不動産を扱う仕事では、宅建士の資格取得を勧められることが多々あります。これは宅建士の資格を持つことによって、業務知識が身につき、信用を得られ、また業務で行えることが増えるからです。最近はその他の場面でも宅建士資格を有する人が増えてきており、活躍のフィールドも広がっています。
そこで今回は、宅建士の資格の特徴、仕事内容、年収について詳しくご紹介するので、関心のある方は参考にしてみてください。
1.宅建士とは?
不動産取引を行う事業所(宅地建物取引業者)では、最低1人の宅建士が在籍し、宅地建物取引主任者となることが必要です。このように宅建士(宅地建物取引士)は、不動産取引を行う上で必須の資格となっており、不動産業を中心に幅広い分野で活躍しています。
宅建士資格の主な特徴は以下の通りです。
1-1.不動産の専門家であることを示す国家資格
宅建士は、不動産取引にかかわる法律を熟知し、専門知識を使って公正な取引をサポートする国家資格者です。以前は「宅建物取引主任者」という名称でしたが、2016年から「宅地建物取引士」に変更されています。
個人と法人による不動産取引は、知識や情報量の差から一方に有利で、もう一方に不利な契約になるケースが多いため、宅建士には公正な契約をサポートするための倫理と知識を備えた資格者であることが求められています。
1-2.独占業務を有する「士業」
宅建士は、独占業務を有する資格です。宅建士の独占業務には不動産売買・賃貸の契約時の「重要事項説明」「契約書・重要事項説明書への記名押印」があります。無資格者はこれらの業務を行うことができないため、不動産取引は宅建士なしに行うことができません。
また、「士業」として宅建士を名乗り、名刺や経歴として記載できるのも宅建士のみとなります。同じ士業である弁護士や税理士などと同様に、高い専門性を有する資格となっています。
1-3.受験内容と難易度
宅建士資格は、毎年10月の第3日曜日に試験が実施されており、受験料は7,000円です。年齢・性別・学歴などによる受験資格の制限はなく、誰でも受験することができます。土地や建物の形質や構造、種類、権利や法律、税金などに関する問題が50問出題されています。
合否は、受験者数に応じて合格点を変化させる相対評価方式で判定されており、およそ7割前後の正解が求められます。
例年の合格率は、15~18%ほどで推移しており、直近の令和2年の合格率は17%となっています。士業の国家資格とあって難易度は高めです。
1-4.宅建士が活躍する主な業界
宅建士は、主に不動産の売買や賃貸、管理などを行う不動産業に従事しています。一方、金融機関やコンサルティング会社で資産の査定業務を行ったり、企業の総務担当者として活躍したりしている宅建士もいます。
このほか、仕事とは直接関係はなくとも、資産管理や相続に向けた勉強として宅建士資格を取得するケースもあります。
2.宅建士の平均年収
宅建士は難易度の高い資格で、それだけに平均的な年収も高めです。宅建士の平均年収の特徴について解説します。
2-1.平均年収は400~550万円
宅建士の平均年収について明確に示した統計はないものの、求人会社では宅建士資格を必要とする求人情報からおおよその平均年収を算出しています。
大手転職情報サイトのデータでは、400万円~500万円の幅での求人が多くなっており、実際に勤めてキャリアを重ねている(=昇給している)宅建士を含めれば、宅建士全体の平均年収はもう少し上がるため、平均年収は400~550万円程度になると予想されます。
令和元年の「民間給与実態統計調査」によれば、全国の給与所得者の平均給与は436万円となっていることから、平均よりもやや高めの年収と言えます。
2-2.宅建士の年収の特徴
宅建士は業務経験がなくとも資格取得ができるため、若くして取得する方も少なくありません。資格所有者の年齢に幅はありますが、基本的に年齢が高くなるほど年収も高くなります。
また、宅建士は土地や建物などの不動産取引に携わり、その手数料を主な収入源とします。手数料は取引金額が大きいほど大きくなるため、地価が高く、取引金額の大きくなる都市部ほど収入も高くなる傾向にあります。
宅建士は不動産取引が多く発生するほど活躍の場が増え、収入も増えていきます。逆に、取引が少ない場合には収入が伸び悩んでしまうことも少なくありません。そのため、同じ宅建士でも企業や地域で大きく年収や、その他の待遇には違いがあります。
3.宅建士の仕事内容
宅建士の主な仕事内容について、業務ごとにご紹介します。
3-1.不動産の営業、紹介、契約
宅建士の多くは不動産業に従事しています。不動産業においては、その知識や独占業務を活かして不動産の営業や紹介、契約を行っています。
営業や仲介などを担当する宅建士は、土地や建物について法律上の問題や、契約上のリスクになり得る点がないかを調べ、顧客に正確な情報の提供を行います。
また、専門家の見地から土地や建物を解説し、メリットとデメリットをしっかり伝えることで顧客の意志決定を促すことも大切な役割です。不動産の契約時には、重要事項証明書や契約書を顧客と一緒に読み合わせ、しっかりと契約内容を理解してもらった状態で契約を行います。
重要事項証明書や契約書には担当した宅建士の名前と印鑑が残るため、公正な取引の履行に責任を持ち、誠実に業務を遂行することが求められます。
3-2.不動産の査定
金融機関やコンサルティング会社では、株式の発行や上場準備、売却準備などのために、企業の価値を見積もることがあります。
また、金融機関ならローンなどの借り入れの担保として土地や建物を評価することもあります。この時、土地や建物について専門的な知識によって査定する必要があるため、宅建士や不動産鑑定士などの資格取得者が活躍する機会となっています。
土地や不動産の評価額の算出基準が適切か、また契約上の問題はないのか、抵当がどうなっているのかなどを詳しく調べ、必要に応じて情報を提供できるようにします。
3-3.不動産の管理
賃貸物件の管理会社や、物件オーナー、企業の総務など、土地や建物を管理する仕事もあります。普段の見回りや清掃、消耗品の交換などの業務だけでなく、知識を活かして未払い賃料の請求や住人間のトラブルの対応などを行うこともあります。
また、退去後の現状復帰やリノベーションなどについても、業者とのやりとりが発生するので、その際に不動産や法律知識が役立ちます。
4.宅建士はこんな人におすすめ!
宅建士は不動産だけでなく、その他の業界・業種で役立つ資格です。宅建士の資格や仕事に向いている人物・人柄は以下の通りです。
4-1.不動産が好きな人
宅建士に向いているのは、「不動産が好きな人」です。宅建士の学習や実務は、多くの専門用語が並ぶ文章に目を通す必要があります。土地や建物について興味や関心があり、その適切な取り扱いについて知りたいという知的好奇心のある人は宅建士向きです。
4-2.手に職をつけたい人
宅建士は、不動産業の事業所には必ず1人以上在籍する必要があります。そのため、事業拡大などで新規に事業所を作りたい場合に必須なので、必然的に事業所の管理職など重要な立場となることもあります。
また、不動産は不況に強いという性質があるため、将来の独立を視野に入れて、「手に職をつけたい」「専門知識を身に付けたい」という方にも向いています。
4-3.真面目できっちりしている人
宅建士は公正な不動産取引を目的とした資格であり、法に基づいて取引契約者の権利と財産を守ることが求められています。そのため、法令を正しく遵守する倫理観があり、その職務に対する誠実さが大切です。真面目できっちりと仕事ができる人には、顧客の重要な取引を任せることができるので向いています。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。宅建士(宅地建物取引士)は、公正な不動産取引を専門的な知識からサポートする専門家であることを示す国家資格です。不動産業を中心に様々なニーズがあり、活躍できるフィールドも広がっているので、毎年約20万人が取得を目指して受験しています。
試験の難易度は高いですが、平均以上の収入が期待でき、独占業務を有し独立も考えられる資格です。不動産分野で活躍したい方、専門知識を活かして独立・開業を目指したという方は、ぜひ取得を検討してみてください。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、宅建士資格の勉強が初めての方でも無理なく合格に必要な知識を身につけられるように、基礎力をしっかりと養えるテキスト・カリキュラム構成となっています。
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