なくはありません。また、不動産売買や賃貸の仲介などの業務では宅建士の知識が必要不可欠となるため、不動産業での就職を有利に進めるためには宅建士資格が必要になります。
3-2.金融サービス領域での相談や助言にも活用できる
宅建士資格は不動産業界だけで活躍する資格ではありません。宅建士資格とはあまり関係がないような金融機関や一般企業にも活躍のフィールドは広がっています。
例えば金融機関では、貸付金の担保設定を行う際に不動産鑑定などの知識が必要になることがあります。最近は金融機関が富裕層向けのリテール戦略を強化している傾向もあり、不動産鑑定だけではなく法律や税金も含めた相談や助言にも高度な知識が求められるため、宅建士資格の保有者は優遇される傾向が顕著です。また、一般企業においても、新規出店の際の土地建物の売買や工場用地の取得、自社保有の不動産売買などで宅建士資格が重宝されています。
このように、金融サービス領域やその他の業種でも宅建士の専門的な知識を活かすことが可能です。
さらに不動産業界においても住宅ローンなどの金融サービス領域とは深い関係があります。売買に関する専門知識だけではなく、民法や税金に関する知識が必要な相談業務なども増えているため、不動産業界に就職するならば宅建士は必要不可欠な資格の一つといえます。
3-3.業界内での知名度が高く信用が得られる
宅建士資格は不動産業界内での知名度も高く、資格を保有していることで信用を得やすい傾向にあります。売買や仲介を行う不動産業の場合、5人に1人以上の割合で選任宅建士の設置が義務付けられていますが、全ての不動産会社が最低限の割合で事業を行っているわけではありません。大手の不動産会社ほど選任宅建士の割合が高く、従業員は宅建士資格を保有していることが望ましいと考えているのです。
その理由の一つして、顧客や取引先企業との窓口になる従業員が宅建士資格を保有していれば顧客や取引先企業に安心感を与えることができ、スムーズに取引を進められることが挙げられます。特に、コンプライアンス(法令順守)を重視する企業では全従業員が宅建士資格を保有していることが望ましいと考えているので、大手の不動産会社などに就職する際は宅建士資格が必要条件になります。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。宅建士資格がなくても不動産業界で働くことはできますが、仕事内容はどうしても限られる上に、有資格者に比べればキャリアアップが難しい場面もあります。宅建士資格は不動産業界のみならず一般社会でも知名度が高く、今後就職・転職する際に他の応募者と差別化できる大きな武器となります。試験の受験資格制限もなく誰でも気軽に挑戦できる資格なので、不動産業界への就職やキャリアアップで転職を考えている方はぜひ宅建士の資格取得を検討してみてください。
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