就職や転職に有利な資格として名前が挙がることの多い「宅建士」は、不動産関連の資格として知られていますが、その詳細については知らないという人も少なくありません。宅建士は宅地建物取引士の略称で、不動産取引業務を行う際には欠かせない資格となっています。
そこで、今回は宅建について詳しく知りたい人向けに、宅建の資格で何ができるのか、宅建士が活躍できる業界や、宅建士の仕事内容などについて詳しく解説するので、参考にしてみてください。
1.宅建士とは
国家資格である「宅地建物取引士」は、不動産取引の専門家であることを証明するもので、宅建士は不動産関係の法律や、土地・建物についての専門的知識をもって公平な取引を支援します。不動産契約における重要事項の説明や、重要事項説明書への記名・押印、契約書への記名・押印は宅建士の独占業務(=資格保有者以外は行うことができない業務)です。
1-1.宅建士登録者の人数
不動産は非常に高価なものを取引し、また売り手と買い手の間の情報量に大きな差があるため、消費者保護の観点から契約行為を中立的な立場で監視し保証する宅建士資格が作られるようになりました。不動産適正取引推進機構によると、令和3年度末の宅建士登録者数は全国で約112万人となっています。
1-2.宅建士資格を取得するには
宅建士資格の取得のためには、まず宅地建物取引士の国家試験を受験する必要があります。受験資格には年齢や学歴の制限がなく、業界未経験者や学生でも受験可能です。受験は毎年1回、7月に申し込みが始まり、10月に試験が行われます。コロナ禍の影響により、2020年度(令和2年度)、2021年度(令和3年度)については、10月と12月の2度実施されました。合格率は例年15~20%程度と難易度の高い国家資格です。
試験合格後は、都道府県の県知事に申請し、所定の講習を受けて登録を行い、宅地建物取引士証の交付を受けることで正式な宅建士となり、業務を行うことができます。そのため、宅建士を必要とする不動産業などでは、事務所の見えるところに宅建士の登録証が掲示されています。
宅建士資格試験の受験には特に制限はありませんが、都道府県での登録の段階で2年以上の不動産実務に従事したことを証明する書類が必要となります。登録は一度行えば再度申請する必要はありませんが、宅建士資格は5年に1度更新を行わなければなりません。
2.宅建士でできる仕事内容
土地や建物といった不動産を扱う宅建士は、需要の安定した仕事といわれます。宅建取得後はどのような仕事ができるのかをご紹介します。
- 重要事項の説明と説明書への押印
- 契約書への記名・押印
- その他
2-1.重要事項の説明と説明書への押印
不動産の売買・貸借においては、契約の際に必ず不動産の買い手や借り手が知らなければならない情報があり、これを「重要事項」といいます。
不動産には間取りや築年数といった基本的な情報から、経年劣化による痛み具合などの販売価格の低下につながる情報まで様々なものがあります。不動産の所有者がこれを隠蔽し不公正な取引が行われてしまう可能性もゼロではないため、専門家である宅建士が間に入って物件の重要事項を確認・説明する役割を担っています。
重要事項とは、売買代金(家賃)、支払い時期、登記申請の時期、私道の有無、電気・水道・ガスの設備状況、駐車場の有無、契約期間や契約の解除条件などです。重要事項の説明が行われない場合は正式な契約とはならず、各種トラブルが発生する可能性もあります。重要事項を説明し、説明を行った旨を重要事項説明書類に署名・押印できるのは宅建士のみと法律で決められています。
宅建業法では、不動産会社は従業員5人に対し1人の割合で宅建士を雇用することが義務付けられています。基本的に起業時や新店舗の開始時、不動産会社は宅建士がいなければ取引を行うことができないという決まりです。
2-2.契約書への記名・押印
不動産契約の際に、契約の内容を記した書面を確認することも宅建士の大切な仕事です。契約書面が法に適合していることを確認し、宅地建物取引士として記名・押印することで契約書の内容を保証します。
契約内容を確認し記名・押印することは、不動産の所有者や買い手(借り手)の権利や財産を守るためにも重要ですので、国がその知識を認定した宅建士にしか許可されていません。
重要事項の説明や契約書への記名・押印するなど不動産に関する主要な業務を担当することができるため、不動産会社では入社後の宅建士資格取得がほぼ必須といっても良い状況です。
2-3.その他
宅建士のみの仕事ではありませんが、不動産会社で不動産取引をしたい個人や企業の代わりに物件や取引相手を探したり、契約の支援を行ったりといった業務でも資格取得の際に得た知識が役立ちます。
そのほか、不動産や資産の活用方法についての相談を受けたり、相続の際の不動産の扱いについて相談を受けたりと、その法律と不動産の知識を活かし、さまざまな業務を行うことが可能です。専門家としての資格があることで顧客や社内の信頼感も高まり、スムーズに仕事ができるでしょう。
また、フリーランスとして契約に関する業務や専門知識を必要とする相談のみを行う宅建士もいます。介護や育児などのために、フルタイムで働くことが難しい立場の人でも、こうした働き方であれば短時間で働くことが可能です。体力的な差が仕事上の能力に直結しないため、宅建士資格を取得する女性も多くいます。
3.宅建士が活かせる仕事、業界
不動産の売買や賃貸の仲介を行う不動産会社では、宅建の資格取得者は特に重宝されます。仲介だけでなく、自社で不動産を保有し、管理や賃貸を行う事業者も増えているため、宅建士資格があることで働き口も多く、さらに資格手当も出ることがあります。
- 不動産業界
- 建築業界
- 金融業界
3-1.不動産業界
不動産の管理のための「管理業務主任者」資格も試験内容が似ているため取得しやすく、両方の資格を保有する人も少なくありません。営業から事務仕事、商品開発、物件管理など不動産業界のさまざまな場面で宅建士が活躍しています。
宅建士は不動産業界では店舗に無くてはならない存在として活躍が期待され、責任ある仕事を任されることになります。そのため、不動産会社で事務職として働いていた契約社員が、資格取得によって正社員になるケースもあります。宅建士取得者がさらに専門家として知見を積み、不動産鑑定士などの資格を取得して独立したり、不動産コンサルタントになったりして活躍することもあります。
3-2.建築業界
建築業界でも、法律や土地・建物について詳しい宅建士資格は役に立ちます。建築しようとしている建物が法律上問題ないかのリーガルチェックを行う立場としても活躍でき、自社建築物件の販売や賃貸のセールス部隊としても活躍が期待できます。建築業界でセールスを行う場合、自社物件は物件に関する情報が多いため提案がしやすいこともあります。宅建士ならではの視点から、物件の良さを引き出す提案もできるでしょう。
昨今の大型の不動産開発においては、技術的な観点だけでなく法的な安全性や資産運用・節税などの観点も求められるため、建築士の知識と宅建士の両方の知識があれば企画や提案の幅も広がります。建築や設計ができる専門家と組んで独立して活躍する方や、他の不動産関連の資格を取得して、不動産・建築に関するコンサルタントとして活動する方もいます。
3-3.金融業界
金融業界でも、不動産に関する知識がある宅建士は活躍しています。金融業では、融資の際に不動産を担保にすることが多いですが、宅建の知識があると担保価値の評価に役立ちます。銀行は不動産会社をグループ内に持つケースも多くなっているため、宅建士資格があればグループ内での出向などを通し、安定した職場環境でキャリアを形成することも可能です。
資産運用に積極的に取り組んでいる金融機関も増えており、宅建の知識がある方であれば、不動産ローンや不動産活用、資産運用についての考え方をアドバイスすることもできるでしょう。金融だけでなく不動産も扱える知識があれば、資産管理・資産運用のスペシャリストになれる可能性もあります。
銀行以外の金融機関や保険業などでも、不動産や法律に関する知識を有する宅建士は重宝されます。不動産がらみの融資案件は多く、専門知識が最初からある人材は即戦力として期待できます。また、同じ事業所に勤める従業員に対してそのノウハウを伝授するなど、良い影響が期待されるため、事業所ごとに宅建士資格の保有者を雇い入れる金融機関も少なくありません。
4.まとめ
宅建士資格は、不動産の専門家としての能力を示す証しであり、不動産業界はもちろん、建築業界や金融業界でも活躍が期待できます。さらに資格手当による収入増や、高待遇なポジションへの配置、キャリアアップなどの効果を期待できる人気資格です。しっかり学習すれば業界未経験からでも取得可能なので、効率的に合格を目指したい方は必要に応じて資格スクールを活用することも検討してみてください。
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