簿記1級は就職や転職市場において高く評価される資格の一つです。しかし、その試験範囲は簿記2級と比べても圧倒的に広く、難易度も相当上がるため、合格するのが非常に難しい検定試験となっています。そのため、簿記1級の合格を目指す場合は2級との違いを正確に把握し、効率的な勉強方法を確立することが重要です。
今回は、簿記1級と2級の違いを明確にし、1級に合格するためには練習問題の活用が重要な理由なども併せて解説します。簿記1級の受験を考えている方は参考にしてみてください。
1.簿記1級と簿記2級の比較
日商簿記検定は1級、2級、3級、初級の4つにレベル分けされて実施されています。中でも、簿記1級で求められる基準や出題範囲、合格率などは他の級と比べて大きく異なるため、難易度は格段に上がります。まずは、これらの違いについて1級と2級を比較しながら詳しく確認してみましょう。
1-1.簿記1級のレベル
簿記1級は大規模な株式会社などの会計処理を滞りなくできるレベルが求められており、受験者の10%前後しか合格できない難関試験です。
商工会議所によれば、「極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められる」レベルです。
簿記1級の出題範囲
簿記1級では商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4科目が出題範囲となっており、「商業簿記と会計学」「工業簿記と原価計算」の2つの試験に分けて実施されています。
簿記1級の合格率
簿記1級は毎回10%前後しか合格できない難関試験です。以下の表は過去6回分の簿記1級の受験者や合格率をまとめたものです。
簿記1級の合格率
回 | 受験者数(名) | 実受験者数(名) | 合格者数(名) | 合格率(%) |
---|---|---|---|---|
153(2019.11.17) | 9,481 | 7,520 | 735 | 9.8 |
152(2019.6.9) | 8,438 | 6,788 | 575 | 8.5 |
150(2018.11.18) | 9,852 | 7,588 | 680 | 9.0 |
149(2018.6.10) | 9,429 | 7,501 | 1,007 | 13.4 |
147(2017.11.19) | 10,675 | 8,286 | 487 | 5.9 |
146(2017.6.11) | 9,064 | 7,103 | 626 | 8.8 |
(参照:商工会議所)
第147回の試験は合格率が5.9%と低くなっていましたが、平均的には受験した人のうち10%前後しか合格できない試験となっています。
簿記1級の採点方式
簿記検定は商工会議所から具体的な配点や採点方法が発表されておらず、1級~3級については級ごとの「出題の意図・講評」のみの発表です。そのため、簿記の講義を開講している資格スクールなどでは上位の一定割合だけを合格させる傾斜配点による採点方式が採用されていると言われています。
なお、配点については非公表ですが簿記1級の合格基準は70%以上、かつ各科目の得点が40%以上と公表されているため、バランスよく各科目で得点できることも重要です。
1-2.簿記2級のレベル
簿記2級では中規模の株式会社の経理処理ができるレベルを求められており、1級と比べると易しいレベルの試験となっています。
商工会議所からは「高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。」が2級の基準として示されています。
簿記2級の出題範囲
簿記2級は商業簿記と工業簿記(原価計算を含む)が出題範囲です。工業簿記については管理会計などで役立てることのできる基礎的な知識が問われます。
簿記2級の合格率
簿記2級の合格率は各回でバラツキがあるものの、概ね受験した人の約15~30%が合格できる試験となっています。下表は簿記2級の過去6回分の受験者や合格率をまとめたものです。
回 | 受験者数(名) | 実受験者数(名) | 合格者数(名) | 合格率(%) |
---|---|---|---|---|
154(2020.2.23) | 63,981 | 46,939 | 13,409 | 28.6 |
153(2019.11.17) | 62,206 | 48,744 | 13,195 | 27.1 |
152(2019.6.9) | 55,702 | 41,995 | 10,666 | 25.4 |
151(2019.2.24) | 66,729 | 49,776 | 6,297 | 12.7 |
150(2018.11.18) | 64,838 | 49,516 | 7,276 | 14.7 |
149(2018.6.10) | 52,694 | 38,352 | 5,964 | 15.6 |
(参照:商工会議所)
表には載っていませんが、2017年度の第146回(47.5%)や2015年度の第141回(11.8%)のように受験する回によって合格率が大きく変動する試験です。平均すると3割近くの人が合格できる難易度となっていますので、しっかりと対策をすることが重要です。
簿記2級の採点方式
簿記2級も1級と同様に配点などは公表されていません。商工会議所の公表によると70%以上が合格ラインです。
1-3.簿記1級と2級の比較
こちらでは簿記1級と2級について、比較しながらそれぞれの違いを確認してみましょう。
求められるレベルの違い
簿記1級は上場企業などの大企業で求められるレベルの会計処理が必要とされており、中規模企業の会計処理を学習する簿記2級よりも知識レベルのハードルがかなり高く設定されています。
出題範囲の違い
基本的に、簿記2級の商業簿記では計算問題のみが出題されていますが、1級では会計学も出題範囲に加わるため記述式の理論問題の対策なども必要です。また、工業簿記や原価計算についても1級では広範囲に及ぶ高度な知識が求められる出題範囲となっているため、基礎的な知識に限定されている2級よりも学習範囲が広くなります。
難易度や合格率の違い
1級の合格率10%前後に対して、2級は約15~30%となります。なお、簿記1級と2級は出題範囲が大きく異なるため、合格率以上の難易度の開きがある点には注意が必要です。簿記1級に合格すると税理士試験の受験資格を得られることからもレベルの高さが分かります。
また、簿記2級の試験は年3回実施されますが、1級は年に2回のみとなります。この受験機会の少なさも簿記1級の難易度を押し上げる要因の一つとなっています。
採点方式の違い
正答率の高い問題に多くの点数が割り振られる傾斜配点では、配点の高い基礎的な問題などを間違えると大きな痛手となりかねません。相対試験であることを考慮すると合格率の低い試験ほどより難易度が高くなる仕組みのため、これも1級の難易度が高い理由となっています。
2.簿記1級合格のためには練習問題を活用しよう
簿記1級は非常に難易度の高い試験です。そこで、効率的な合格を目指すためには、過去問などを含めた練習問題の活用が重要なポイントになってきます。
2-1.出題形式に慣れることができる
練習問題を解くことで過去に本試験で出題された問題形式などに慣れることができます。簿記1級の試験は問題のボリュームも圧倒的に多いため、あらかじめ回答形式などを把握して試験に臨むことで解答時間の短縮につなげることができるのがメリットの一つです。
2-2.知識の定着や解答テクニックを身につけられる
練習問題を数多く解くことで知識がしっかりと定着したり、解答テクニックが身についたりします。最初のうちは易しい練習問題から順番にこなしていき、最終的に過去問や模擬試験のレベルまで練習問題を解くことによって本試験に必要なレベルを肌で感じることもできます。
2-3.圧倒的なボリュームをこなすスピードが身に付く
簿記1級は問題レベルが高いだけでなく、問題量も圧倒的です。そこで、日頃から練習問題を活用することで、解答スピードを速くする必要があります。特に、本試験では膨大な計算量が求められますが、電卓を使用した計算速度は練習を積むことで、速くすることができます。もちろん個人差はあるものの、日頃から電卓を使用した問題演習を行うことは重要な試験対策の一つです。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は簿記1級と2級の違いについて詳しく解説しました。簿記1級は2級と比べても圧倒的に難易度の高い試験となっているので、2級試験の単なる延長線上であると捉えることは禁物です。練習問題を活用するなど効率的な試験対策も求められる試験であり、場合によっては資格スクールの活用も検討するのがおすすめです。
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