人気の国家資格である宅建士試験に合格した後は、所定の手続きを済ませた後でないと宅建士として正式に活動することはできません。特に、2年以上の実務経験が無い方や、試験合格後1年以内に宅建士の登録手続きを行っていない方は別途講習などを受ける必要があるため注意が必要です。
そこで、今回は宅建士試験の概要と、合格後の流れや必要書類・費用について詳しく解説します。すでに合格された方や、これから受験予定の方も参考にしてみてください。
1.宅建士試験とは
宅建士試験合格後の流れを確認する前に、これから宅建試験を受ける方のために宅建士試験の概要をおさらいします。宅建士試験は一般財団法人不動産適正取引推進機構が国土交通大臣指定のもと都道府県知事の委任を受けて実施している試験です。試験は原則として毎年10月の第3日曜日に実施され、12月の第1水曜日または11月の最終水曜日に合格者が発表されます。
試験の概要は以下の通りです。
1-1.受験資格
年齢や性別、学歴等の制約は無く誰でも受験できます。
1-2.試験の方法
4肢択一式の問題が50問出題されるマークシート方式の試験で試験時間は120分間です。
1-3.試験範囲
宅地建物取引業に関する実用的な知識を有しているかを判定するため、宅建業法施行規則という法律で試験範囲が定められています。具体的には、宅建業法や民法を中心とした法律の知識や不動産に関わる税金、不動産価格の評定などが試験範囲です。
1-4.試験の合格基準
宅建士試験は相対評価方式によって合格点が決められており、毎年50問中35問前後が合格のボーダーラインとなります。合格率は例年15%前後で推移しており、宅建士試験として行われるようになった平成27年以降(平成26年以前は宅地建物取引主任者試験)では、最も合格率が高かった令和元年で17.0%、最も低かった平成27年および28年で15.4%となります。
試験に合格した場合は、以下のいずれかの要件に該当する方は、宅建士として登録することができます。
- 宅地建物取引業の実務(一般管理部門は除く)の経験が2年以上ある者
- 国土交通大臣の登録を受けた宅地又は建物の取引に関する実務についての講習を修了した者
- 国、地方公共団体又はこれらの出資により設立された法人において宅地又は建物の取得又は処分の業務に従事した期間が通算して2年以上である者
この条件の中で3.に該当する方は比較的少ないため、基本的には1.の2年間の実務経験がない場合は、2.の講習を修了して宅建士の登録をする方法が一般的です。
2.宅建士試験合格後の流れ
宅建士試験に合格した後は、受験地の都道府県において宅地建物取引士資格登録の手続きが必要です。この登録手続きが完了した後も宅地建物取引士証の交付申請手続きが必要となり、宅地建物取引士証の交付を受けてはじめて宅建士としての業務が行えるようになります。
さらに、2年の実務経験がある場合とない場合、試験合格後1年以内に交付申請手続きを行っているかどうかで手続きが異なる点にも注意が必要です。まずは、以下の図で合格後の流れを確認してみましょう。
試験合格後、実務経験が2年未満の方は「宅建士登録実務講習」を受講する必要があります。「宅建士登録実務講習」は宅建士試験の合格者を対象に行われる実務講習で、国土交通大臣の登録を受けた機関で実施される講習です。実施機関の一覧は国土交通省のホームページで確認することができます。
また、宅地建物取引士資格登録手続きが完了した後は、宅地建物取引士証の交付申請手続きを行わなければなりませんが、試験合格後1年を超えている方は「法定講習」の受講が必要になります。
「法定講習」とは、都道府県知事の指定を受けた機関が実施する宅建士証の更新などを行う方が受講する講習ですが、宅建士試験合格後1年を超えて交付申請を行う場合も必要になります。
上記の「宅建士登録実務講習」や「法定講習」などの手続きを含めると、合格後の流れは大きく以下の4つのケースに分かれます。
1.実務経験2年以上・合格後1年以内の方 | 「宅建士登録実務講習」や「法定講習」の受講が不要になるため、次の2つの手続きが必要です。 | 1.宅地建物取引士資格登録手続き |
2.宅地建物取引士証の交付申請手続き | ||
2.実務経験2年以上・合格後1年超の方 | 合格後1年超経過していることから「法定講習」の受講が必要なため、次の3つの手続きが必要です。 | 1.宅地建物取引士資格登録手続き |
2.「法定講習」の受講 | ||
3.宅地建物取引士証の交付申請手続き | ||
3.実務経験2年未満・合格後1年以内の方 | 宅建士として登録するための2年間の実務経験が足りていないため、次の3つの手続きが必要です。 | 1.「宅建士登録実務講習」の受講 |
2.宅地建物取引士資格登録手続き | ||
3.宅地建物取引士証の交付申請手続き | ||
4.実務経験2年未満・合格後1年超の方 | 「宅建士登録実務講習」と「法定講習」の両方を受講するため、次の4つの手続きが必要です。 | 1.「宅建士登録実務講習」の受講 |
2.宅地建物取引士資格登録手続き | ||
3.「法定講習」の受講 | ||
4.宅地建物取引士証の交付申請手続き |
基本的に、試験合格後は上記1~4のいずれかに従って手続きを行うことで宅建士の登録は完了です。
3.宅建士の登録に必要な書類と費用とは?
「宅建士登録実務講習」「宅地建物取引士資格登録手続き」「法定講習」「宅地建物取引士証の交付申請手続き」で必要になる各書類や費用は、以下の通りです。
3-1.「宅建士登録実務講習」
「宅建士登録実務講習」では、申し込みの際に宅建試験の合格証書が必要になります。講習の費用は実施機関によって異なりますが、概ね2万円前後が相場です。
3-2.宅地建物取引士資格登録手続き
宅地建物取引士資格の登録を行うためには、試験に合格した都道府県で手続きを行う必要があります。例えば東京都で登録手続きを行う場合、必要な書類や費用は以下の通りです。
登録申請書 | 必要事項を記載の上、記名・押印したもの |
誓約書 | 宅建士の欠格事由に該当していない旨の誓約書で記名・押印したもの |
身分証明書 | 成年被後見人・被保佐人・破産者でないことを証明する書類 |
登記されていないことの証明書 | 成年被後見人や被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書 |
住民票 | 申請者本人のみ記載されたもの |
合格証書 | 合格証書のコピーを提出。手続きの際は提示用の原本が必要となる |
顔写真 | 縦3cm、横2.4cmの6か月以内に撮影したカラー写真 |
登録資格を証する書面 | 実務経験が2年以上ある方は実務経験証明書、登録実務講習を受けた方は講習の修了証 |
登録手数料 | 現金で37,000円 |
登録申請書や誓約書などの様式は、各都道府県のホームページからダウンロードすることができます。また、持参して登録手続きを行う際にはシャチハタ以外の印鑑なども必要となるため、手続きを行う都道府県のホームページで事前に必要書類などについて再度確認しておきましょう。
3-3.「法定講習」
「法定講習」は都道府県が指定した機関で受講することができ、法定講習受講申込書の提出と受講料12,000円が必要になります。試験合格後1年を超えて「法定講習」を受講する場合は、交付申請手続きと併せて申し込むことが一般的です。
3-4.宅地建物取引士証の交付申請手続き
宅地建物取引士証の交付申請手続きには、以下の書類と費用が必要になります。
宅建取引士証交付申請書 | 必要事項を記載の上、記名・押印したもの |
都道府県からの登録完了通知 | 登録手続き完了後に都道府県から送付されるハガキ等 |
証明写真 | 縦3cm、横2.4cmの6か月以内に撮影したカラー写真2枚(交付申請書に添付するものと取引士証に使用するもの) |
取引士証交付申請手数料 | 現金で4,500円 |
これらの手続きを全て終えるには約1か月かかる場合もあります。必要な書類などは登録する都道府県によって多少異なる可能性もあるため、ホームページなどで必ず確認してから手続きを行ってください。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は宅建士試験合格後の流れを説明しました。宅建士試験は自己啓発やキャリアアップのために受験される方も多く、実際に宅建士として業務を行わない場合、登録申請等の手続きは不要となります。
ただし、宅建士として業務にあたる場合には事前にこれらの手続きを完了させておく必要があり、重要事項の説明などでは宅建取引士証の提示も必要です。試験合格後は上記の流れを参考に必要に応じて登録の手続きを行ってください。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、改正民法にも対応した宅建士講座をご用意しています。初学者でも無理なく着実に合格力をつけていくことができるカリキュラムになっていますので、気になった方は、ぜひ一度資料請求や無料体験をお申し込みください。
【詳細ページ】資格スクール大栄の宅建士講座の詳細を見る
【関連ページ】資格スクール大栄の宅建士講座まとめ