宅建は不動産取引のスペシャリストとして重宝される人気資格です。一方、簿記は企業活動に必要不可欠な会計知識を身につけられる資格で、経理部などの専門部署で働く人にとって必須となっています。最近は、宅建も簿記も有資格者の活躍の場が広がりつつあり、キャリアアップを目指す方にとっても注目の資格になっています。
そこで今回は、宅建と簿記を徹底的に比較し、資格取得後のキャリアについても分かりやすく解説します。キャリアアップを目指したい方、転職・就職を検討している方は参考にしてみてください。
1.宅建とは?
宅建とは宅地建物取引士の略称で、宅地や建物など不動産取引に活用できる資格です。宅建は弁護士や税理士などと同様に士業であり、有資格者にしか認められていない独占業務を行えるのが特徴です。
宅建の有資格者に認められている主な独占業務は以下の3つです。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書(35条書面)への記名・押印
- 契約書(37条書面)への記名、押印
1-1.重要事項の説明
不動産取引はそもそも高額なので、売買や賃貸を行う際、不動産業者は契約相手に対して該当不動産に関する情報を漏れなく提供しなければなりません。これを重要事項の説明と言い、物件の説明だけでなく、契約の解除に関する事項など取引条件に関する説明も必要になります。
1-2.重要事項説明書(35条書面)への記名・押印
重要事項の説明には重要事項を記載した書面の作成や、書面を用いた有資格者による説明が必要です。なお、重要事項説明書へ記名、押印するには宅建資格が必須となります。
1-3.契約書(37条書面)への記名、押印
宅地建物取引の事業者が関与して不動産取引が成立した場合、契約書の交付が必要になります。契約書は契約条件などを明記して契約当事者に交付しなければなりませんが、契約書の記名、押印にも宅建資格が必要です。
このように宅建は不動産取引では必要不可欠な資格となるため、不動産業界などで重宝されています。
2.簿記とは?
簿記とは、企業の経済活動を数字で記録する方法です。簿記は企業の会計を担う経理部や会計事務所などの専門職で活用できる資格であり、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を読み取る力も養えるため、その知識を利用できる様々な職業や職種でも活用できます。
一般的に簿記資格というと日商簿記検定のことを指します。日商簿記には難易度に応じて1級や2級などの資格が設けられており、最も難しい1級だけに限らず、2級や3級も仕事上の様々なシーンで役に立ちます。
ただし、会計のスペシャリストとして活躍するには2級以上の資格取得が最低ラインとなります。会計事務所や企業の経理ではキャリアアップを目指すために1級を取得する方も少なくありません。
3.宅建と簿記を徹底比較
宅建と簿記はキャリアアップを目指すビジネスパーソンにとって人気のある資格です。しかし、資格試験の難易度や合格に要する時間、資格取得後のキャリアもそれぞれ大きく異なります。
3-1.難易度・合格率の違い
国家資格である宅建は難易度の高い資格試験ですが、簿記1級も合格率1割を切ることのある狭き門です。まずは、宅建と簿記の難易度と合格率を詳しく確認してみましょう。
宅建の難易度・合格率
以下は過去5年間の宅建試験の実施状況です。
実施年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | 合格基準点 | |
---|---|---|---|---|---|
一般受験者 | 登録講習終了者 | ||||
令和元年度 | 220,797 | 37,481 | 17.0 | 50問中35点 | 45問中30点 |
平成30年度 | 213,993 | 33,360 | 15.6 | 50問中37点 | 45問中32点 |
平成29年度 | 209,354 | 32,644 | 15.6 | 50問中35点 | 45問中30点 |
平成28年度 | 198,463 | 30,589 | 15.4 | 50問中35点 | 45問中30点 |
平成27年度 | 194,926 | 30,028 | 15.4 | 50問中31点 | 45問中26点 |
(出典先:不動産適正取引推進機構)
宅建試験は毎年20万人前後の方が受験しており、その合格率は16%前後です。受験者数は最近増加傾向にありますが、例年合格率には大きな差はなく受験者6人に1人程度しか合格できない難易度の高い試験となっています。
同じ士業の社労士試験(合格率約6%)や行政書士試験(合格率約10%)と合格率だけを比較すると少し難易度の低い試験だと考えることもできますが、実際には2割も合格できない難関試験です。
簿記の難易度・合格率
簿記の難易度と合格率は受験する区分によって大きく異なります。以下は直近5回分の簿記1級の試験実施状況です。
回 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
153(2019.11.17) | 7,520 | 735 | 9.8 |
152(2019.6.9) | 6,788 | 575 | 8.5 |
150(2018.11.18) | 7,588 | 680 | 9.0 |
149(2018.6.10) | 7,501 | 1,007 | 13.4 |
147(2017.11.19) | 8,286 | 487 | 5.9 |
※受験者数は実受験者数です。
(出典:日本商工会議所)
簿記1級は非常に難関な試験となっており、実施回ごとの合格率に多少の変動はありますが毎回10%前後しか合格できない試験となっています。一方、2級や3級の合格率は大きく異なっており、2級も実施回によってばらつきはあるものの15%~30%程度、3級は概ね50%前後の合格率となっています。
このように、簿記の試験は受験する級によって大きく合格率が変わり、その中でも1級は国家資格並みに難易度の高い試験と言えます。
3-2.必要になる勉強時間の比較
宅建と簿記はそれぞれ勉強法なども異なるため、どちらの試験が簡単かという単純比較はできません。宅建は主に宅建業法などの法律の理解や暗記などが試験対策のメインとなり、簿記は仕組みの理解と計算演習が試験対策の柱となるからです。
ただし、それぞれの試験対策に必要となる勉強時間にはおおよその目安があります。個人差はありますが、宅建資格の取得に要する時間は300~400時間が大体の目安です。在職中の方などは半年から1年ほどの期間をかけて取得を目指す資格となっていますが、試験勉強に専念できる方は最短2~3か月ほどで取得することも可能な資格です。
一方、簿記は最難関の1級で500~600時間、2級は200~250時間、3級だと50~100時間が目安となります。なお、簿記2級に合格した方が1級を受験する場合は重複する内容も多いため、必要な勉強時間はさらなる短縮も可能です。
このように、勉強時間だけを単純比較すると簿記1級のほうが時間を要する試験となっていますが、前述の通り学習内容には大きな違いがあるため、勉強時間だけを目安に難易度を判断することは難しいでしょう。
3-3.資格取得後のキャリアを比較
資格取得後のキャリアはそれぞれの資格によって大きく異なります。こちらでは宅建と簿記の資格取得後のキャリアについて確認をしてみましょう。
宅建取得後のキャリア
宅建は独占業務のできる士業なので、資格を最大限に活かせる職業に就くことがキャリアアップへの近道です。最近は不動産業界だけでなく、不動産を扱う金融機関や一般企業でも宅建士のニーズが高まっているので、これらの企業で働く際にも役立つでしょう。
また、宅建は他の資格とのダブルライセンスによる活躍も期待できます。例えば、税金や資金運用などにも精通したファイナンシャルプランナーなどと組み合わせることで、不動産運用のスペシャリストとして活躍する機会が広がります。
簿記取得後のキャリア
簿記は幅広い職業や職種でその知識を必要とされる資格です。例えば、簿記1級に合格した場合は会計事務所や一般企業などで会計・経理の専門家として活躍が期待できます。2級でも一般企業の経理部門などでは重宝される資格のため専門部署で活躍することが可能です。
しかし、簿記資格は会計や経理といった専門部署以外でもニーズがあるのも特徴です。例えば製造コストの管理を行う生産管理や購買をはじめとして、様々な分野でその知識が求められています。そのため、簿記取得後のキャリアは非常に幅広く、会計や経理の専門職から一般企業の管理部門、営業職などでも活躍が期待できる資格と言えます。
4.宅建はこんな人におすすめ
宅建は不動産業界だけでなく、金融機関や一般企業でキャリアアップを目指す方にもおすすめです。宅建は試験合格後に宅建士としての登録手続きなども必要になりますが、この手続きを経ることで士業としての独占業務を行うことができるようになります。
現在は不動産と無関係な仕事をしている方でも宅建資格は大きな評価ポイントとなり、就職や転職活動を有利に進めることも可能です。不動産業界だけにとどまらず、将来的に不動産を扱う企業や金融機関でキャリアアップを目指す方にもおすすめの資格となっています。
5.簿記はこんな人におすすめ
経理部や財務部などの専門部署でキャリアアップを目指したい方は1級、最低でも2級が求められます。しかし、全てのキャリアアップを目指す方が1級を目指す必要はありません。
例えば、生産管理や営業などの多くの職種でも簿記の知識は必要とされていますが、コスト管理や与信管理のためであれば簿記2級や3級の資格でも役に立つでしょう。そのため、専門職としてキャリアアップを目指したい方だけでなく、様々な分野で幅広く知見を広げたい方にも簿記はおすすめの資格です。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はキャリアアップの資格として注目されている宅建と簿記について解説しました。宅建や簿記の有資格者は活躍の場も広がっており、双方とも様々な場面で活躍できる資格として人気があります。
キャリアアップに役立つ資格取得を考える方は、どのようなキャリアを目指したいのかを明確にしてから、受験する資格を検討してみてください。
なお、リンクアカデミーが運営する資格スクール大栄では、宅建の資格対策講座も簿記の対策講座も用意しておりますので、どちらの資格を取得しようか迷っている方も、ぜひ一度資料請求をお申し込みのうえ、ご相談ください。
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