2020年4月1日、大幅に改正された民法が施行されました。宅建試験では民法に関連する科目からの出題が例年50問中14問を占めており、主要な試験科目である宅建業法(20問)に次ぐ出題数です。そのため、宅建試験でも民法改正の影響を大きく受けることが想定されており、2020年度以降の試験ではこれらの改正も踏まえた試験対策を行わなければなりません。
そこで今回は、民法改正が宅建試験に与える影響や、2020年度の宅建試験の概要、スケジュールなどについても詳しく解説するので、ご参考ください。
1.民法改正が宅建に与える影響は?
2020年4月の改正では、民法制定後の約120年間でほとんど見直しの行われることがなかった債権関係の法律(債権法)が大幅に改正されました。その結果、民法から多くの問題が出題される宅建試験においても、少なからず影響を受けることが懸念されています。
また、宅建試験では、試験が実施される年の4月1日時点で施行されている法律の規定が適用されます。そのため、2020年度に実施される10月試験が、改正後の民法が初めて出題される試験となります。
まずは、今回改正された民法について宅建試験にも関係する具体例を確認してみましょう。
1-1.消滅時効に関する見直し
権利を行使しないまま一定期間が経過した場合にその権利を消滅させる制度が時効です。改正前は飲食代金1年間、医師の診療報酬は3年間などと職業別の消滅時効が定められていましたが、これが廃止となり、原則10年に統一されました。
また、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間長期化や、時効の完成を阻止するための手段の見直しなども今回の改正内容に含まれます。
1-2.賃貸借契約に関するルールの見直し
賃貸借契約とは賃借人が賃貸人へ賃料を支払って物や不動産などを借り受ける契約で、賃貸借契約について以下のような見直しが行われました。
- 賃借物の修繕に関する要件の見直し
- 賃借人の原状回復義務および収去義務等の明確化
- 敷金に関するルールの明確化
改正前の民法では賃借人の原状回復義務や敷金に関するルールが定められていませんでしたが、条文として明文化されたことが今回の改正点です。これにより、通常損耗や経年変化による損傷などは賃借人に原状回復義務がないこと、敷金の名目で賃貸人が預かった金銭は賃貸借契約の終了後に返還する義務が生じることなどが明確になりました。
実際には200項目程度の改正が行われているため、上記の例はほんの一部に過ぎません。これらの改正によって過去問の法律上の解釈が変わるものも出てくるため、過去に宅建試験対策などで民法を勉強したことがある方は特に注意が必要です。
また、改正内容と併せて用語の変化なども的確に把握する必要があるため、独学で試験対策を行う場合は相当な労力と時間を要することが考えられます。必要に応じて資格スクールなどの対策講座を活用するなど、民法改正に対応するためにはポイントを押さえた効率的な対策が必要です。
2.宅建試験の概要
宅建試験は民法改正によって大きな影響を受けることが予想されています。こちらでは試験の概要や試験内容について改めて確認してみましょう。
2-1.宅建試験とは?
宅建試験とは宅地建物取引士資格試験のことで、一般財団法人不動産適正取引推進機構が実施している試験です。宅建試験は以下の要領で実施されています。
試験日程試験は原則年1回実施され、例年10月の第3日曜日に実施されています。
受験資格 | 年齢や性別、学歴等に関係なく誰でも受験可能です。 |
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受験申込 | 受験申込はインターネットと郵送のいずれかで行うことができます。例年、インターネットは7月中旬、郵送は7月末が申し込みの期限となっており、受験料は7,000円です。 |
試験の方法 | 4肢択一のマークシート方式で実施されます。全50問が出題され、試験時間は120分です。 |
合格基準 | 宅建試験は毎年相対評価によって合格が決まります。相対評価のため合格点は毎年変わりますが、例年50問中35問前後が合格のボーダーラインです。 |
合格率 | 宅建試験の合格率は毎年15%前後で推移しており、過去3年の合格率は、平成29年度(15.6%)、平成30年度(15.6%)、令和元年度(17.0%)となります。 |
2-2.試験の基準・内容
宅建試験は宅地建物取引業法施行規則により試験の内容が定められており、宅地建物取引業に関する実用的な知識を有しているかどうかが判定基準となります。同施行規則に定められている試験の内容は以下の通りです。
- 土地の形質、地積、地目および種別並びに建物の形質、構造および種別に関すること。
- 土地および建物についての権利および権利の変動に関する法令に関すること。
- 土地および建物についての法令上の制限に関すること。
- 宅地および建物についての税に関する法令に関すること。
- 宅地および建物の需給に関する法令および実務に関すること。
- 宅地および建物の価格の評定に関すること。
- 宅地建物取引業法および同法の関係法令に関すること。
上記の試験内容は①権利関係(民法等)、②宅建業法、③法令上の制限、④税金その他、という4つの科目に分けることができ、それぞれの科目の学習内容は以下の通りです。
権利関係(民法等)
権利関係とは、土地と建物の権利に関する権利関係が問われる科目で、民法を中心に借地借家法や区分所有法、不動産登記法などの知識が問われます。例年、権利関係からの出題は全50問中14問です。
宅建業法
宅建試験の最重要科目で例年20問が宅建業法の科目から出題されています。宅建業者や宅地建物取引士の仕事上のルールを定めた宅地建物取引業法が主な学習範囲です。新築住宅を引き渡す建設業者や、宅建業者に資力確保措置を義務付ける住宅瑕疵担保履行法なども出題されます。
法令上の制限
都市計画法や建築基準法、農地法、国土利用計画法、土地区画整理法などの街づくりに関する法令などが主な学習範囲です。例年、この科目からは8問出題されています。
税金その他
不動産の購入にかかる税金や不動産鑑定評価基準などの知識が問われる科目です。固定資産税や不動産取得税などの各種税法のほか、不当景品類および不当表示防止法、住宅金融支援機構法、地価公示法などの法律を中心に幅広く学習することになります。例年、この科目からの出題は8問です。
3.宅建試験のスケジュール・流れ
宅建試験は、例年、以下のようなスケジュールで実施されています。
3-1.宅建試験スケジュールの官報公告
例年、6月上旬頃に宅建試験のスケジュールが官報で公告されます。2020年度の試験は令和2年6月5日に公告される予定です。
3-2.試験案内の配布
試験案内は例年7月から配布されます。2020年度の試験は令和2年7月1日〜7月31日が試験案内の配布予定期間です。郵送で受験申込を行う場合はホームページで配布場所が掲載されるため、配布場所で試験案内を入手しなければなりません。インターネットで申し込む場合はホームページ上で試験案内を確認することも可能です。
3-3.受験申込
受験申込は郵送とインターネットの2つの方法で申し込むことができます。
郵送で受験申込を行う際は入手した試験案内の申込書に必要事項を記載して簡易書留郵便で送付しなければなりません。例年、郵送での申し込みは7月末までが期限となっており、2020年度の試験も7月1日〜7月31日が申込期間の予定です。
また、インターネット申込は試験案内の配布開始日から可能となり、例年7月15日前後が申込期限となっています。2020年度の試験では令和2年7月1日9時30分〜7月15日21時59分までの期間でインターネットによる申し込みができる予定です。
3-4.本試験
本試験は例年10月の第3日曜日に実施されており、2020年度の試験も令和2年10月18日に予定されています。試験は13時から15時までの120分間で実施される予定です。
3-5.合格発表
合格発表は原則として11月の最終水曜日または12月の第1水曜日に行われます。合格発表は試験案内に記載された都道府県ごとの所定場所で行われ、合格者の受験番号、合否判定基準などの情報が掲示されます。
一般財団法人不動産適正取引推進機構のホームページでも同様の情報を確認することが可能です。2020年度の試験は令和2年12月2日に合格発表が予定されており、合格者には後日簡易書留郵便で合格証書が届きます。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は民法改正が宅建試験に与える影響や宅建試験の試験内容、スケジュールなどについて確認しました。
民法改正は宅建試験にも大きな影響を与えることが予想されているため、改正項目を重点的に対策してから試験に臨むことが重要です。また、試験のスケジュールについては令和2年4月30日時点の情報を記載していますが、公務員試験などの一部の試験については既に新型コロナウィルスの影響によって延期などの措置がとられています。
宅建試験についても今後の情勢によっては同様の措置が取られることも考えられるため、受験予定の方は一般財団法人不動産適正取引推進機構のホームページを参考に公式情報を必ず確認するようにしてください。
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