簿記試験は独学で受験するのが不利だと言われています。受験者の勉強方法の違いが主な理由の一部となるほか、試験自体の出題範囲がたびたび変更されるという点も大きな要因です。そこで今回は、簿記を独学で受験するのが不利な理由を分析し、新たな簿記検定試験の出題範囲や簿記試験合格に向けたおすすめの勉強方法について分かりやすく解説します。簿記試験に向けて独学で挑むか、または資格スクールを利用するかで悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
1.簿記を独学で受験するのが不利な理由とは?
簿記を独学で受験するのは不利と言われる理由には主に2つのポイントが挙げられます。
- 難問などをすぐに質問して解決することができない
- 簿記検定試験の出題区分が変更された際に対応が難しい
1-1.難問などをすぐに質問して解決することができない
簿記の試験は必ず正解となる回答がある試験です。簡単な仕訳、穴埋め・マルバツ問題から損益計算書、貸借対照表、試算表を作成する難解な問題まで幅広い知識と素早い計算能力が問われます。しかし難しい論点を一人で調べて正しく理解するには膨大な時間を要します。そのため、教えてくれる講師が近くにいない独学では、時間効率や理解度の点で資格スクールに通う方よりも不利だとされています。
1-2.簿記検定試験の出題区分が変更された際に対応が難しい
また、出題区分の大幅な変更があったときも独学の受験者にとって不利に働きます。変更点については過去問などで学習することができず、さらに全ての変更点について問題集などから情報収集するには多くの時間と労力を要するからです。特に、今年(2019年度)から適用される出題区分は変更点が多く、簿記3級では出題の前提となっていた「個人商店の会計処理」が「小規模企業の会計処理」へと変更されました。このように出題区分の大きな変更が行われた年は、変更点が試験に出題される傾向にあるため、独学で勉強する方にとって不利になります。
2.新たな簿記検定試験の出題範囲は?
2019年度(2019年6月9日実施の試験)から適用される出題区分の変更点について、簿記3級から1級までそれぞれの級について確認していきましょう。なお、2019年度は変更点が多いため重要な変更点を中心にピックアップして紹介します。
2-1.簿記3級の出題範囲の変更点
1.追加・変更された項目
純資産と資本の関係 | 試験問題の出題前提が個人商店から小規模企業に変更されるため、増資や剰余金の配当などが新たな出題範囲になります。 |
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複数口座を開設している場合の当座預金、その他の預貯金 | 複数の預貯金口座を使用している場合の預貯金管理が新たな出題範囲となります。口座種別や銀行名などを使用した「当座預金○○銀行」という勘定科目表記で出題されます。 |
電子記録債権、電子記録債務、クレジット売掛金 | 実務上の処理に準じて、現代のビジネスシーンで活用されている「でんさい」などの電子記録債権の処理やクレジットカードによる売掛金などが新たな出題範囲です。 |
個人商店とは異なる法人特有の処理 | 純損益の繰越利益剰余金勘定への振替や法人税などの法人特有の税金に関する処理が新たに出題範囲となります。また、社会保険料などの会社負担として発生する法定福利費も新たな出題範囲です。 |
収益、費用の繰延と見越 | 見越という言葉が受験者の理解を妨げる要因になっていると考えられたため、「収益・費用の前払い・前受けと未収・未払いの計上」という表現に改められます。 |
2.削除された項目
当座借越 | 実務においては、期中に当座借越が発生しても当座預金の貸方残高(マイナス残高)として処理を行うため、簿記の試験でも期中の当座借越処理が出題範囲から除外されました。なお、期末に当座借越の残高が残っている場合、当座借越残高を負債に振り替える処理は従来通り出題範囲です。 |
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手形の裏書譲渡、割引 | 手形の裏書譲渡、割引は従来3級の出題範囲でしたが、2級の出題範囲に変更となります。 |
仕入値引、売上値引 | 簿記では、商品の不良などが売買後に判明したとき、売買後に価格を引き下げる意味で値引が出題されていました。しかし、不良の場合は返品や良品との交換を行うことが一般的で、実務上の処理ともかけ離れているため出題範囲から除外となりました。 |
2-2.簿記2級の出題範囲の変更点
その他の債権譲渡 | 手形の裏書譲渡が3級から2級の出題範囲に変更されたことと併せて、売買取引処理の債権譲渡についても新たな出題範囲となりました。 |
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役務費用 | 役務費用は商品売買を営む企業の売上原価にあたるため、勘定科目表に合わせて役務減価へ名称が改められます。 |
2-3.簿記1級の出題範囲の変更点
売買目的有価証券の総記法による処理 | 実務上、売買目的有価証券を保有している証券会社は一般的に総記法による記帳を行っているため、今回出題範囲として新たに追加されました。 |
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保証債務の計上、取崩 | 従来は手形の遡及義務を念頭に置いていましたが、債権譲渡において延滞債権を買い戻すリコース義務を負う場合も処理の範囲に含まれることを明示するため、「買戻・遡及義務の計上・取崩」へ項目名が変更されました。 |
割賦販売の収益認識について回収基準と回収期限到来基準を除外 | 収益認識の会計基準変更に伴って割賦販売の回収基準と回収期限到来基準の適用が認められなくなるため出題範囲から除外されます。会計基準の変更により他にも適用が認められなくなる処理等もあるため、商品売買に関する他の論点についても試験で出題するかどうかは今後も検討が続きます。 |
2019年度の主な出題区分の変更は上記の通りです。2級は2018年度までの区分変更で大きく内容が変わりましたが、2019年度は3級の出題範囲が大幅に変更となっているため注意してください。また、出題区分の変更詳細は日本商工会議所のサイトで全て確認することが可能です。
3.簿記試験合格に向けて
簿記試験合格に向けて最も重要なポイントは、自分に合った勉強方法の確立です。さらに必要な学習量(学習時間)の確保も合格への近道となります。しかし、独学で勉強されている方は質問できる講師などが近くにいないことや出題区分の変更により、余分に時間を要するため、資格スクールに通っている方よりも学習量の確保が難しくなります。そのため費用はかかるものの、効率よく学習したい方には資格スクールの活用がおすすめです。
資格試験の勉強方法は個人でやり方や必要な学習量が異なります。効率的に合格するためには様々な選択肢から自分に合った勉強方法を見つけることが重要です。資格スクールの活用も含めて自分に合った最良の勉強方法を検討してみてください。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。近年は国際会計基準に合わせて会計基準の見直しなどが行われているため、今後も大きな出題区分の変更が行われる可能性も否定できません。そのため、簿記試験の受験勉強においても資格スクールの果たす役割はさらに拡大することが予想されます。簿記の資格は就職や転職でも役に立つ資格です。自分に合った勉強方法を確立して最短ルートで合格を勝ち取りましょう。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、個人の勉強スタイルに合わせてオンデマンド講座とライブ講座を選択することができ、分からない問題は理解できるまで気兼ねなく質問できます。
また、大栄独自の分析力を活かして出題区分の変更に伴う改正論点も網羅しているため、最新の試験傾向にも対応することが可能です。特に、その年に出題区分の変更が行われた論点は出題頻度が高い傾向にあり、受験者の得点差が開きやすい論点となるため、効率の良い対策が合格への最短ルートとなります。
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