キャリアアップや転職活動にも役立つ日商簿記2級は、ここ数年、試験内容の改訂が頻繁に行われています。特に平成28年以降は出題範囲が大幅に改正されて難化した結果、149回以降の合格率は15%前後に低下しました。そのため簿記試験を合格するには、試験の改訂内容に合わせて効率よく対策することが重要になります。
そこで今回は、日商簿記試験2級について試験のポイントや対策方法について詳しく解説します。2020年度試験の合格を目指す方は参考にしてみてください。
1.日商簿記2級とは
「簿記」とは、「帳簿記録」の略語で、企業が行う事業活動を貨幣価値で帳簿に記入するための方法です。この記録法に精通することは、会社のカネの動きと経営状態を把握し、会社の将来を展望する能力を備えることにつながります。
現在、日本には、「日商簿記(日本商工会議所主催)」、「全商簿記(全国商業高等学校協会主催)」、「全経簿記(全国経理教育協会主催)」の3つの簿記資格がありますが、最も知名度が高く、受験者が多いのが「日商簿記」です。
日商簿記は、難易度の高い順に、1級、2級、3級、簿記初級(2016年度までは4級)と分かれており、ランクごとに求められるレベルと試験科目及び合格率は以下の通りです。
・日商簿記1級~3級のレベル
等級 | 求められるレベル | 試験科目等 | ||
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科目 | 試験時間 | 合格基準 | ||
1級 | 極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を習得し、会計基準や会社法、財務諸表規則などの企業会計に関する法令を踏まえ、経営管理や経営分析を行うことができるレベルです。なお、1級合格者には、税理士試験の受験資格が与えられ、公認会計士を目指す人の登竜門ともなっています。 | 1 )商業簿記 2 )会計学 |
90分(休憩あり) | 70%以上(ただし、各科目40%以上の足切りがあります) |
3 )工業簿記 4 )原価計算 |
90分(休憩あり) | |||
《試験》 例年、6月と11月の年2回実施 |
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2級 | 高度な商業簿記及び工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、経営管理と財務管理を担当するために必須の知識レベルです。キャリアップや転職には有力な資格となります。 | 1 )商業簿記 2 )工業簿記 原価計算含む5問以内 |
120分 | 70%以上 |
《試験》 例年、2月、6月、11月の年3回実施 |
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3級 | 商業簿記のみの学習で、小規模企業における会計実務を踏まえ、経理関係書類を適切に処理できるレベルです。 | 1 )商業簿記 5問以内 |
120分 | 70%以上 |
《試験》 例年、2月、6月、11月の年3回実施 |
・日商簿記1級~3級の合格率(単位:人、%)
試験回 | 1級 | 2級 | 3級 | ||||||
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受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | |
152回 | 6,788 | 575 | 8.5 | 41,995 | 10,666 | 25.4 | 72,435 | 40,624 | 56.1 |
151回 | – | – | – | 47,776 | 6,297 | 12.7 | 80,360 | 44,302 | 55.1 |
150回 | 7,588 | 680 | 9.0 | 49,516 | 7,276 | 14.7 | 88,774 | 38,884 | 43.8 |
149回 | 7,501 | 1,007 | 13.4 | 38,352 | 5,964 | 15.6 | 79,421 | 35,189 | 44.3 |
148回 | – | – | – | 48,533 | 14,384 | 29.6 | 78,243 | 38,246 | 48.9 |
※148回~150回は2018年2月・6月11月、151回~152回は2019年。受験者数は、受付数ではなく実際の受験者数。
2.独学受験が不利な理由とは?
簿記試験では、実務経験者以外は独学での合格が難しいと言われています。これは、簿記の実務性の高さにその一因があります。画一的な知識を問う資格試験に比べると、簿記試験の内容は、即戦力を養うための実務的な知識とその応用性が求められます。設例にしたがって仕訳をし、決められた時間内で正確な数値を導き出さなければならない簿記は、短時間で正確な答えを導き出す学習方法を独力で考え出すことが困難だからです。
幅広い知識と迅速な計算能力が要求される簿記試験においては、正確かつ広範な知識を効率よく修得し、その知識で難問を正答に導くための学習が重要になります。そのため、独学では限界があるので、効率的な学習体系が整備されており、適時に質問に答えることができる資格スクール等の利用が不可欠となります。
独学での合格を困難にするもう一つの要素は、試験の出題区分や範囲に変更が加えられる点です。最近では、日商簿記の全レベルの出題範囲が2016〜2019年の間で変更されています。特に2018年度までに2級の内容が大きく変わり、2019年度に3級の出題範囲が大幅に変更されています。
1級から2級に移行したものや、2級から3級に移行したものを含め、2020年度の試験は、この変更が全面的に反映された内容となるため、独学の場合、過去問への対応を含めた学習面全体でかなり不利になることが予想されます。
3.2020年度の簿記試験のポイント・対策
簿記試験の対策では1級から2級に移行してきた部分にフォーカスすることで学習効率が上がるため、その主な内容と学習ポイントを確認するとともに、最適な受験対策を考えることが重要です。
3-1.2級簿記試験のポイント
2016年以降、2級の出題範囲に加えられた内容は以下のとおりです。
変更点 | 主な内容 |
---|---|
課税所得の算定方法 | 課税所得の算定プロセスは、税法の知識が必要となるため2級での出題がなかった分野ですが、税効果会計や圧縮記帳など実務上適用されている会計手続への理解を深めることを目的に、出題範囲に加えられました。 |
圧縮記帳(一部のみ) | 国庫補助金を受け取った場合などの法人税法上の「課税の繰り延べ」処理で、実務上は広く普及していることから、部分的に2級に加えられました。 |
リース取引の借り手側の会計処理 | 1級の出題範囲でしたが、実務上、リース取引を用いた設備投資は増加しており、業種や企業規模を問わず一般化していることから、2級に加えられました。 |
外貨建て営業取引および売上債権・債務 | 1級の出題範囲でしたが、大企業のみならず中小企業においても、原材料の調達や商品仕入れをはじめ、マーケットを海外に求めるなど、企業活動のグローバル化が急速に進展していることを踏まえ、2級に加えられました。 |
連結会計 | 1級の出題範囲でしたが、連結重視のディスクロージャー制度が定着し、税法においても企業集団を対象とした制度が導入されており、実務上の対応を想定して2級に加えられました。 |
クレジット売掛金 | これまで日商簿記検定では出題されてきませんでしたが、クレジットカードの普及に対応して試験範囲に加えられました。 |
電子記録債権 | インターネットを用いた新しいタイプの債権で、一旦、1級の出題範囲に加えられましたが、近年は、取引の利便性の高さから手形に代わる決済手段として急速に普及しているため、2級以上での出題となりました。 |
ソフトウエア | 1級の出題範囲でしたが、ITの普及によって多くの企業がソフトウエアを資産計上するようになってきたことを踏まえ、範囲を限定して2級に加えられました。 |
サービス業を営む企業の会計処理 | サービス業を営む企業の急激な増加に対応し、商品売買業以外の事業を営む企業を対象とした会計処理に関する問題が加えられることになりました。 |
貸倒引当金の個別評価 | 貸倒引当金については、従来、貸倒実績率に基づく一括評価に関する出題に限られていましたが、実務上、債権の個別評価が広く普及していることに対応し、2級の出題範囲に加えられました。 |
株主資本の計数変動 | 資本準備金、利益準備金、任意積立金については1級の出題範囲とされてきましたが、複雑な計算を伴うもの以外という条件付きで2級の出題範囲に加えられました。 |
3-2.おすすめの対策方法
2級試験の出題範囲は、どれも複数の要素が絡む会計手法であり、単なる知識の積み上げだけでは対応できないレベルと言えます。また、貸倒引当金の個別評価など、いわゆる「見積会計」の分野にも足を踏み入れることになるため、従来の3級の学習の延長ぐらいに考えていると挫折する可能性もあるでしょう。
加えて、2級では工業簿記と原価計算の学習が加わりますので、商業簿記の学習の効率化が求められます。また、試験範囲改訂の影響で、過去問の学習で混乱してしまうことも考えられるので、これらの事情を総合的に勘案した学習方法としては、資格スクールなどの活用がおすすめです。
資格スクール等では、プロの講師陣が試験傾向を徹底的に分析しているため、改訂内容に合わせてピンポイントで出題範囲を予測することができます。また、チューターによる定期的なカウンセリングや試験日までの丁寧なスケジュール管理といった受験生をバックアップする体制も整っています。
費用はかかりますが、独学で試験に臨むよりも余裕を持った準備をできるのが資格スクールの大きなメリットです。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。日商簿記2級を目指す方にとっては、出題範囲改訂による影響は避けられないところですが、資格スクールを利用することで、学習方法そのものが安定します。テキストや問題集の選定などに余計な気を遣わず、学習に専念できる環境を作ることが重要です。2級試験を控えている方は、この記事を参考に、効率良く合格を目指せる勉強方法を検討してみてください。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄の簿記講座は、初学者でも無理なく着実に簿記資格試験の合格力を身につけられるカリキュラムになっており、学習計画はキャリアナビゲーターがサポートしてくれるので、安心して学習に集中することができます。
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