新型コロナウィルスの影響により、全国のテストセンターで日商簿記検定試験を受験する「ネット試験方式」の導入が決定しました。ネット試験方式とは指定の会場でコンピューターを使って実施されるCBT方式であり、試験会場や日時の詳細は今後発表される予定です。
そこで今回は、日商簿記検定試験の2級・3級について、ネット試験方式が始まることになった背景、ネット試験の概要と注意点を解説します。2級・3級を受験予定の方は参考にしてみてください。
1.日商簿記検定試験2級・3級について
日商簿記検定試験とは、日本商工会議所と各地の商工会議所が実施をする簿記の資格で、「日商簿記」または単に「簿記」とも呼ばれています。日商簿記は日本国内における簿記の代表的な資格試験であり、就職や転職時にも高く評価してもらえる実用性の高いビジネス資格の一つです。実際に経理職の中には、日商簿記2級あるいは3級を必須要件とする求人もあります。
日商簿記3級は日商簿記試験の中では初級レベルに位置付けられる資格で、この3級に合格すると社会人に最低限必要な会計知識を身につけていることを証明できます。3級の試験範囲は、基礎的な商業簿記と小規模企業の実務を含む会計処理、そして経理関連の書類の適切な処理方法です。そのため、特に中小企業で経理担当者に3級程度の知識を求めるケースが多くなっています。
一方、2級は中級程度の難易度として位置付けられており、大企業の経理部門では必須としている会社もあります。2級試験では、商業簿記と原価計算を含む工業簿記を習得し、経営管理上における貸借対照表や損益計算書をはじめとした財務諸表を読み解くことができるレベルが求められます。
日商簿記2級・3級を受験する方法は、最寄りの商工会議所または試験施行機関に電話するか、またはインターネットにより申し込むことが可能です(※試験会場や試験日の詳細は各地域を管轄している各商工会議所に問い合わせることで確認することができます)。
試験方式は、各商工会議所単位で同一会場・同一日時にて行われる統一試験方式となります。原則として2月、6月、11月の3回実施されますが、2020年6月に実施予定だった第155回試験は、新型コロナウィルスの影響により史上初の中止となりました。
2.ネット試験方式開始の背景
日商簿記は、今年度は2020年11月と2021年2月の実施を予定していますが、コロナ禍が収束していない現状で通常通り実施するかどうかは不確定です。(11月試験は通常通り実施されることが11月4日に決定しました。)また、試験会場の確保や試験会場の新型コロナウィルス対策によって、従来通りの統一試験方式では希望者全員に滞りなく受験する機会を与えることが困難になることも予想されています。
現在、日本や世界では新たな生活様式である「ニューノーマル」への適応が進められています。ニューノーマルとはインターネットを中心とした社会活動のIT化や密状態の緩和への移行であり、企業の中には、リモートワークを全社的に本格的に導入する会社もあれば、地方への拠点移動を公表したところもあり、日商簿記2級・3級の受験方法においてもインターネットを活用した「ネット試験方式」を導入することが、2020年9月、日本商工会議所より正式にアナウンスされました。
統一試験方式には、もともと試験実施日が仕事や用事などで都合が悪く受験できない人もいるなどの課題もありました。しかし、このネット試験方式によってそれぞれの学習の進度に合わせて、より柔軟に、より高い利便性で試験を受験する機会の提供が期待できます。
これまでも日商簿記では、「簿記初級」や「原価計算初級」といった試験をネット試験方式でも行っていたため、日商簿記においてネット試験は初めての試みという訳ではなく、既存の枠組みを拡大する動きとなります。2級・3級の初のネット試験は2020年12月中に実施される予定です。
3.ネット試験方式の概要と注意点
日商簿記2・3級のネット試験の申込受付開始は11月下旬を予定しており、施行開始は2020年12月中となっています。最新情報は商工会議所の検定試験ホームページで随時発表される予定です。
ネット試験は、商工会議所が認定した全国100箇所に設置された「テストセンター」を受験会場として「CBT方式」によって行われることになります。CBT(Computer Based Testing)方式とは、指定の会場で指定のコンピューターで行われる試験方式で、会場の詳細な場所や数は今後明らかになる予定です。
なお、ネット試験という名称にはなっていますが、自宅での受験はできません。2020年11月5日現在、全国各地で月間2万人程度の受験を想定して会場の準備が進んでおり、受験会場となるテストセンターは今後上述の検定試験ホームページで公開予定となっています。
以下では、2020年11月現在公開されている日商簿記2級・3級のネット試験方式の情報を項目ごとにまとめます。
3-1.試験会場
日本商工会議者が認定した全国100箇所のテストセンターとなります。
3-2.受験申込方法
テストセンターの全国統一申込サイトから、受験希望日時、受験希望会場、受験者情報等を選択して行います。試験は申込時に選択をしたテストセンターで実施され、テストセンターが定める日時となります。
受験料は2級4,720円、3級2,850円となります。受験料は統一試験方式と同額であり、クレジットカードまたはコンビニ払いにより決済することが可能です。
3-3.試験形式
試験形式は、受験者ごとに割り当てられたコンピューターに、それぞれ異なる問題が配信される形となります。試験会場では計算用紙1枚が配布され、試験終了後にその計算用紙は回収されます。採点はシステムにより自動採点が行われます。合格者にはデジタル合格証が即日交付される予定です。
3-4.試験時間
2級の試験時間は90分、3級は60分となります。現行の統一試験方式では2級・3級ともに120分となっているので、ネット試験方式と統一試験方式で試験時間が異なる点に注意が必要です。
3-5.出題範囲
現行の2級・3級の出題区分と同じです。出題形式は多少の変更を予定しており、今後、検定試験ホームページにてサンプル問題が公開される予定です。
なお、日本商工会議所はネット試験を実際に体験できる「ネット試験体験会」を案内していますが、簿記2級と3級の体験受験は実施していないので注意しましょう。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は日商簿記2級・3級のネット試験の概要について解説しました。日本商工会議所は2級・3級で初となるネット試験の導入を進めており、全国100箇所のテストセンターでパソコンを使用した試験が実施される予定です。
出題範囲は統一試験方式と同じですが、試験時間は短くなるため、試験対策の方法も変わることが想定されます。サンプル問題が検定ホームページで公表される予定なので、試験対策に活用しましょう。その他の詳細な情報も随時更新される予定なので、受験を考えている方は商工会議所の検定試験ホームページのチェックを欠かさないことが大切です。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、簿記の勉強が初めての方でも合格に必要な知識を身につけられるように、独自のテキストとカリキュラムを組んでいます。
試験範囲は既存の統一試験方式と変わらないので、ネット試験の対策も講じる猶予を持つことができるよう、できるだけ早く試験対策を始め、試験範囲の学習を進めるようにしましょう。
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