不動産取引において重要な役割を担う宅建士は、安定したニーズと独立開業も可能な専門家として、不動産業界に限らず他業種でも求められている国家資格です。そのため、宅建士を目指す受験者は最近増加傾向にあり、例年20万人が受験する人気の職業となっています。
この記事では、宅建士の仕事内容や不動産業界で求められている理由のほか、不動産以外でも活躍できる業界について詳しく解説します。宅建士に関心のある方、不動産業界への就職を考えている方は参考にしてみてください。
1.宅建士とは?
宅建士(宅地建物取引士)は、業務独占資格として高い人気と知名度のある国家資格です。主な仕事は不動産取引に関する契約業務を行うことですが、不動産売買におけるサポートや、不動産運用のコンサルティングなどの業務も担います。特に不動産の売買や賃貸における契約時は、宅建士の立ち会いが義務付けられているのも特徴です。
1-1 宅建士の仕事
日本全国の宅建士の数は107万6177人、そのうち宅建業に従事している就業者数は32万5633人です(令和元年度末時点)。宅建士が行える独占業務には以下の3つがあります。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書(35条書面)の記名と捺印
- 契約書(37条書面)への記名と捺印
不動産取引では多くの国民にとって重要な財産を扱うことになるため、高度な専門知識が求められるほか、重大な責任を担います。そのため宅建士には、業務遂行における正確性や契約内容を的確に伝えるスキルも求められるのが特徴です。
1-2 宅建士になる方法
宅建士になるためには、宅地建物取引士資格試験に合格し、実務講習を受け、都道府県知事の登録が行われたあと、「宅地建物取引士証」の交付を受ける必要があります(実務経験がない場合)。
宅建試験は毎年10月の第3日曜日に行われます。受験資格は特になく、出題される問題はおもに次の4科目からなります。※令和2・3年は12月にも実施しています。
- 宅建業法
- 権利関係
- 法令上の制限
- 税金その他
令和2年度の合格率は17.6%でしたが、毎年15%前後の合格率と難易度の高い試験です。なお、試験合格後、すぐに宅建士として業務に就けるわけではなく、資格登録をして「宅建士資格者」となり、宅地建物取引士証の交付を受けることで「宅建士」として活動することができます。ただし、資格登録には2年以上の実務経験が必要です。
2年以上の実務経験がない場合、登録実務講習を修了する必要があります。登録実務講習は通信講座と2日間のスクーリングを受けます。その後の修了試験に合格すると修了証が交付されます。
2.不動産業界で宅建士がおすすめされる3つの理由
不動産業界では有資格者のみが行える独占業務があるため、安定したニーズのある資格として高い人気があります。詳しく見ていきましょう。
2-1 独占業務が存在する
宅建士は独占業務として契約に関わる業務を担います。例えば、不動産売買や賃貸の契約時に行う「重要事項の説明」とは宅建業法で定められたもので、宅建士が押印した「重要事項説明書」を買主あるいは借主に交付して対面で説明しなければなりません。そして、法的な問題がないことを確認した上で契約書に記名と捺印し、買主あるいは借主と不動産会社との間で取り交わします。
このほか、不動産の売買や賃貸の代理・媒介業務を行う宅地建物取引業者では、従業員5人につき1人の宅建士を設置する必要があるので、安定した需要があります。
2-2 資格手当など給与アップが見込める会社も
宅建士は不動産会社などに勤務すると、1~3万円ほどの資格手当が支給されるケースもあります。資格手当の金額は宅建資格の必要性に応じて決まりますが、宅地建物取引業者のように宅建士の在籍が必須となる会社では、資格手当は比較的高くなります。
一方、金融業界のように不動産の取引を直接的に行わない会社等の場合、不動産に関わる業務においてその知識は役立つものの、必須資格ではないため、資格手当をあまり期待できない場合もあります。
なお、宅建試験に合格しただけでは資格手当が付くわけではない点に注意も必要です。宅地建物取引士証の交付を受けなければ、必要な業務に就けないため、実務経験なしで宅建試験に合格した場合、まずは登録実務講習を受けて修了証をもらうことが大切です。
2-3 独立開業も視野に入る
宅建士は業務経験を積むことで独立・開業することも可能です。不動産会社は売買契約が成立すると仲介手数料として、(物件価格×3%+6万円)+消費税の報酬をもらうことができるので、活躍次第では高収入を目指すこともできます。
ただし、不動産業を開業するためには営業経験のほか、開業資金が必要です。宅建業法で定められた条件を満たす事務所の確保にお金が必要で、営業保証金の1,000万円を用意しなければなりませんが、『全日本不動産協会』に加入すれば、営業保証金は不要となります。
宅建士が独立開業する事業モデルとしては不動産仲介業があります。具体的には「賃貸」と「売買」の業務で、集客までの流れは基本的に同じです。不動産流通機構が運営している不動産流通システム「レインズ(REINS)」から物件情報を登録して自社サイトに掲載します。
または、売主(もしくは貸主)から依頼を受けてポータルサイトに掲載し、問い合わせを待ちます。問い合わせがあれば対応して物件案内し、契約へとつなぎます。
賃貸契約と異なり売買契約の場合は仲介手数料も高額となりますが、ローンの審査や物件の査定、投資物件に関する知識なども必要になるため、負担も増えるのが特徴です。
3.不動産業界以外でも宅建を活かせる業界とは?
宅建士が活躍できる業界は不動産業界のほかに、以下のようなものがあります。
- 建設業界
- 金融業界
例えば、大手のゼネコン(総合建設業者)は、デベロッパーとしての開発事業から不動産販売まで手がける会社があります。グループ系列の不動産会社が物件の仲介から販売までを手がけている場合、宅建士が不可欠です。
一方、金融業界では不動産取引を扱うことはないものの、不動産を担保に融資を行う際、宅建士の不動産における豊富な知識が役立つという点で活躍の場があります。
あるいは証券会社や投資信託会社でも宅建士の持つ知識が求められます。物件の査定や法的な制限などに精通しているため、投資対象として価値があるかどうかの判断もできるからです。
このように、宅建士は不動産に関する知識を必要とする他業種でも、専門知識を活用した仕事を行えます。
4.まとめ
宅建士になるためには宅建試験に合格し、実務経験を積むか登録実務講習を受けて宅地建物取引士証の交付を受ける必要があります。資格を取得すれば不動産業界をはじめ、建設業界や金融業界など活躍の場が広がります。経験を積めば独立もできるなど、さまざまな可能性の広がる資格なので、関心のある方は検討してみてください。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、宅建士資格の勉強を初めて行う人でも効率的に合格に必要な知識を身につけられるように、独自のテキストとカリキュラムを用意しています。分からないところや、学習進捗に関する相談も講師とキャリアナビゲーターが二人三脚でしっかりとサポートするので、安心してチャレンジすることができます。
資格スクールの大栄が気になった方は、ぜひ一度資料請求や自宅で受けられる無料体験レッスンをお申し込みください。
【通学・オンラインどちらのレッスンタイプも選べます!】