資産運用の必要性が高まる中、金融資産や不動産を扱う資格の注目度も高まっています。こうした資格の中でも、特に人気が高いのがFPと宅建士ですが、この両者はどんな特徴があり、どちらがおすすめなのでしょうか。
今回は転職やスキルアップのために資格取得を検討されている方のために、FPと宅建士の取得メリットや、それぞれの試験の難易度などを紹介するので、参考にしてみてください。
1.FPとは?
FPとは「ファイナンシャルプランナー」の略で、資産設計に携わる専門家を意味する資格です。FP資格の概要や、資格取得者がどのように活用できるのかについて解説します。
1-1.FPの概要
FPはファイナンシャル(=資産)のプランナー(=設計士)という意味で、資産設計に専門的に携わる職業を指します。FP資格は、FP業務に携わる人の知識を保証するもので、資格取得者をFPと呼ぶこともあります。FP資格の保有者は、資産設計の専門家として、生活の中で必要なお金に関するさまざまな相談を受けることができます。
FP資格では国家資格であるFP技能士と、日本FP協会が認定するAFP、CFP資格が有名です。FP技能士は難易度によって1~3級に分かれています。また、日本FP協会の認定資格では、AFPの上位版がCFPです。
FP技能士の資格試験であるFP技能検定試験は、FP1級が年1回、FP2、3級は年3回行われています。試験は筆記と実技に分かれており、合格基準点は6割となります。
1-2.FP取得でできること
特定の資格がなければできない、いわゆる独占業務はFPにはありません。あくまで資産設計に関する知識や技能を有する専門家であることを証明する資格であるため、FPとして相談を受け、アドバイスを行うのにとどまります。
例えば、税務手続きを代行したり、保険商品の販売を行ったりする場合は、税理士や保険募集人などの資格が必要です。しかし、FPは様々なライフステージにおけるお金や制度、法律に関する知識があるため、多くの業界・業種でそのスキルを活用することができます。
1-3.FP取得者が活躍できる業界
FPが活躍できる業界は実に多様です。日本FP協会の資格認定会員を見ると、保険会社や証券会社、金融会社などで活躍する人が多くいます。また、一般の事業会社や不動産・住宅、官公庁など、幅広い分野で取得が進んでいる状況です。お金や、お金に関する制度、個人のライフステージなどへの深い理解は、商品開発や提案営業などの様々な業務で役立ちます。
2.宅建士とは?
宅建士とは「宅地建物取引士」の略で、宅地や建物の取引を行うことができる国家資格です。「宅建士」と略されることもあります。宅建資格の概要や、資格取得者がどのように活用できるのかについて解説します。
2-1.宅建士の概要
宅建士は以前まで宅地建物取引主任者という名称でしたが、2015年4月より「宅地建物取引士」に変更され、士業に加えられた国家資格となります。宅建士資格は、不動産に関する法律知識を有し、複雑な権利関係を有する宅地建物の取引が公正に行われるように支援する知識・技術を有することを証明できます。
不動産の売買や賃貸の契約は宅建士がいない場合は行うことができないため、宅建士の取得者は不動産業に従事することが多くあります。
宅建士試験は毎年1回、10月の第3日曜日に予定されています(※申し込みは7月)。試験は全50問で、4つの選択肢から正解を選ぶ筆記試験のみとなります。合格ラインは年度によって調整が行われるため変動しますが、7割程度の正答率が求められます。
2-2.宅建士取得でできること
宅建士を取得することによって、不動産に関する法律知識を身に付けることができます。不動産取引における「重要事項の説明」「重要事項説明書類への記名・押印」「契約書への記名・押印」は宅地建物取引士の独占業務です。
不動産の売買契約や賃貸契約において、買い手や借り手が必ず知っておかなければならない情報を「重要事項」といい、契約前にこの重要事項の説明を宅地建物取引士が行うことが法律で義務付けられています。
また、説明を行ったことを「重要事項説明書」に宅建士本人が記名・押印することも義務付けられています。さらに契約書の内容が法に抵触するものではないことを、契約書に記名・押印することで証明するのも、宅建取得者だけが行うことのできる仕事です。
2-3.宅建士取得者の活躍する業界
宅建士取得者は不動産業界で特にニーズが高いですが、建築業界や金融業界でも需要があります。不動産業界では取引に必須の存在であるだけでなく、従業員の5人に1人は宅建士資格保有者を雇用することが法律で義務づけられているため、事業の拡大にも欠かせません。
建築業界では自社で建てた物件の販売などで活躍しており、金融業界でも担保資産の評価や住宅ローンなど不動産関連分野でスキルが活かされています。
3.FPと宅建士を徹底比較
FPと宅建では、どちらの資格を取得した方が良いのでしょうか。資格取得によるメリットや、資格取得の難易度といった点から比較してみましょう。
3-1.取得のメリット
資格を取得することによるメリットが大きいのは、独占業務を有する宅建士です。士業として独立もしやすく、また不動産業界では宅建保有が条件になっている求人も多いので、就職にも強いというメリットがあります。資格取得によって資格手当をつける企業が多いのも特徴です。
しかし、宅建士は特定の業界でしかその専門性を発揮することができないというデメリットもあります。一般の事業会社で働いている人や、ビジネス上のスキルアップを目指したいという方にはFPのほうが有利な場合もあります。
宅建士は不動産関連の法律が身につき、FPはお金に関する制度や法律について強くなる資格です。自身で不動産を所有していたり、相続の予定があったり、不動産投資を行うような場合には宅建士の知識が役立つでしょう。
一方、FPは自分の資産設計にも役立ち、保険や金融商品を理解するためにも効果的です。こうした特徴からどちらも個人の資産形成にも役立つ資格として注目されています。
3-2.資格取得の難易度
資格取得の難易度では、同じ国家資格であるFP技能士と宅地建物取引士を比較した場合、宅建のほうが難易度は高いと言えます。
FP技能士は、合格ラインが6割の正答率となっており、合格率は3級で約70~80%、2級で30~40%です。宅建士は合格ラインが約7割の正答率、合格率が例年10~15%程度になっており、こうした数字からも宅建士の難易度の高さが伺えます。
合格に必要な学習時間を見ても、一般的にFP3級が30~150時間、FP2級が100~300時間、宅建士が200~400時間と言われているので、宅建士試験のほうが難しいと言えます。
宅建士は不動産関連の法律が中心になるため、暗記すべき内容も多く、用語も専門的なものが多くあります。
一方、FPは、お金に関する身近な用語や制度が多く、宅建士と比較すると取り組みやすいという特徴もあります。FP技能士試験は級が分かれており、年に3回まで挑戦できるという点からも、FPのほうが取得しやすいと言えるでしょう。
4.ダブルライセンスのメリット
FPと宅建士の両方の資格を目指す方が増えています。両方の資格を取得することによって、不動産や金融資産について多角的な見方ができるようになるからです。
例えば、不動産を購入する場合、宅建士の知識からは法的なリスクの有無や価格の妥当性の判断をすることができる一方、FPの知識からは運用利回りやローンの返済計画、税金対策を検討することができます。その他にも、不動産会社の営業やFPとしての相談業務、金融機関の個人向けコンサルティングなど、幅広い分野で両方の知識が役立つでしょう。
プライベートでも、自分の資産形成や、周囲の友人や知人の相談に乗ってあげることができます。また、相続があった場合には、資格取得者であれば関係者からの信頼を集め、複雑な権利関係や相続資産についてまとめ、手続きをスムーズに進めることができるでしょう。
その他、独立開業する場合には国家資格を持っていることで対外的にも専門家としてのスキルを証明することができ、顧客獲得や資金調達にも役立ちます。コンサルティングや講演においても信頼性が高まって業務がスムーズになるなどのメリットは多くあります。
ダブルライセンスの取得は難しいと言われることもありますが、FPと宅建士は試験範囲が重なる科目もあるので、比較的取り組みやすい分野です。基礎知識があり、しっかり学習時間を確保できる人であれば、1年でFPと宅建士の資格を両方取得することも可能です。効率的な合格を目指す場合は、資格スクールや通信講座の利用も検討すると良いでしょう。
5.まとめ
FPと宅建士はどちらもビジネスやプライベートで役立ち、人気の高い資格です。どちらがおすすめかは、職業や活用方法によって変わりますが、不動産関係の仕事なら宅建士、幅広く役立つのはFPです。ダブルライセンスを目指す方は、取得しやすいFPから始めることを検討してみてください。
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