行政書士とは、国民生活で必要になる様々な行政手続きのサポートなどをしてくれる「身近な街の法律家」です。福祉行政が重要視されている日本では様々な役割が期待されており、活躍のフィールドも広がっています。
この記事では、国民生活に欠かすことのできない行政書士の仕事内容や資格試験の内容、年収、メリットをご紹介します。キャリアアップや就職・転職のために資格取得を考えている方は、参考にしてみてください。
1 行政書士とは
行政書士は民間と行政を結ぶ行政手続きの専門家です。例えば、官公署に提出する許認可等の申請書類作成や、その申請を代わりに行う代理申請、遺産分割協議書や各種契約書などの権利義務に関する書類作成などの業務を行っています。
また、行政書士は依頼された書類作成内容に関するコンサルティングなども行っており、様々な行政手続きが必要になる日本では欠かすことのできない存在となっています。
行政書士は行政書士法という法律に基づく国家資格保有者なので、国家試験に合格後、日本行政書士会連合会に登録した者だけが行政書士として業務を行うことができます。
2 行政書士試験の内容
行政書士になるための登竜門である行政書士試験の内容を詳しく確認してみましょう。
2-1 日程と受験資格
行政書士試験は、例年11月の第2日曜日(令和3年度は11月14日 日曜日)に実施される年1回の国家資格試験です。毎年7月初旬頃に試験の詳細が公示され、申込期間は8月下旬頃までとなっています。
合格発表は翌年1月下旬頃に行われ、その後、日本行政書士会連合会に登録することで行政書士として活動できるようになります。
行政書士試験を受験するのに必要な条件は特にありません。年齢や性別、学歴、国籍などに関係なく、希望者は全員受験できる試験となっています。
2-2 試験内容
行政書士試験は5肢択一式、多肢選択式、40文字前後の記述式の3パターンで出題されます。試験内容は、「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関連する一般知識等」の2科目で、全60題300点満点の試験となっています。
「行政書士の業務に関し必要な法令等」は略して「法令等」とも呼ばれる科目で、憲法や行政法、民法、商法、基礎法学が主な出題範囲です。「法令等」は全60題中46題が出題される科目で、配点は300点満点中244点を占めます。
一方、「行政書士の業務に関連する一般知識等」は「一般知識」とも呼ばれる科目で、政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解などが主な出題範囲となっています。「一般知識」からは14題が出題され、全問5肢択一の出題形式となっています。
行政書士試験の合格基準は、得点率60%以上となっています。ただし、「法令等」の科目で50%(122点)以上、「一般知識」の科目で40%(24点)以上という足切りもあるため、それぞれの必要最低点をクリアした上で60%以上の得点を取らなければなりません。
2-3 難易度・合格率
行政書士試験における過去5年間の受験者数、合格者数、合格率は以下の通りです。
年度 | 受験申込者数(人) | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率 |
令和2年度 | 54,847 | 41,681 | 4,470 | 10.70% |
令和元年度 | 52,386 | 39,821 | 4,571 | 11.50% |
平成30年度 | 50,926 | 39,105 | 4,968 | 12.70% |
平成29年度 | 52,214 | 40,449 | 6,360 | 15.70% |
平成28年度 | 53,456 | 41,053 | 4,084 | 10.00% |
一般財団法人 行政書士試験研究センターより
受験者数は毎年4万人ほどで、合格者数は4~5千人ほどで推移しています。合格率は、平成29年度がやや高いものの、例年10%強と難関です。ただし、他の国家資格と合格率のみを単純に比較すると、3%前後の司法書士試験や7%前後の社労士試験よりも高く、15%前後の宅建士よりも低いという位置付けです。
そのため、学習スケジュールの確保や効率的な試験対策を行うことで、初めて受験する場合でも一発合格を狙える試験となっています。
3 行政書士の資格が必要な仕事
行政書士には、行政書士法で規定された独占業務があります。下記業務について他人の依頼により報酬を得て行えるのは行政書士のみです。
官公署に提出する書類の作成 | 建設業の許可申請や開発許可申請、農地転用の許可申請、風俗営業の許可申請、在留資格申請、自動車登録申請などの書類作成。 |
権利義務に関する書類の作成 | 売買契約書、賃貸借契約書、示談契約書、遺産分割協議書、法人や団体の議事録および会議資料、法人設立の必要書類などの作成。 |
事実証明に関する書類の作成 | 自動車登録事項証明書や交通事故調査報告書などの各種証明書、財務諸表や営業報告書などの会計書類の作成。 |
4 行政書士を取得するメリット
官公署へ提出する書類や手続きは年々複雑になっており、行政書士のニーズもそれに合わせて高まっています。そのため、企業内でも行政書士の存在は必要とされており、一般企業への就職や転職の際に有利になる点は行政書士を取得するメリットの一つです。
また、行政書士は独占業務である書類の作成や代理申請だけでなく、コンサルティング業務など幅広く行えるため、将来的な独立や開業も可能です。
このほか、宅建士や社労士、司法書士などの士業とは業務上関係する部分も多いため、他資格とのダブルライセンスで開業すると、活躍するフィールドをさらに広げることができます。
5 行政書士の年収
行政書士の平均年収は、300万円~600万円前後となります。ただし、行政書士には企業で安定した給与収入を得ている方や、独立開業の自営業として活躍している方もいるため、実際の年収には大きな差があります。
特に、独立開業している行政書士の場合、300万円前後から他の士業とのダブルライセンスで数千万円を得ているケースもあります。
行政書士は資格取得後の就職先や開業の仕方で大きく年収が変わる職業でもあるので、平均年収はあくまでも目安の一つとして捉えることが大切です。
6 行政書士はこんな人におすすめ
行政書士は独立開業を目指せるほか、宅建士や社労士、司法書士など他の資格とのダブルライセンスを考えている方にもおすすめです。
また、キャリアアップを図りたい時や、就職・転職を有利に進めたい場合でも行政書士資格は役立ちます。学習を通してさまざまな専門知識を身に付けられるため、企業の採用担当者からも法務に強いビジネスマンとして高く評価してもらえます。
さらに、学生時代に法律関係の勉強をしたことがある方や、資格試験などで同様の学習を経験した方が新たな資格を目指す場合もおすすめです。行政書士試験は法律関係の出題が多いため、過去に法律関係の学習経験があれば、未経験者の方と比べて試験勉強を有利に進めることも可能です。
7 まとめ
行政書士は独占業務がある上、行政手続きの複雑化などにより活躍のフィールドが広がっている資格です。そのため、就職・転職を有利に進めたい方や将来独立したい方などにもおすすめです。
合格率10%強なので難易度は高めですが、試験対策をしっかり行うことで計画的に合格を目指すことも可能なので、興味のある方は検討してみてください。
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